概要
ロベルト・シューマンはこの曲以前にもピアノ協奏曲の作曲に取り掛かっており、1828年には変ホ長調の曲を、1829年から1831年にはヘ長調の曲を、1839年にはニ短調の曲をそれぞれ作曲していた。しかしそれらはいずれも完成には至らなかった。
1841年に作曲した「ピアノと管弦楽のための幻想曲」を改作し、間奏曲とフィナーレを追加して1845年に完成させたものがピアノ協奏曲イ短調であり、シューマンが生涯で完成させた唯一のピアノ協奏曲となった。
1846年1月1日にライプツィヒ・ゲヴァントハウスでロベルトの妻クララ・シューマンの独奏、献呈者フェルディナント・ヒラー指揮で初演が行われた。
曲の構成
第1楽章はイ短調属音のホ音の強奏に、鋭い付点リズムでピアノが応える冒頭と木管の素朴な響きが印象的。展開部は幻想曲が原型となっていることもあって自由である。
第2楽章はヘ長調で落ち着いた楽章。ピアノの呟くような音型に木管が応える。
第3楽章はイ長調で第2楽章終盤から続く独奏ピアノで第1主題が始まり、第2主題を弦楽器が弾むように奏でる構成となる。
日本での扱い
この曲は日本では1911年5月に東京音楽学校で橘糸重のピアノ独奏、ハンカ・ペツォールトの伴奏で演奏されたのが初演とされている。
管弦楽付きの初演は1927年9月18日に宝塚小劇場でヨーゼフ・ラスカ指揮、宝塚交響楽協会によって行われたとされている。
1968年に放送された特撮テレビドラマ『ウルトラセブン』の最終回「史上最大の侵略(後編)」において、主人公のモロボシ・ダンがヒロインの友里アンヌに自分の正体を打ち明ける場面(メイン画像)で第1楽章が使用されたことがよく知られている。
この場面は満田かずほ監督が当初ラフマニノフのピアノ協奏曲を希望したのだが、満田監督の記憶違いでありイメージに合うものではなかった。
冬木透はその後満田監督が希望していた楽曲がグリーグのピアノ協奏曲だったと判明したが、ダンがアンヌに自分の正体を打ち明けるというダイナミックな展開にしてはショックが足りないと感じたと語っている。
冬木は満田監督のイメージを受けてこの曲を提案。当初は正体を打ち明ける場面のみ流す予定だったところを『セブン』オリジナルのBGMを挟んで断続的に最終決戦まで流されている。
使用された音源はディヌ・リパッティのピアノ、ヘルベルト・フォン・カラヤン指揮によるフィルハーモニア管弦楽団の演奏によるもの。後年の『セブン』サウンドトラックCDでもほとんどの場合この音源が収録されている。