概要
『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』において登場した架空の条約。
第二次ヤキン・ドゥーエ攻防戦において、急進派に対しクーデターを起こした穏健派の議員、アイリーン・カナーバが臨時最高評議会として連合に対して停戦を呼びかけた後、C.E.72年3月10日、地球連合とプラントとの間に正式に停戦条約として締結された。
臨時最高評議会議長だったアイリーン・カナーバは地球連合にかなりの譲歩を見せたこの条約に不満を抱いたプラント国民の不信任により、この条約を締結した後、任をとかれた。
その後任として正式な議長になったのがギルバート・デュランダルである。
条約案
一.MS、MA、宇宙戦艦の数は人口、GDP、失業率等のパラメーターにより算出される。
一.双方賠償金はなし。
一.戦犯は国家ごとに独自に裁判にかける(国際法廷は開かない)。
一.プラントはジブラルタルとカーペンタリア以外の地球上の占領地を無条件で放棄。
一.双方、リンデマン・プラン遵守の査察を無条件・無制限で受け入れる。
一.MS等、兵器へのニュートロンジャマーキャンセラーの搭載禁止。
一.ミラージュコロイド技術の軍事的使用を禁止。
一.プラント及びザフト側条約監視団常駐基地や在地球公館の所在地として、ジブラルタルやカーペンタリアの使用を認める。
一.地球連合及び連合加盟国側の条約監視団常駐基地や在プラント公館として、ザフトの軍事衛星の一つを提供する。
一.プラント近くの軍事衛星が提供される。月は全域を中立地帯とするが、双方同数の拠点を置くことを認める。
一.地球連合は後にアルザッヘル基地を建設。地上の国境線および国家を戦前のコズミック・イラ70年2月10日の状態に復旧する。
実際の運用
厳格な抑止効果がありそうな条文なのだが、しょせん人の作ったものなので抜け道が幾らでもあるのが実情である。
まず「戦犯は国家ごとに独自に裁判にかける」の条文に関してだが、判決があくまで所在国の裁量によってなされるため、本来は戦犯として処罰されるに値した人物を簡単に免罪できる。実際、作中で民間人殺害に問われたイザーク・ジュールや、脱走兵であったディアッカ・エルスマンも当時の議長の計らいのみで処罰を免れている。もっとも、ヤキン戦役末期は連合・ザフト両軍とも戦争状態がエスカレートし、まともな国際法廷のもとでジャッジすれば双方で死刑のバーゲンセールが発生した事は想像に難くない。そのため泥沼化を避ける妥協が図られたともとれる。
「プラントはジブラルタルとカーペンタリア以外の地球上の占領地を無条件で放棄」は一見ザフトにとって橋頭保の損失が発生したように見えるが、地域占領は許されなくとも人道支援の為の駐屯は行えるため、二度目の大戦では連合加盟地域から離脱や反連合勢力が出た際に、それらの救援のためにベルリンや黒海に新たな駐屯地域が作られている。
「地上の国境線および国家を戦前のコズミック・イラ70年2月10日の状態に復旧する」これにより南米やオーブを含む幾つかの国家は独立を果たした。だが、独立後のオーブは連合管理下の影響から後任の政権担当が親連合派となっており、後に加盟を行っている。独立を担保するための武力を早急に手配することも難しかったため、南アメリカ共和国も第二次大戦の開戦機運が高まると連合に加盟し、独立戦争時代の努力は水泡に帰した。なお、そもそも国境線が元に戻らないまま第二次連合・プラント大戦に突入した地域も多数存在する。
「MS、MA、宇宙戦艦の数は人口、GDP、失業率等のパラメーターにより算出される」という条文は事実上の保有数制限であり、人口で勝る連合が戦力のうえで優位性を保つように見える。
「MS等、兵器へのニュートロンジャマーキャンセラーの搭載禁止」、「ミラージュコロイド技術の軍事的使用を禁止」はシリーズを通して最も引用される条文であるが、主に条文の制約を受ける加盟国家であっても繋がりを持った外部組織に委託する事で事実上の保有が行えてしまう。地球連合はNダガーNやネロブリッツを開発するためにアクタイオン・インダストリー社を始めとした民間企業にスタッフを派遣しており、完成した機体は非正規部隊に配備する事でこの制約をパスしていた。
なお、ミラージュコロイド関連技術で禁止されているのはあくまでもミラージュコロイド・ステルスのみであり、ビームサーベル(コロイドを定着させる磁場形成の応用で刀身状に形成している)に関しては、「ビームサーベル関連まで封じてしまうのは両陣営にとってあまりにも不利益である」という理由からザフト、連合両陣営に許可されている。
