ロストテクノロジー
ろすとてくのろじー
直訳すると「失われた技術」。過去に存在したが、何らかの理由により後世に伝えられず現代では失われてしまった技術のこと。
完全にフィクションの存在であるオーバーテクノロジーと異なり、ロストテクノロジーには分かりやすく実在する例がある。
例えば戦艦の主砲として使用されていた、口径12インチ(30.5cm)~20インチ(50.8cm)クラスの艦砲は、航空機やミサイルの発達などにより戦艦自体が無用の存在となった事で製造技術が失われてしまっている。戦艦については、船体だけを新造するにも船体装甲や主砲塔装甲板のような分厚く巨大な特殊鋼材のリベット接合の技術が失われた現在では不可能である。
また、かつて滅びた超古代文明のオーバーテクノロジーも、ロストテクノロジーと言える。かつて隆盛を極めた文明が衰退し、一部の技術がロストテクノロジー化したという事例は現実においても珍しい事ではない。
ロストテクノロジー化した物体が現代で発見された場合、歴史上存在し得ないはずの物体「オーパーツ」として扱われる事もある。創作物においては「核戦争レベルの大規模な戦乱により近未来の文明が崩壊。わずかに生き残った人類がかつての文明の遺跡を運用する」というシチュエーションが多く、特にロボットアニメではお約束の題材とされている。
また、SF的な要素が少ないファンタジーものでは「神々や古代文明が遺した魔法」という形で登場する事があり、「実は作品の舞台は遥か未来であり、魔法だと思われていたものは近未来(現代)の文明が遺した科学技術だった」というオチが付くこともある。
注:【※】は外部リンク
工学
工芸
- 日本刀(の一部技術):鎌倉時代から室町時代初期に作成された太刀(古刀)等に関して幕末に再現が試みられたが同一のものにはならなかった。
- 最近になって古刀の再現に成功したという人が現れたが、「偶然の産物なので、もう一度作ろうと思っても作れる自信が無い」とのこと。
- ※ロシアンカーフ:トナカイの皮から作られた皮革製品。ロシア革命前後に作り方が失われたとされる。
- ※高麗青磁
- 曜変天目
- セルアニメーション:デジタルアニメへの移行により新たなセルの製造もされなくなり、ロストテクノロジー化しつつある。超時空要塞マクロス愛・おぼえていますかのラストシーンなど(一から作ろうとしてもコスト、人材面からして限りなく不可能に近い)。一応デジタルで再現はできるがセル・フィルム特有の画質劣化や空気感、線の乱れの再現が難しく、2020年代になってAIで再現する試みがされている。
- ダマスカス鋼
- ストラディバリウス:作者のアントニオ・ストラディバリがバイオリンの設計図や作り方を残さなかったためである。
- 近年のCTスキャン等の内部を調査する技術などにより、本物に近いバイオリンが作られてはいるが……
- 兵馬俑:近代にようやく確立されたはずのクロムメッキが俑の剣に施されていた事に加え、厚さ僅か数ミリで極めて精巧に作られている等、現代では再現困難な構造や技術が多い。
地域
- ヨーロッパにおける※魚醤:古代ギリシャおよびローマでは盛大に使用されたものの、その後用いられなくなり技術が絶えた。近代のウスターソースも魚醤であるが、古代の調味料と技術的な繋がりはない。
- ローマ帝国における水道技術:下水道等はその後千年以上にわたって使われた。
戦乱や老朽化で使用不能になったものも多かったが、近代まで新設は不可能だった。
- ヨーロッパ人による征服前の南米の技術:プラチナや金細工の加工技術(溶接した跡が見られない)。その他にもビーズ細工の技法や極細糸の製造技術、プレ・インカの白色染料など(いずれも再現不可能)。
- アメリカ合衆国における通常動力型潜水艦の建造技術:1959年以降の「新造する作戦用潜水艦は全て原子力推進とする」というオール・ニューク戦略によって放棄された。
