解説
1900年代初頭のドイツ帝国の陸軍・海軍に制式採用されたシングルアクションのオートマチックピストル。
スライドがシャクトリムシのように動く”トグルアクション”と呼ばれる給弾機構が特徴。
オートマチックピストルの元祖と言われるボーチャードピストル(C93)を、より小型化し実用性を高めたものである。
第一次世界大戦では塹壕での白兵戦において連合国軍相手に猛威を振るい、その優美なフォルムと凝ったメカニズムもあって絶大な人気を得た。
第二次世界大戦では連合国軍の兵士達の間で、いわゆる戦争土産として日本軍の軍刀に並んで高い人気を誇り、現在でも状態の良いルガーはガンマニアの間で高値で取引され、完全再現された復刻品が数量限定で発売される事もある。
また、専用弾薬として開発された9mmルガー弾は9mmパラベラム弾としても知られ、現在では多くの拳銃・短機関銃で広く使用されているベストセラーである。
原型が作られたのは1898年。オートマチックピストル黎明期に誕生したこともあり、まだ設計が工業製品として洗練されておらず、トグルアクションの複雑な機構も相まってとにかく構成部品の数が多い銃である。
しかも、それらは一つ一つ職人の手による削り出し作業で作られた精巧なもので、さらに個体毎に施されたマーキングが一致しないルガーの間では部品の互換性が無いというオマケ付きでもあった(=生産や部品調達にコストと手間がかかり、かといって壊れたルガー同士で気軽に共食い修理もできない)。
命中精度自体は良好で、単純にメカニックだけ見ればとても完成度の高い銃ではあったものの、上記の特徴から生産性・耐久性・整備性が求められる軍用拳銃としては脆弱であると言わざるを得ず、実際に戦場の過酷な環境で故障することも多かった。
1938年により使い勝手に優れる後継のワルサーP38が採用されたことで、陸軍や海軍向けの生産は1942年で終了した。
しかし、空軍総司令官だったヘルマン・ゲーリング閣下がルガーをとても気に入っていた為、空軍は第二次世界大戦終戦まで使用し続けていた(彼は製造元であるクリークホフ社の大株主でもあった)。
このため、戦争土産を欲しがる連合軍兵士の間では『パイロットを捕まえろ!奴らはルガーを持っているぞ!』と評判になった。
一方、空軍以外でもルガーに惚れ込んで使い続けていた兵士達もちらほら存在しており、特に大戦末期になって生産力の低下からワルサーP38の質の悪い戦時急造品が出回るようになると、命中精度に優れるルガーを持ち出して使う兵士が増えたという。
故障が多かったと言われる一方で、泥を掛けても作動する信頼性があったことが証明されている。
下の動画では泥に漬けてから2マガジンをトラブルなく発砲している。
なお、同チャンネル内でWW2以前のM1911で同じテストをした際は、結合不良・撃発失敗を繰り返していた。