三菱自動車が自衛隊向けに製造している1/2トン積みの四輪駆動車。
三菱ジープ(J2x系)がベースとなった初代と、三菱パジェロ(2代目 V1~4x系)がベースの2代目が存在する。
概要
大きく分けて初代、2代目の2つのモデルがあるが、いずれも運転手を含めた乗員6名(ないし貨物500kg弱)積載が可能な車両である。
この車両は基本的に民間向けの車両をベースとしながらも、防衛庁(防衛省)の要求に従った改造が加えられている。
エンジンは年式などによって形式が異なるものの、一貫してディーゼルエンジンである。
車体
車体は初代、2代目ともにキャンバストップ(幌)で、前面のガラス窓は前に倒せる構造である。
特例で道路運送車両法が適用されない車両ではあるものの同法の保安基準に概ね準じた灯火と、灯火管制が布かれた際に使用する灯火管制用ランプ(B.O.ライト)が備わる。
後部には、小型のトレーラーなどをけん引するための連結装置と、トレーラーの灯火に電力を供給するための端子が装備されている。
警務隊向け
警務隊向けの車両は緊急車両の指定を受けて、サイレンと赤色の回転灯を搭載している。
車体の塗装は国防色ではなく白色である。
初代
従来使用されていた1/4トントラック(三菱J3系・J5x系ジープベース)を置き換える目的で1973年(昭和48年)に採用された車両。愛称は「ジープ」
先代からベースとなった車両が変更され、ホイールベースが長いモデルが採用されたため、積載量が増加している。
トランスミッションは全ての車両がマニュアル車で、前進4速 後進1速で副変速機付きである。
M2重機関銃を筆頭に各種機関銃が搭載できるほか、特別な改造を施して60式106mm無反動砲や、64式対戦車誘導弾などを搭載した車両が存在した。
1990年代半ばに、ベース車両が排ガス規制などに対応できなくなったために新型の導入が決定され、1997年に2代目に跡目を譲る形で生産を終了した。
最終車の製造から20年以上が経過した現在では、絶滅が近い状態とのこと。
2代目
1996年から導入された2代目は、三菱パジェロ(2代目)がベースとなった。愛称は「パジェロ」。
乗車人数や、最大積載量などは概ね先代を踏襲したものの、ベース車両の変更によって大幅な近代化が図られた。
エンジンはターボチャージャー付き。
トランスミッションはオートマチックで、フルタイム四輪駆動。クーラーが装備されている。
また後付の隊内無線とは別にラジオが標準装備されており、災害時の情報収集の手段として使用される。(阪神淡路大震災における災害派遣時の経験を元に導入された)
平成13年度より、名称が「73式小型トラック」から「1/2トントラック」へ改められた。
先代、2代目ともに非装甲の車両だが、イラク派遣に伴って1/2トントラック用に防弾効果がある「付加材 1/2トントラック用」が導入された。
現行の車両ではエアインテークが無くなっている等、初期型とは差異がある。
製造はパジェロと同じく岐阜県坂祝町にあった三菱の子会社であるパジェロ製造で行われていたが、パジェロ製造による生産終了後は愛知県岡崎市の三菱自動車岡崎製作所に生産が移管されている。
約30年近く自衛隊でのみ運用されていた1/2トントラックだったが、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受け、2023年に高機動車等と共にウクライナへ供与される事が決定した。そして2024年には引き渡しが完了し、実際に前線で運用されている。