- アイヌ文化における土器製造技術:中世に和人との交易が盛んになり、本州から簡単に品質の良い陶磁器や漆器が手に入るようになったために土器づくりをしなくなった。
- 近代以前のタスマニアにおける石器製造技術:ある時期から石器を使っていた痕跡がなくなり、そのままヨーロッパ人の到来にいたる。
ロストテクノロジーのうち、工芸品などは再現が試みられるものもある。
- 中が透けるほど薄い有田焼磁器「卵殻手」:明治時代以来100年ぶりに再現に成功
ある程度再現に成功した例
- アブラアン・ルイ・ブレゲの同調時計
- 有田焼における濁絵技法
- 田中久重の万年自鳴鐘
- ラスター彩のイスラム陶器
- アクセサリーのピクウェの技法
- イラン軍におけるF-14トムキャットの運用技術:アメリカ合衆国から供与された当時最新鋭の戦闘機だったのだが、イラン革命で反米勢力が政権を握ったために部品の供給がストップし、技術者も国外退去したため(イラン国内では)ロストテクノロジー化しかけた。現在でも同国では貴重な戦力として扱われており、ロシア製兵器への換装、リバースエンジニアリングによる独自の部品製造、部品の密輸入など様々な手段で運用が続けられている。
- 済南料理:文化大革命により一旦途絶えたが、現地で修行するも太平洋戦争敗戦により日本に帰国した佐藤孟江女史が日本で済南料理店を開いている事が判明。日本人(更には並みの腕前)でありながらも中国政府から「魯菜特級厨師」「正宗魯菜伝人」に認定される事に。
- アーマード・コアシリーズ:一部シリーズを除き、「大規模戦争により世界が荒廃。生き残った人類が前世代の技術を運用している」という設定の作品が多い。
- 風の谷のナウシカ:『火の七日間』と呼ばれる最終戦争により文明が崩壊してから1000年後の世界を題材とした作品。劇中の人類は古代遺跡を掘り起こしてエンジンやセラミック等を入手している他、巨神兵等の超兵器も発掘されている。
- 天空の城ラピュタ:かつて隆盛を極めた超古代空中都市『ラピュタ』の争奪戦が描かれる作品。飛行石の結晶化技術、外部装甲の素材すら不明なラピュタのロボット兵等、随所にロストテクノロジーと呼べる存在が登場している。
- ゴジラシリーズ(主に1954年公開のゴジラとリンクする時系列シリーズ):オキシジェンデストロイヤーと抗核エネルギーバクテリアが該当。いずれもゴジラに対し効果的な威力を誇ったが、研究開発者達が悪用を恐れて資料等を一切残さず死亡したため永久に闇へ葬り去られた。しかし、前者は思わぬ形で復活を遂げてしまった。また、小説『プロジェクト・メカゴジラ』では前述のイラン軍の例を挙げて超兵器が使用不能に陥った経緯が語られている。
- 機動新世紀ガンダムX:ガンダムシリーズにおいて初めて、戦乱による荒廃とそれにより生じたロストテクノロジーが題材とされた作品。第7次宇宙戦争により荒廃した地球で、15年前に製造された最強のモビルスーツ・ガンダムXの発見を契機に物語が始まる。
- 機動戦士クロスボーン・ガンダムDUST:地球連邦軍が衰退し、地球圏全体の技術レベルが低下した『宇宙戦国時代』を題材とした作品。前作に登場したような超高性能モビルスーツの運用が困難になり、ジャンク品同然の改造旧世代モビルスーツが登場する作風が特徴。
- ∀ガンダム:先述のガンダムXやクロスボーンガンダムDUSTより遥かに超未来、全てのガンダムシリーズが黒歴史として過去になった世界を舞台とした作品。かつての文明を失った地球の人々はマウンテンサイクルと呼ばれる場所からモビルスーツを発掘、運用している。
- 機動戦士ガンダム鉄血のオルフェンズ:初期段階からオーバーテクノロジーがテーマの一つの機動戦士ガンダム00と対になるよう構想された作品。主人公達は300年前に起きた厄祭戦の遺産である兵器ガンダム・フレームを駆って戦う。
