共食い整備
ともぐいせいび
この整備法は、特に修理に際して必要な部品が手に入らない時に行われ、特に「部品取りを目的とせず、稼働させる予定がある個体から部品を調達する」場合に用いられることがある。
現代では3Dプリンターの導入により絶版となった部品をある程度自作できるため、共食い整備をするリスクは減っている。
自衛隊の例でいえば、73式小型トラック( 初代、三菱ジープベース )や航空自衛隊のF2戦闘機は既に生産を終了しており、新規に修理部品を発注しようとするのは不可能、あるいは高額かつ納入までの時間も長期化してしまうため、各種理由により退役した個体をスクラップ・廃棄せずに一部を部品取り用に保管、必要な部品をキープ、そして別の運用中の機体に不具合や故障、破損等が発生した際はその退役機から部品を流用して修理を行う。
もちろん民間でも、整備・維持費用が潤沢ではない場合や部品の生産そのものが不可能な場合、修理後長期間の使用を前提にしない場合など、こうした事はごく普通に行われており、特にパソコンなどにおいては良く行われている。
また、鉄道でも地方鉄道へ払い下げた鉄道車両の修理部品確保の為に、同型車両を部品取りの為に確保するケースもあり、2001年の豊橋鉄道の高師車庫の火災で豊橋鉄道1800系が2両焼失した時、部品取りで確保した2両を整備して再稼働させた例もあり、残った部品取りの1両も2008年の増発の際に上田電鉄から購入した2両を組み合わせ再起させている。
さらに共食い整備のレベルを進行させて、破損・故障した複数の個体から1つの再生品を作ることもあり、例えば太平洋戦争中の1943年に発生したラバウル空襲にて破壊された一〇〇式司令部偵察機の残骸をかき集めて1機を再生した事例などが知られ、これらは通称「ニコイチ」などと呼ばれることが多い。
本来この作業はジャンクやスペア等、「すでに利用しない、あるいはできない」あるいは「部品取り用の予備」など、必要ではない個体から部品を調達するのが普通であるが、まれに「点検整備等で現在利用していないだけで利用の予定がある」個体などから部品を調達、部品を調達された個体に関しては発注した部品を到着後装着する、という方法を用いることがあり、ひどい状況だと「部品を使いまわすためだけにわざと点検整備を行う」ということも行われ、これはその一群の稼働率を下げるため本来は禁じ手とされる手法である。
広島電鉄5000形グリーンムーバーはドイツ製であった事が災いし、補修部品が高額になる為、半数以上を部品取り車両にして対処している有様である。以後広島電鉄では低床式連節車が再び国産車になったのも、この事が原因である。