概要
原作ビトウゴウ氏、作画せたのりやす氏による漫画作品で、月刊コミック電撃大王にて1994年春号から2000年11月号にかけて連載。単行本は全8巻。
19世紀の地球によく似た惑星、旧文明が残した巨大ロボットを発掘し、レストアして作り出した人型機動兵器・ガンドライバー(通称:GD)が闊歩する西部開拓時代のアメリカに似た国を舞台に、ワッシュ達の迫害対象にある人種・ブラニアンの青年である主人公・ディックが、連れ去られた妹・アンナを救うため旅立ち、その旅の中でディックは人種差別や戦争などの世界が抱える問題に直面し、果てには世界と戦争を裏から操る秘密結社との戦いへと発展して行く。
電撃文庫にて連載した漫画本編から10数年前を描いたたかしげ宙氏作の「ガンドライバー 遺産(ザ・レガシー)」という小説作品があり、単行本は全1巻。
登場人物
- ディック・ストーン・ゴクレイエ
金を集めてガンドライバーを買う事を目指すブラニアンの青年。主人公。
- アンナ・ストーン・ゴクレイエ
7人組の一団「ワイルドバンチ」によって連れ去られたディックの妹。
- バード・ストーン・ゴクレイエ
かつて「ジェロニモ」の異名で呼ばれたディックとアンナの父。
ジュエルパレス
- ダイヤ(本名:バチュラー・ピンカートン)
移動娼館ジュエルパレスのオーナーである関西弁のような口調で話す女性。
- トパーズ(本名:バネッサ・デル・リオ)
料理の腕に長ける少女。過去のトラウマから暗闇で眠れない。
- ルビー(本名:フランチェスカ・B・ロジャー)
若くして工学と物理学の博士号を持った経歴を持つエンジニアの少女。
- パール(本名:マリア・ルイーゼ )
アウトローのドク・ホリディーを父に持つ少女。肌の色は異なるがアンナに似た容姿を持つ。
- エメラルド
男と見間違う様な筋肉質な身体を持つ「ブラック・エルク」とかつて呼ばれたブラニアンの女性。ディックの父と面識を持つ。
登場兵器
ガンドライバー(GD)
作中に登場する殆んどの人型機動兵器はコレに当たる。作中では「GD」、または「ガンドラ」の略称で呼ばれる事がある。
元々は「ガンドローン」と呼ばれる無人のロボット探査機であり、各地に放置されて永い年月が経って朽ち果て、エネルギーも自然放出してしまいそのままでは運用できない状態であった。GD発掘当初、ワッシュ達はGDを単なる遺跡の置物程度にしか思っていなかったが、新大陸進出時に現地のブラニアンの部族たちがワッシュ達を迎え撃つために守護像を持ち出してきた事により「人が乗って動かせる兵器」であると知れ渡り、GDの発掘とレストアが行われて運用可能な状態へと修復され、軍を初め民間やアウトローへと広く出回る様になった。
動力機関へのエネルギー供給機構にリボルバーやオートマチック、ボルトアクションなどの銃と同じ様な機構を持つ「動力薬室(エネルギーチャンバー)」が腰部か背部に組み込まれており、「金」と呼ばれる放射性同位体を積めた弾薬「動力薬莢(エネルギーカートリッジ)」を装填し、動力機関に金を叩き込んでエネルギー供給を行い起動、動作させる。
- コルトM60アーミー
コルト社が開発した旧型のリボルバー式GD。
軍用機だが戦争のどさくさに紛れて民間にも大量に出回るようになった。
- コルトSAA・M55オールドアーミー
金属カートリッジの動力薬莢が登場する前にコルト社が開発したM60アーミーより古いリボルバー式GD。
腰部にグリップを外した巨大なM1851を組み込んだような形状をしており、銃口に当たる前面部から紙袋に詰められた金と火薬を一発一発手作業で1時間半ほど掛けて装填を行っていた。
- モーゼルM71
モーゼル社で開発された輸入型の民間用ボルトアクション式GD。
股間部に排莢口、腰部右側にリロードのためのレバーを備える。
物語上ではディックの最初の乗機であり、サンダンス・キッドが駆るレミントンM11cを沸騰する塩の湖に叩き落すが、その際に動力薬莢を過剰装填した事により動力部が壊れてしまう。その後、手足は紅の神像の欠けたパーツを補うために流用された。
- ベレッタM92B
モーゼルM71と同様の輸入モデルであるボルトアクション式GD。
民間向けに開発された機体で比較的手に入りやすい価格(ただし小型飛行機並みの値段である)で販売されている。
- ウィンチェスターM73
ウィンチェスター社が開発した長距離戦闘用GD。
ウィンチェスターM73をベースにカスタマイズされたドク・ホリディー専用GD。
機体全体が黒で塗られ、左肩に不吉を意味するスペードとエースのカードのマークが描かれている。
複数の偽物が登場している。
- DWMボルヒャルト・ランゲ
DWM社製のGDで背部にトグルアクション式のオートマチック機構を搭載する。
「ランゲ」とは88㎜ロングバレルライフルを装備したランゲモデルの事を指す。