- 狂気の山脈にて:クトゥルフ神話作品の一作。かつて地球を支配した『古のもの』と呼ばれる生命体の超科学文明が衰退し、制御技術が失われた奉仕種族『ショゴス』によって破滅していった過程が描かれる。
- THEビッグオー:40年前に起こった「何か」によって全ての人々が記憶喪失と化した世界を舞台としたロボットアニメ。作中では巨大ロボットやアンドロイド等の超技術に留まらず、煙草や野菜等の農産物、愛玩動物等も失われた「メモリー」……すなわちロストテクノロジーとして貴重品扱いされていた。
- スーパーロボット大戦α外伝:先述のガンダムXや∀ガンダムをベースとしたクロスオーバー作品。ヱクセリヲン自沈の影響で壊滅した並行世界の超未来における戦いが描かれ、ロストテクノロジーを保持する強大な組織アンセスターが登場する。
- 砂ぼうず:数百年前に文明が崩壊し「関東大砂漠」と化した世界を舞台に、ロストテクノロジーを奪い合いながらしぶとく生きる人々の生活が描かれる。
- スプリガン:超古代の遺跡から発見されるオーパーツやオーバーテクノロジーの悪用を防ぐ組織『アーカム財団』の活躍を描いた作品。
- 聖剣伝説2&聖剣伝説3:共に大自然と中世ヨーロッパをベースにしたファンタジー(メルヘン?)で、2は敵国のヴァンドール帝国が古代兵器を使って世界を征服しようとしている設定で、3は本編の19年前の聖剣伝説HOMに古代兵器が登場する。
- ドラえもんシリーズ:映画ドラえもんシリーズでは度々古代文明が登場している。特に『のび太のアニマル惑星』ではロストテクノロジーの存在が物語の大きな鍵となる他、『のび太の南極カチコチ大冒険』では超古代文明が遺したロストテクノロジーを回収して故郷の復興を図る異星人がゲストキャラとして登場した。
- ファイナルファンタジー2:強力過ぎる為に封印されたと伝えられる究極魔法・アルテマが登場。仲間の1人ミンウが命を捧げてその封印を解いてくれるのだが……その犠牲に見合わぬ低威力でプレイヤーを落胆させた。一説によると担当したプログラマーが「伝説のなんちゃらなんて昔の時代のものでしかない。今の目から見たら見劣りのするものが当たり前なんだ」と主張し、無理やりこのような性能にしたのだとか。
- にょきにょき:現代よりも遠い未来で、一度栄えた文化が衰退し、旧石器時代まで退行しつつも、その他の文化が異様に発展を遂げた「IT石器時代」が舞台。
- Falloutシリーズ:核戦争により荒廃したアメリカ合衆国を舞台に弱肉強食の生存競争を繰り広げるゲーム作品。やはりロストテクノロジーの争奪戦が物語の鍵を握る事が多い。
- ブレスオブザワイルド(ゼルダの伝説シリーズ):今作では物語から一万年前のシーカー族の高度な技術で作られたガーディアンや神獣等でガノンの封印に貢献したが、当時のハイラル王からその技術は脅威とし、シーカー族は追放され、その半数はその技術を捨てて平穏に暮らしている。(残りはイーガ団としてハイラル王国に敵対している。)
- メタルマックスシリーズ:前触れ無く発生した「大破壊」により地上の文明の多くがロストテクノロジーと化した世界を冒険する作品。特にその中で主人公達と密接に関わり合うロストテクノロジーが、戦車である。
- サガフロンティア2:前時代の帝国が発掘した魔法力の媒体が該当する。本作においてこれは、「人間以前の古代文明によって作られたもの」という意義に加え、「帝国による媒体の有効活用技術が帝国滅亡とともに失伝した」という意義も持つ、二重の意味でのロストテクノロジーになっている。
- シャイニングシリーズ:スチームパンクの要素を持つ中世風ファンタジー世界であるが、古代には高度な文明が存在しており、敵味方ともに機械兵器などを発掘して運用している。