一応、第二次連合・プラント大戦が勃発が開始される前はどちらの陣営も表立っては条約に批准しているが、本編シリーズ・外伝シリーズを通してその回避策がとられることが多かった。
その後、第二次連合・プラント大戦が勃発したためユニウス条約はこの時点で役目を終えて無効化し、連合軍は核攻撃部隊「クルセイダーズ」による核攻撃を決意することとなり、それを受けたザフトでは核動力機体の実戦配備が行われていくこととなった。
そう、ユニウス条約は恒久的な交戦規約ではなく、あくまで今まで行っていた戦争に関する停戦条約であるため、新たに戦争が始まってしまえばその時点で無効になるのである。
更なる実情
ユニウス条約は地球連合加盟国・プラント間で批准されたものにすぎないため、兵器の制約に関する条項は、これらに属さない勢力に対して一切の拘束力をもたない。
このことは、フリーのMSパイロット、カイト・マディガンがテスタメントを鹵獲運用、傭兵カナード・パルスがドレッドノートイータを運用、マーシャンがデルタアストレイを運用、サーペントテールのブルーフレームDはミラージュコロイドステルス機能を運用している点からも窺える。
オーブ連合首長国は、戦後のどさくさでフリーダムとアークエンジェルを確保し、モルゲンレーテの秘密ドック内で修理を終えた後、封印措置を行っていた。最終的にはフリーダムをキラ・ヤマトが搭乗してアークエンジェルと共に運用されているが、オーブが地球連合に加盟するタイミングで国から離れており、ターミナルに協力する独自勢力として動いているため、オーブがフリーダムを運用していたと言う事実は存在しない。
一方で、この時に修理したフリーダムを参考にミラージュコロイド・ステルス搭載MSのエクリプス1号機の開発に成功し、さらにNジャマーキャンセラーの確保に成功した事で核エンジン搭載仕様のエクリプス2号機まで開発している。誤解されやすいが、このエクリプスが秘匿された理由はユニウス条約違反、では無く「他国に先制攻撃が可能な兵器」の存在が開戦の切っ掛けになる事を恐れたとのこと。しかし、「オーブの技術力を他国に知らしめて牽制する」と言う目的にエクリプス1号機が適任とされ、極秘の形でオーブ国際救助隊「ODR」に配備されている。
この条約によって保有数が制限されて表向きには軍縮も行われたため、制限の数を越えた機体は廃棄や解体して数を調整する事になる。しかし、実際は廃棄されるはずの機体が横流しされ、それを手に入れた武装勢力やテロリストがMSによる犯罪を増やしてしまっている。もっとも、これはこの世界に限った話でもなく、現実でも似たような問題は起きている。
余談
- 『SEED』では、捕虜の虐待などを禁じた「コルシカ条約」という戦時条約が定められていた。
- MS保有制限の話しの際に、インパルスは「機体の定義を戦闘機に変えてパスしている」と言われている。しかし、設定にそのような文章は無い。
- アニメ『DESTINY』のPHASE-03「予兆の砲火」においてデュランダルの台詞は「このミネルバ最大の特徴とも言える、この発進システムを使うインパルス。工廠で御覧になったそうですが。技術者に言わせると、これは全く新しい効率のいい"MSシステム"なんだそうですよ。私にはあまり専門的なことは解りませんがね」と回答、漫画『DESTINY ASTRAY』等でもザフトは報道陣にMSと回答している。
- また、インパルスのMS保有制限をパスする意図が込められているのは「シルエットシステム」による全領域対応の換装システムである。分離・合体の機構にMS保有制限をパスする意図は無く、破損したパーツを交換すると言う明確な運用方法が提示され、実際にそう運用されている。
- 良く誤解されるが宇宙世紀の南極条約とは異なり、「核兵器・核エンジンの開発および軍事利用」などは特に禁止をされている訳では無い。あくまで「核分裂反応が解禁できるNジャマーキャンセラーの軍事利用」を制限されているだけである。
- 「クルセイダーズ」が用いようとした核ミサイルは条約下でも保持し続けていたことになるが、これは条約に違反していないという事になる。
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