- NOEL.PATENT 148SE
ナポレオン帝国製の陸軍用旧式GD。
GD開発黎明期の機体でまだ二足歩行が満足に行えなかったため、苦肉の策として背部ユニットが展開して四足歩行形態になる機構が搭載されている。
- レミントンM11c
ワイルドバンチのサンダンス・キッドとブッチ・キャシディーが駆るレミントン社製のポンプアクション式GDで、ブローニングM65を基に開発された機体。
ブッチ機には水平二連バレルのソードオフショットガンが装備されている。
サンダンス機は紅の神像の左腕を移植されるも紅の神像の封印が解かれて沸騰・蒸発している塩の湖の中にディックが駆るGDに叩き落とされてサンダンスと共に融解、ブッチ機は紅の神像の固体化プラズマ砲の砲撃により破壊される(搭乗者のブッチは身体に移植していた特殊な細胞により一命は取り留めた)。
- サッターのGD
ワイルドバンチと共にディックの家を襲撃した者の一人=サッターが駆るウィンチェスター社製GD。
本編中に使用した武装は携行式の88㎜ガトリング砲。
当初は左右対称であったが、後に紅の神像の右腕が取り付けられて非対称となる。
サッターの砦にて奴隷ブラニアンの女性達で作った人間網で捕獲したディックが駆る紅の神像をガトリング砲で網にされた女性達ごと銃撃、オリジナルパーツ以外を破壊するが卑劣な所業に怒ったディックが発動させた紅の神像の固体化プラズマ砲によりサッターごと撃ち抜かれ、破壊された。
- ルガーP05
ワイルドバンチの一人=キッド・カーリーが駆るDWM社製のトグルアクションオートマチック式GDで、DWMボルヒャルト・ランゲの発展機。
武装はショートバレルライフルと盾の代わりの紅の神像の腰アーマー。
ディックが駆るウィドーメーカーとの戦闘で砂を巻き上げた砂塵の中でウィドーメーカーと押し合い、パワー負けしそうになり動力薬莢を消費していた際に砂塵が動力薬室の機構に入った事で起きた排莢不良により停止、そこを高速回転させたウィドーメーカーのガトリング砲によってコックピット部を抉られて破壊された。
守護像(ディガーター)
ブラニアンの各部族が保有する機動兵器。
ワッシュ達が開発するGDとは異なり、旧文明からほぼ原型を保ち、オリジナルのパーツで構成されているうえ、金ではない本来のエネルギー原を使用している。また、守護像は「ガンドーベル」と呼ばれるガンドローンを警護するための機体であるため、基本機能はGDより上。
各部族の信仰対象とされているため、宗教色が強い装飾や改造、装備が施されている。
- 紅の雲(レッド・クラウド)
ブラニアンの部族の一つ「ティートン・ラコダ族」の若き族長にしてエメラルドの息子=レッド・クラウドが駆る4本の腕を持つ守護像。
手斧と盾(回想では槍も装備していた)を主装備とし、砂漠地帯では足にスキー板の様な物を装備する。
- 漆黒のへら鹿(ブラック・エルク)
ラコダ族の巫女=エメラルドがかつて愛用していた優れた防御力を誇る守護像。
ある理由によりワッシュ達の手に渡って近代改修が施され、古典的な槍からモーゼル社製の88ミリ対GD用キャノンに装備を変更され、防御力と攻撃力を兼ね備えた「王者の機体」へと仕立て上げられた。
- シャカカーン
暗き青の大陸を武力で統一しようとした英雄の愛機とされるワッシュ達が保管している漆黒の守護像。
太腿部にドラムの様な部位を両側2つ、計4つ持つ。武装は槍と盾。
- 陸奥守吉行(むつのかみよしゆき)
日出る皇国の守護像。
鎧武者の様な外見と背部に2本のサブアームを持ち、武装は太刀と短刀の二本だが近代戦に対応できるよう搭乗者の意向によりリボルバー式の拳銃が追加で装備されている。
神像(ディバイナー)
この世に7機存在するカリスマ、出世、支配、物欲などの「力」の欲望を司るとされる機体。
正式名は「ガンドラグーン」で、探査機のガンドローン(GD)と護衛機のガンドーベル(守護像)とは違い完全な兵器として造り出された存在であり、通常兵器では傷一つ付かない強固な装甲とプラズマを用いた髙火力なビーム兵器等の武装に加え、GDや守護像には無い単独での飛行能力を備える。
また、これ等神像にはディック達が住む惑星に仕掛けられた非常に重要な「物体」にアクセス・制御する「権限」を有する。
- 紅の神像(アーノンディガス)
メイン画像の機体で序盤のディックの乗機となる神像。
両腕、両脚の前後に1門づつ、計8門の個体化プラズマ砲「ソリッド・プラズマ・ディスチャージャー」、両肩内には電磁波を放って周囲~広範囲を攻撃する機構「シュトゥルム・ウント・ドラング・インパクト」が搭載されている他、頭部の2本の帯状のパーツは取り外す事で剣やムチのように扱える近接装備になる。
