「Hearts that are too good to die」
詳細はWikipediaや医療系サイトを参照のこと。
使用法については「心肺蘇生」等も参照。
概要
心室細動等、心臓発作の際に電気ショックを与え、心臓の動きを取り戻させることを目的とした装置である。
良く誤解されているが、あくまでAEDは「異常な動き(=心室細動)をしだした心臓に対し、電気ショックで一時静止を掛けて細動を取り除き(=除細動)、正常な拍動再開を促すための機器」であり、完全に活動を静止してしまった(=心静止)状態には効果がないので注意(この誤解の根底には、『ER』に代表される医療ドラマに良く見られる「心停止状態患者を強力な電気ショックで蘇生させる描写」が少なからず関係していると思われる)。こうした「手遅れな状態」となる手前で「待った」を掛けことができるのがAEDである。れっきとした医療機器であるが、動作の大半が自動化されているため、医師・救急救命士・看護師でない一般人でも使用可能である。
勿論、これがあったから100%救命出来る訳ではないが、心臓の場合は何よりも時間との勝負であり、1分遅くなると救命確率が10%低下するとされている。救急車通報 - 到着までの全国平均が8分弱であり、その間にAEDを使用すれば救命確率は格段に上がる。
AEDは最大出力で使うと電気を通した電球のフィラメントが切れ、アルミ缶の四方八方に穴が開くほどの威力を発揮するため、間違っても遊びで人に使ってはいけない。
法的リスク
AED使用のために衣服をはがしたり、両胸の素肌に直接パッドを当てるのが性加害に当たるのでは?という論点がある。女性にAEDを使ったことが訴訟となったり、女性の80%超が「抵抗を感じる」と回答した…といった話題が定期的に流されるが、これらはデマである。情報を拡散した人物が「問題提起のつもりであった」と捏造を認め、謝罪したにもかかわらず、「女性にAEDを使用するのは訴訟リスク」という空気が広められてしまった。アンフェ・ツイフェミの不毛な対立煽りに流されない様にしよう。
そもそも、AEDが設置されている様な場所で女性が誰1人としていない等あり得ない。
これとは別に、「AEDを使用したにもかかわらず死亡したり、胸骨圧迫で骨を折ってしまった際に、遺族から訴えられるのでは?」といった心配も見受けられるが、「実際に勇気をもって救命活動を行って罪に問われるということは早々ない」とのこと。とはいえ、命に関わる状況でぶっつけ本番でAEDを使うのは中々勇気が要ることであろう。事前に救命講習に参加しておこう。
また、こうした講習ではAEDと併せて心臓マッサージや人工呼吸等の実習も行えるため、興味があるなら、1度は講習を受けてみることをお勧めする(参考動画)。
こうした善意の救助者を法的リスクから守るための法として通称善きサマリア人の法と呼ばれる法律が欧米等では制定されている。救助する際に失敗して後遺症が残ったりとかいったリスクを免責する法律であり、日本には現時点で存在しない。
現行法で対応可能との声もあるが、実際の救命士や医師が制定を要求している。
なお、2013年にマラソン大会に参加した女性が心停止に陥り、救護員が駆け付けるも、AED使用をためらってしまったことで、その女性は脳に重い障害を残してしまうという痛ましい出来事が起きてしまった。
使用方法
- 1.AEDを持ち出す
公共の場に設置されているAEDケースは盗難防止のために開けると物凄い音が鳴ることがあるが、気にしない様に。音に驚いて駆けつけて来た人がいれば、ついでに現場まで引っ張って行こう。
- 2.開ける
開け方はメーカーにより異なる。一切開閉する所がないものもあるし、AED自体の蓋に加えてAED全体がケースに入ってるという保管状態のものもあるので注意。
- 3.電源を入れる
開けただけで電源が入る親切な製品もあるので要確認。
- 4.音声に従う
親切度合いはメーカーにより(ry。
- 5.(濡れていれば)患者の体を拭き、ネックレス等胸元のアクセサリーは外し、胸毛などは取り除く。
体表面を電流が逃げてしまって効果が激減する。胸毛は火傷の原因となる。鋏が面倒なら予備パッドを貼ってベリッと。
- 6.電極パッドを開封して心臓を挟む様に貼る
大抵は右胸の上部と左脇を指示されるが、心臓が挟めればどの位置関係でも構わない。
未就学児ならば心臓を前後に挟むように胸と背中に貼る。
ブラジャーは脱がさなくても貼れる。ペースメーカーらしき出っ張りがあれば避けるように。
- 7.音声に従う
電気ショックが必要/不要といってくれる。
- 8.必要なら誰も患者に触っていないことを確認して電気ショックを与える
