MP-443とはロシア イジェメック社(現:カラシニコフ・コンツェルン)が開発した軍用拳銃である。他の名称については後述。
旧態化したマカロフPMの更新を目的として採用された。
概要
マカロフPMは、開発当初想定されていた「将校の自衛用拳銃」というコンセプトを考えれば小型で嵩張らず、安全で信頼性が高い優秀な拳銃で有ったが、「メインウェポンが使えない状況で使うサイドアーム」としては、威力、装弾数共にかなり非力で有った。
そこで、新型拳銃の採用計画 グラッチ(Грач)計画が行われた。
グラッチ計画にはマカロフPMを改修したマカロフPMMも参加していたものの、連邦軍には採用されず代わりにMP-443が採用された。
構造
フレーム、スライド共にスチール製である。
撃発機構はダブルアクションで、安全装置はデコッキング機構は無くコック&ロックと成る。
マカロフPMと変わって作動方式はティルトバレル式のショートリコイル。
弾薬は9×19mm弾でマカロフPMやスチェッキンAPSより威力が増している。
オーソドックスな9×19mm弾の他に防弾チョッキへの攻撃力を増した強装弾が使用可能である(PP-2000短機関銃で使用されている特殊徹甲弾「7N21/7Н21」が使用出来るという情報もある)。
全体的には、堅実、保守的な設計であるがセーフティは左右どちらでも操作出来るよう両側に配置されている等、時代に応じた進化も遂げている。
装弾数は17+1発。後に改良されて18+1発と成った。
名称について
ロシアでは、トカレフ(TT-33)やマカロフの様に設計者の名前を取ってヤリギン拳銃(PYa/Пистолет Ярыгина)と呼ばれている。
一方で、グラッチ計画の審査に最後まで勝ち残った為、そのまま「グラッチ(Грач)」と呼ばれる事も有る。
これは、次世代小銃計画「アバカン」を制したAN-94がアバカンと呼ばれているのと似ている。
MP-443は元々メーカーによって付けられた名前だが、今の所これを名乗るモデルは量産されておらず、主に国外でヤリギン拳銃(シリーズ)を示す俗称と成っている。
ロシア連邦国防省ロケット・砲兵総局が割り当てたGRAU(ГРАУ)コードは、6P35(6П35)。
民間向け
民間向けには、ポリマーフレームのMP-446が販売されている。
愛称はヴァイキング。スライドにローマ字で大々的に刻印されている。
また、国内市場向けに非致死性銃仕様のMP-353が販売されている。
元にしたキャラMP-446(ドールズフロントライン)。
粗悪品?
この銃… 少なくともその民間版の各モデルは、ロシア国内ではかなり評判が悪いという。
現地のインターネット掲示板によれば、作動不良が起こり易く、マガジンキャッチの引っ掛かりが甘く直ぐにマガジンが脱落する、部品が破損し易い等の不満が多く投稿されている。
また、フレームやスライドの製造過程の鋳造段階での不良である巣(溶かした金属に不純物やガスが混入しヒビや破損を生じさせる)が生じた部品を使用しながらも検品を逃れたと疑われるもの、スライドと銃身の中心が一致しない個体の画像が投稿される等、メーカーの品質管理がかなり杜撰である事を示唆する投稿もある。
この為か、連邦軍では調達が低調で、準軍事組織の国家親衛隊ではより新型のレベデフ拳銃が採用された。
エアソフトガン
FPSゲーム等のメディア露出が多い割には全くエアソフト化されておらず、ロシア軍マニアはKSCのトカレフやマカロフで代用するしかなかった。
2020年に台湾のRaptor社から、ようやく発売された。