顔には仮面が取り付けられており、大結社に本機が渡り、ウィドーメーカーと対峙・戦闘した際に仮面が外れて本来の顔が露わになった。
かつてバードの手によって運用され、後に胴体をソルトレイクの塩の湖内に封印、十数年後にワイルドバンチのキッドの手によって封印が解かれるが、胴体と左腕はディック達ジュエルパレスに渡り、ルビーの手によってモーゼルM71等の他GDの腕と脚パーツを組み込まれてディックの乗機として運用されたが、サッターから右腕を取り戻すもサッターの部下によって強奪されてワッシュ側に持ち込まれてしまう。強奪後、ワッシュ側が持っていた残る両脚の組み込み作業が行われたが現代技術では完全に接続させる事はできず、最終的に旧文明の知識を持つ大結社の手に渡り、完全な形へと仕上げられる。その後、大結社メンバーの一人=サミュエル・F・デュポーンの操縦のもとディックが駆るウィドーメーカーと対峙、コックピットを貫かれて大破する。大破した後は両腕、両脚と一部装甲がウィドーメーカーに組み込まれ、頭部は惑星全土への演説放送を行うためのカメラとして用いられた。
読み切り版では本編同様にパーツが奪われており、ボディはウィドーメーカーに使われている。
- 偽の紅の神像
ワイルドバンチの襲撃により瀕死の重傷を負ったディックの下に現れたバードが駆る紅の神像の偽物。
偽物と言ってもボディ以外は紅の神像本来のパーツが組み込まれており、その性能はワイルドバンチ達が駆る7機のGDの力でようやく捕獲できる程であった。
捕獲後は左腕はキッドのGDへと移植後にサッターの砦で2機のGDによる88㎜ガトリング砲による銃撃で破壊され、残った紅の神像のパーツの内、右腕はサッターのGDに組み込まれ、その他のパーツは軍上層部に送られた。
作中では本物(神像)の偽物(守護像)と言う事で守護像の本来の名称である「ガンドーベル」と呼ばれた。
- ウィドーメーカー
紅の神像に代わるディックの新たな乗機であり、ディックの父バードがかつて駆った黒い機体。
出くわしたワッシュの男たちを葬り、その妻たちを未亡人にして来た事からこの名前で呼ばれ、ワッシュ達から恐れられた。
テンガロンハットとマントを身に纏い、右腕にはカバー展開式の強力なガトリング砲を備える。このガトリング砲は射撃武器としてだけでなく、カバーを閉じた状態で高速回転させる事により棍棒かドリルの様な近接武器として使う事もできる。携行装備にはレバーアクション式のショートバレルライフルを持つ。
その正体はかつて獅子の王家が保有していた「漆黒の神像(イロクォイス)」と呼ばれる神像で、独立戦争時代にワッシュ達によって戦場に投入、そして大破したが、何者かの手によって名GD職人=ダン・ウェッソンの下に持ち込まれ、ダミーのリボルバー式動力薬室を備えたGD————ウィドーメーカー(未亡人製造機)へと改修された。
漆黒の神像本来の姿のビジュアルは不明で、全身画も公開されていないが、ウィドーメーカーの正体を語る際の1コマでシルエットのみが描かれており、その際に描かれた形状は左肩アーマーが右肩にもある左右対称なデザインで、頭部もテンガロンハットではなくガンダムかゲッター1の様な2本の角があった模様。
ガトリングガン自体もカバーを含めて神像と同じ時代のものと思われる描写がある。
読み切り版では紅の神像をベースに手回し式のガトリングガンなど不完全な状態で登場しており、リボルバー式動力薬室もダミーではなく稼働に必要なものとなっている。
- ウィドーメーカー(漆黒の神像)+紅の神像
ウィドーメーカーに破壊した紅の神像の手足と一部装甲を組み込んだ異形の神像。
紅の神像の武装をほぼそのまま継承、ウィドーメーカー時には無かった、もしくは失われていた単独での飛行能力を獲得している。
- 純白の神像(カイユーダス)
日出る皇国に伝わって来た神像。別名「天叢雲之神像(あまのむらくものしんぞう)」、もしくは「草薙之神像(くさなぎのしんぞう)」。
本来は皇位継承の式典以外は門外不出とされてきたが、ワッシュ達に、そして大結社の手に渡る。
浮遊飛行型の機体であるため足に当たる部位が無く、4本の腕には強力なビーム砲が搭載されている。コックピットは胴体に1つ、腰部に2つの複座式となっている。
本編では本作のラスボスを務め、メインパイロットに洗脳された地下闘技場の元チャンピオンでディックの父バードの戦友=シュガー・レイ・マルチアーノ、サブパイロットに大結社のメンバー=ジョン・Ⅾ・ロックフェローとライオネル・ロスチャイルダーが乗り込み、ディックの駆る紅の神像のパーツを組み込んだウィドーメーカー(漆黒の神像)と対峙、最終決戦を繰り広げる。
関連タグ
ワイルドアームズ:SFと西部劇を掛け合わせた世界観である作品、及びシリーズ。
ジャンキージャンクガンズ:ナイツ&マジックの作者・天酒之瓢氏が手掛けた西部劇×巨大ロボットのライトノベル。