- パンツァードラグーン:旧世紀のロストテクノロジーで生み出されたドラゴンの乗り手が、同時代の遺跡より発掘される浮遊エンジンを用いた空中戦艦や戦闘機を擁する侵略国家「帝國」や、やはり遺跡が生成する人類の天敵である生体兵器「攻性生物」と戦う。
- 未来放浪ガルディーン:文明崩壊後の戦国において圧倒的な存在である先史文明の戦闘メカ「T-178ガルディーン」が登場するが、武器よりも口先が達者であるというギャグSF。なおその他の先史文明のロストテクノロジーである発掘品は、昭和の駄菓子屋で売っていそうなしょうも無いものばかりである。
- 日本国召喚:転移先の異世界で最強の列強国といわれる神聖ミリシアル帝国は、古の魔法帝国のロストテクノロジーであった古代遺跡を、数千年かけてリバースエンジニアリングしてきたちぐはぐな技術国家であった。
- バトルテック(メックウォリアー):2766年に勃発した「継承戦争」においてメック(バトルメック)工場や研究所が重点的に攻撃された結果。メック製造技術がロストテクノロジー化した。時代が変わって3025年、小説版主人公がメモリーコアを発見して全勢力に開示した事からある程度は回復している。
※こちらでは、ストーリーが経過することでロストテクノロジーが大きく関わっていることが判明する作品を記載する。ネタバレ注意!
- MOTHER3:ストーリー上一見、人類の文化の過程に見える変化が見えるが、ストーリー後半にさしかかる所で明らかになったのが「物語の舞台が一度壊滅し生き残った僅かな人類が自らを記憶改竄し、西部開拓時代と似た生活様式に衰退と原始共産主義に似た経済概念」を持っていた事が判明する。また、オーバーテクノロジーも出てくる等かなり特殊な作品といえる。
- ゼノブレイド2:ストーリー終盤に、この世界が一度壊滅していることが判明する。壊滅前は現実の現代世界に似た建造物や機械技術が存在していた。
- STELLA GLOW:ストーリー後半に、人類は天使達によって何度も襲撃され、文明のリセットが繰り返されていることが判明する。
- SCP_Foundation:それらしいオブジェクトはいくつかあるが、この記事に最も近いと思われるのは『SCP-2000【機械仕掛けの神】』であろう。詳細はリンク先を参照とするが、「過去に少なくとも2回起動した形跡がある」とのこと。
- サガフロンティア:T260G編の終盤に判明する「自分の正体」が、かつて発生した大戦争によって失われた文明の落とし子であることが判明する。また、倒すべき敵もそれに連なった存在であった。作中における現代の科学技術自体、これの遺構を流用して作り上げられているため、そのポテンシャルを十全に発揮できてはいない。
- アンリミテッド:サガ:道筋も運命も違う7人の主人公がいずれも共通して最後に挑むことになる遺跡「七大驚異」はかつて隆盛を極めた文明の残骸であり、また作中全般に登場する「遺物」も当時の技術でしか作れない。しかしその技術は呪われたものであるという大きな問題点を抱えており、だがロストテクノロジー故に、深入りすると破滅を招くものであることをほとんどの人が知らない。
- LUNARシリーズ:舞台のLUNAR世界は中世ファンタジー風世界であるが、実は滅亡の危機に瀕した天空に浮かぶ青き星からの避難場所であり、女神アルテナと四竜によってテラフォーミングされた地であった。各地に残る古代遺跡や初期の中心種族であった魔族由来の魔法都市ヴェーンなどの魔法技術はロストテクノロジー化している。
- ガンドライバー:南北戦争期のアメリカが舞台の西部劇だが、当たり前のように人型のロボットが登場している。銃火器メーカーの製品であるため普通の工業製品にも見えるが、物語が進みにつれて工業製品とは無関係に存在している事が明かされていき、製品として売られているものは発掘した人型機械を修理して売っている事が明かされる。そして先史文明に関わる謎も明かされていく。