概要
コンピュータ断層撮影(Computed Tomography)により、360度全ての方向からX線透過像をデジタルデータとして得て、コンピュータで処理することで三次元情報を得ることを可能にしたもの。レントゲン撮影の場合二次元であったものを三次元にした。
放射線同位体を投与して体内からのガンマ線から断層像を作り出すポジトロン断層法(PET)や、単一光子放射断層撮影(SPECT)も(広義では)CTだが、一般的にはエックス線を体外から照射して断層像を得るタイプのものをCTと言い、このCTスキャンを行うための装置を「CTスキャナ」と言う。
原理
CTスキャナの内部にはエックス線を拾う検出器とエックス線源となる管球とがそれぞれ被写体をはさむように設置され、それが周辺機器を含めてドーナツ状の装置(ガントリ)を構成している。
これを回転させながらエックス線照射を行い、360°全ての方向からの画像データをコンピュータで再処理することで断面像を作り出す。
利点・欠点
利点
欠点
- エックス線による被曝がある
- 脳のように骨に囲まれた部分の撮影時に画像が乱れやすい
- 軟部組織の撮影に向いていない
基本的に骨や肺や消化管関係の撮影に用いられ、脳や生殖腺や筋肉の撮影はMRIの方が得意とされている。
歴史
断層撮影の理論や技術については50年代の時点で存在していたが、1972年にイギリスのThornEMI中央研究所で開発されたものが世界初のCTスキャナとなる。
1975年にEMIと事業提携をしていた東芝が輸入し、その後旧東芝メディカルや日立製作所がそれぞれ国内生産を開始した。
2000年以降はヘリカルCTや多列型検出器と言ったような技術革新が進み、少ない被曝量で高画質の画像が得られるような機材が数多く発売されている。
スキャン方法の変遷
- 第1世代型:最も古いタイプで、ペンシルビームと呼ばれる細いエックス線ビームを用いてスキャンを行う。ガントリの回転と管球と検出器の移動を交互に行うためスキャンが終わるまで5分もかかった。
- 第2世代型:小さく扇状に広がったナローファンビームと呼ばれるエックス線ビームを用いてスキャンを行う。第1世代型よりスキャン画像が鮮明で、スキャン時間も2分に短縮された。
- 第3世代型:大きく扇状に拡がったワイドファビームと呼ばれるエックス線ビームを用いてスキャンを行う。管球と検出器の平行移動がなくなったためスキャン時間は10秒にまで短縮されたが、電源供給システムの改良を経て1秒まで短縮された。現在のCTはほぼ全てこのタイプである。
- 第4世代型:検出器がリング状になり、管球だけ回転する。散乱線の影響が出やすいこととコストが掛かることから現在では生産されていない。
- 第5世代型:電子ビームCTと呼ばれるタイプ。ガントリの回転といった機械的な動きを無くした結果、1回0.05秒という爆速スキャンを可能にした。主に循環器の撮影に使われる。
余談
- 開発当初、CTスキャナはCTスキャナではなく「EMIスキャナ」と呼ばれていた。
- もともとレコード会社であるEMIに所属していたビートルズの莫大なレコード売り上げの一部がCTの開発資金の供給源と言われており、CTはビートルズの残した偉大な遺産とも言われている。
関連項目
MRI:強力な電波を使って、体内にある水分に作用して断層を撮影する方法。こちらも機械の中に入って身体の断層を見る検査技術のことだが、原理はまったく異なる。
トモセラピー:リニアック装置が内蔵されたCT。正しくはトモセラピー・ハイアートシステムと言い、診断ではなく放射線(エックス線)による治療を行う。