概要
セルアニメーションとは、アニメにおける表現技法のひとつであり、代表的なもののひとつ。デジタル作画が一般化するまでは、商業用アニメーションの主要な制作手法であった。
この単語の中で扱われているセルとは、セル画のことを指し、セル画を使って作るアニメーションと言う意味になる。
90年代以降は、デジタル技術の発達に伴いセル画の存在自体が消滅したが、特に日本ではセル画を使ったアニメーションの人気が高かったことから、セル画を使ったアニメーションを意識した絵で作られたアニメーションのことをセルルックアニメーションと呼ぶ。
同じ画法でやってみても劣化処理をしないといまいちそれっぽくなりにくい。また、同様の理由で劣化が少ないセルアニメ末期もデジタルアニメーションと誤解されることがある。
技法の内容
セル画とは、動かない背景画の上に、動画用紙に描かれた動画に透明なセルシートを載せてペンとインクで写し取り、裏から不透明な絵の具を塗ることでセル画を作成する。そして作成したセル画を撮影台に乗せて1コマずつ撮影していた。連続して見せることで恰も絵の中のキャラクターや物体、物事が動いているように見せる。これがセル画の基本である。
アニメーションという表現形態が普及して間もないころは、背景もキャラクターも1枚の紙にまとめて描くというやり方が普通であったが、背景まで手描きしなくてはならないため、背景の絵まで線が微妙にぶれてしまうという難点があった。また、セルロイドは燃えやすいなど管理上の難があったため後にほとんどアセテートにとって代わられたが、慣習上「セル」と呼ばれ続けた。
技術の発達によって線画はトレスマシンでコピーできるようになったが、着色だけは手動でしないといけなかったためかつては主婦の内職の定番であった。また、着色は専用の絵の具で行わなければならず色数にも制限があったため、色指定にも当時はかなりの苦労があった。
商業アニメが普及してからは撮影の利便性と効率化、映像の美しさの保持を踏まえ、セルシートによりキャラクターと背景を別々に描くというやり方が確立された。
その為、1990年代末頃からデジタル作画への移行が進み、日本国内ではサザエさんが2013年10月6日にデジタル移行したことで、セル画を使用してのアニメーションは完全に消滅した。
1990年代以降は、パソコンの発展・普及に伴い、紙に描かれた原画をスキャナーに取り込んで(トレース)、アニメーション部分の彩色(仕上げ)と 背景画とアニメーション部分を合成する過程(撮影)をコンピュータで行うようにしている。
現在では国内外含め、セル画を使用してのアニメ制作はめったに行われない。
問題
対象の動きを補正する人間の目の機能によって、絵が動いて見えるのがアニメーションであるが、当然ながら作画枚数が多いほど滑らかなアニメーションとなる。ただし、人間の目が認識できる限界が0.3秒に8枚、1秒にして24枚と実証されており、それ以上に作画枚数をさらに増やしても認識困難なのだが、ヌルヌル動くという利点はある。
ところが、デジタルであれば変形効果に手助けしてもらう手もあるのだが、セル時代は一枚ずつ書く必要があった。作画枚数という明確な基準は宣伝としてウケやすいため、作画枚数を誇るためにアニメーターの労力を増加させることが横行した。
これはアニメーターの闇の一つにもなっており、デジタル時代にも続いている。
また、かつては主婦の内職の定番であったことから、それにつけ込み仕事を紹介するとうたった詐欺事件も発生していた。