概要
古代中国の俑は死者の墓に副葬される明器(冥器)の一種であり、被葬者の死後の霊魂の「生活」のために製作された。
墓所に生活具を埋葬して死後の世界での安泰を祈願する風習は世界各地で見られ、王侯貴族や有力豪族などになると当時の日常生活では欠かせない奴隷も生き埋めにするという記録もあった。しかしそれでは貴重な労働力も失われてしまうのは目に見えており、よっぽどの偉人でもない限りは土偶などの代替品が扱われた。
もっとも有名な所になると秦の始皇帝が建てた始皇帝陵兵馬俑であり、約八千体の古代兵士が生き写しの如き精巧さでズラっと並ぶ。俑は一体一体顔料で塗装された痕跡があり、軍は東を向いて六国に睨みを利かせている。兵馬、武器、生活用具から文官や芸人まで模した俑が拵えられており、最大の特徴は全員顔が違うという徹底ぶりで、一人ひとりにモデルとなる実際の人物がいたというのが通説である。
あまりにも精巧につくられ過ぎたため、2000年代には観光客のドイツ人が扮装し列に紛れ込んだが、来場客はおろかスタッフさえ気が付かなかったという。
…こういった経緯と逸話がある為か、創作物ではよく何らかの手法で蘇った兵馬俑の軍団がゾンビの如く襲い掛かってくるというトンデモガシェットに使われることも多い…