触っていたことによる事故というのは確認されていないが、一応念のため離れてショックを。
- 9.胸骨圧迫を再開する
顕著な反応が見られるまでOr救急隊が代わってくれるまで胸骨圧迫は続行。
注意事項
電池切れなどの事態は起こり得るため、所有者は定期的なメンテナンスやチェックは必要。
また、AED自体が高価な精密機器の塊のためか、盗難に遭うリスクもあるので注意。
事実、公共施設に設置されているAEDが窓口や事務室等、職員が駐在している場所の至近に多く設置されているのは「非常事態に直ぐ対処出来る様にする」ため以外にも、「盗難防止」にも効果的であるため。
歴史
体外式除細動器発明者は「ウィリアム・コウウェンホーフェン」とされている。
コウウェンホーフェンはコンソリデーテッド・エジソン社及びロックフェラー研究所共産で行われた研究プロジェクトに参加。人体への電気の影響に関する研究の中で、電気ショックにより心臓に細動を引き起こし、またこれを電気ショックによって取り除くことが可能であることを発見する。
この原理の最初の臨床応用は1947年、クロード・ベックが14歳の少年に対して行ったものであり、少年は見事寛解した模様である。
しかしながら、これは開胸して直接心臓に電極を当てることによって行われる今よりずっと手間のかかるものであり、加えて除細動器は非常に大型で台車によって動かされるものであり、過電流による熱傷も危惧されていた。
1957年、コウウェンホーフェンは今の用法に近い、閉胸したまま使用可能で、かつ低電流の除細動器を開発、1961年にはこれをおよそ20kgまで軽量化した。
院外での一般利用に適した自動式登場は1970年代、アーク・ディアック医師を中心としたチームによって開発されたハート・エイドである。
この製品の登場により、専門知識がない一般市民でも心肺蘇生措置を迅速に行うことが可能となった。
電極の片方を食道にねじ込むといういささか乱暴な手法ではあったが、一般人でも扱える安全性と自動診断・音声案内による分かりやすさは現代製品にも継承されている。
日本においては長らく医師にしか使えない法律となっていたが、皇族・高円宮憲仁親王殿下がスポーツ中に心停止した出来事を受けて必要性が叫ばれ、2003年には救急救命士の独断、翌2004年からは無資格者でも使用出来るよう法が改正された。
2011年にはサッカー選手松田直樹が突然心臓疾患で死亡した出来事を受け、日本サッカー協会を皮切りに様々な国内競技連盟、振興団体がAED普及・知名度向上に勤しむ様になる。
AED登場当初、100万円以上の高額なものが珍しくなかったが、知名度上昇・普及に伴い、現在では20万強程で買える製品も出て来ており、家族に心臓疾患を有する者がいる家庭では個人所有している場合もある。
注意事項…?
当該タグのついているPixiv内イラストにも同様のネタがあるが、1文字間違えるととんでもないものとなってしまうので要注意。
関連タグ
- はたらく細胞BLACK(アニメ最終話で登場)
- 自動販売機に生まれ変わった俺は迷宮を彷徨う(アニメ第1シーズン最終話で登場)
- パーモット(モチーフの1つがAEDのポケモン)
本当の概要
さて、AEDの使用法を既に知るそこのあなた、疑問に思ったことはないであろうか?
「心臓の動きを取り戻させるAEDを使った後で、何で胸骨圧迫が必要なの?」と。
その答えは、「心臓の動きを取り戻させることを目的とした装置」という世間一般に浸透している解説が、真っ赤な嘘であるため。
実際の所、AEDは心室細動や心室頻拍といった致命的な不整脈を取り除く……平易な表現で言えば、異常な動作を起こしている心臓を完全に停止させる装置である。
不整脈を放置しておくと血流が生み出されないだけでなく、心臓に貯蔵されているエネルギーまでが浪費される一方となってしまう。
このエネルギーがいよいよ枯渇、本当の意味での心停止(医学用語でいうところの心静止)を防ぐのが、本当のAEDの目的である。
1度停止した心臓が再度動き出すかは心臓の根性次第であるが、AEDだけで正常な動きを取り戻すことは少ないため、使用後の胸骨圧迫が基本的に必須という訳である。
冒頭に書いた通り、AEDは「心臓の動きを取り戻させる装置」ではない。AEDさえバチッと当てれば勝手に心臓が動き出すかの様な誤解が本格派医療ドラマなどにも散見され、それどころかメーカーですら「心臓の動きを取り戻させる」等という語弊だらけの表現を多用して憚らないが、これはおそらく一般向けへの配慮であろうと思われる。
「こいつは悪あがきする心臓を黙らせてくれる装置なのさ!」と正直な所をいえば、使用者が減るかもしれないので……