概要
ダマスカス鋼の名は、シリアのダマスカスで製造されていた刀剣などの製品にウーツ鋼が用いられていたことに由来する。より詳しく言えば、古代インドで製造されたウーツ鋼を鍛造して刀のような武器に加工していたのがダマスカス地方の鍛冶職人達であった。彼等以外にはウーツ鋼を鍛造することは出来なかったからである。
よってダマスカス鋼とは、ウーツ鋼を用いてシリアで鍛造された武器を指す単語でもある。
特徴的な木目状の模様もさることながら、ダマスカス鋼で鍛えられた武器は折れず・曲がらず・錆びずの驚異的な耐久性を誇っており、かの十字軍遠征ではダマスカス鋼の武器が十字軍騎士の甲冑ごと相手を切り裂いたという伝説もある。このことから、ダマスカス鋼の武器はイスラム圏、キリスト教圏双方から重宝され、彼等の間で伝説となった。
現在は異種の金属を積層鍛造して模様を浮かび上がらせた鋼材もダマスカス鋼と呼ばれているが、本来のダマスカス鋼の模様はるつぼによる製鋼における内部結晶作用に起因するものである。この製法は現在では失伝しており、本家本元のダマスカス鋼はもはや作れなくなっている。
言ってしまえばロストテクノロジーと呼べるものである。