概要
チェコスロバキアのうちの現在のチェコに当たる地域は、チェコスロバキア独立前のオーストリア=ハンガリー帝国時代から工業が盛んであった。
銃器の開発と製造も主要な産業のひとつで、先進的な設計と高い信頼性で知られていた。
これは、ナチスドイツの勢力下に入った1930年代、第二次世界大戦後の社会主義政権下でも一貫して銃器を得意とする工業国という地位を保ち続けた。
1968年、社会主義政権下のチェコスロバキアでは外貨獲得の為、西側の拳銃にポピュラーな9mmパラベラム弾を使用するオートマチックピストルを開発することとなった。
当初、本銃は民間市場向けとして弾倉は単列(シングルカラム)を計画していたが、チェコスロバキア産業貿易省は軍や警察への採用を念頭に、複列弾倉(ダブルカラム)を設計要件に加えた。
最終的に装弾数は15+1発となり、後に登場するモデルと比較しても遜色のないものとなった。
ダブルカラム仕様の拳銃は必然的にグリップが太く肥大化する為、当時は握り具合が悪くなると敬遠される風潮にあったが、CZ75のグリップは人間工学的に考え抜かれたデザインが成されており、自然な握り具合を実現している。
このあたりもガンマニアから、高評価を得たポイントであった。
その後テストモデルが何挺か作られ、1975年に完成した。
Cz75と名付けられたこのモデルは、ダブルアクション、ティルトバレル式ショートリコイルのオーソドックスな設計だったが、スライドがフレームを包む一般的なオートマチックピストルと逆に、スライドがフレームに包まれる構造であった。
また、使用される鋼材は非常に強度がある上質なもので、主要な部品は塊材からの削り出し加工で製造し、各部が薄く軽く精度が高く、それでいて充分な強度を持っているというものであった。
時代が下ると、コスト削減と生産性の向上のために製造工程の見直しが図られて、コレクター向けの要素は薄れてしまった。
Cz75は米国のスポーツシューターから「世界最高のコンバットオート」と評価を受け、人気が高まった。
しかし、共産圏の製品のため米国では高い関税が掛けられ入手し難く、イタリアのタンフォーリオ社やスイスのスフィンクス社などがCz75のコピー・モデルを販売し、イスラエルのIMI社も内部機構をベースにジェリコを作っている。
冷戦終結後
「ウヘルスキー・ブロト・チェコ兵器廠国営会社」は民営化され、「ウヘルスキー・ブロト・チェコ兵器廠国有会社」と名を変えた。
現在は米国内にCZ-USA社が設立され、.40S&Wモデルや.45ACPモデルなど、Cz75の様々なバリエーションが販売されている。
CZ75はスチール削り出し加工のシャープな造りで知られるが、2009年、CZ75 SP-01をポリマーフレーム化したPhantomが販売された。
スポーツガンシューター向けのカスタムモデルも高い人気を得ており、CZ75の発展モデルは精力的にリリースされている。
日本においては特に前期型がガンフォトグラファーやガンアクション漫画の影響を受けた一部のマニアに持ち上げられたために一種の神話的存在となっているが、当時にはすでに時代遅れになりつつあり、90年代後半には実戦的な拳銃としてはトレンドから完全に外れたものとなっていた。とはいえエアソフトガンでは実用性をそこまで気にしないのが殆どであり、気にせず使えることあって現在もある程度は人気を保っている。