概要
『機動戦士ガンダムSEED』と『機動戦士ガンダムSEED DESTINY』の間に位置する、後に「空白の二年」と呼ばれることになるC.E.72年における「オーブ国際救助隊(ODR)」の活躍を描く物語。単行本は全4巻。
『機動戦士ガンダムSEED MSV NEW PROJECT』の一環として連載された。本作ではアニメ劇中で触れられなかったオーブ五大氏族のキオウ家や後のオーブ軍の主力である可変MSムラサメとのミッシングリンクとしての一面もある。
物語全体を通して語られるテーマに「なかったこと」があり、各勢力において様々な事情により揉み消された事象が取り上げられる。また、今まであまり物語に関わらなかったハーフコーディネイターや地球国家の一つである赤道連合、存在だけは言及されていたブルーコスモスに所属するコーディネイターについても掘り下げが行われている。
他にも、不明瞭だったモビルスーツ操縦の適性やオーブ再建までの流れ、戦後のニュートロンジャマーキャンセラーの取り扱いについて言及されたり、あくまで描写からの推測だったフェイズシフト装甲の被弾による消費エネルギー増加について明言されたりと、細かな設定補完も多い。
登場人物
ODR
- タツミ・ホーリ
- ケン・ノーランド・スセ
- ミヤビ・オト・キオウ
- エルネスト・スドー
オーブ連合首長国
- ウミト・ミツ・キオウ
愛の花束
- カヤノ・ククノ
アンティファクティス
テロリスト
- シェイマス・ボニー
メカニック
ODR
- EW452HM マニューバストライカー
- EW453R ライジンストライカー
アンティファクティス
テロリスト
アンティ・ファクティスから提供された物も含む。
大西洋連邦海軍
オーブ海軍
その他
用語解説
ODR
公的な正式名称は「オーブ外務省外郭団体国際協力機構管轄団体組織国際災害救助隊」。「オーブ国民が海外にて生命・財産の危機に晒された際、これを保護する」ことを目的としている。
表向きは国際親善関係の式典にて花を贈呈するなど大した活動を行っていないように偽装しているが、実際には自国の首相に対してさえ隠して保有しているモビルスーツをはじめとした戦力で秘密裏に武力介入を行い、トラブルの火消しをして「何もなかった」ことにするのが本来の役割である。
アンティファクティス
ハーフコーディネイターによるテログループ。
ボズゴロフ級潜水艦を拠点とし、世界各地において「タダ同然」にて兵器(主にモビルスーツ)を売り渡すという扇動工作を行っており、リーダーであるジョエル・ジャンメール・ジローの伝手により表に出ていない高性能試作機さえ保有する。
愛の花束
オーブ連合首長国のNGO(非政府組織)。
戦災地域への慰問や救援を行っている。しかし、オーブの理念からか非武装な上に傭兵等のボディガードさえ付けておらず、オーブが「金がある小国」と認識されていることから、ならず者の標的になりやすい。
港湾労働者組合
赤道連合に属するシンガポールの現政権を標的とするテログループの一つ。
第1次連合・プラント大戦下において大西洋連邦がシンガポールに対して特別法を認めさせてシンガポール海峡の航行権を独占し、連邦国籍以外(シンガポールも含む)の船に対して高額な通航料を強制したことと、それによるシンガポールの大不況に対して反発した地元労働者たちにより発足した。なお、その名の通り所詮は労働者の集まりに過ぎず、アンティ・ファクティスから兵器を調達した止まりでテロ行為自体は行ったことが無い。
ナウル島整備ドック
オーブ外務省がナウルに所有するモビルスーツのメンテナンスを行う施設。「ナウルドック」とも呼ばれる。
オーブは地理的に近いナウルに対して資金援助を欠かしておらず、それにより経済的に依存させて作った貸しを使って所有している。
他国に軍事関連施設を持つというのはオーブの体面的に良くないため存在は秘匿されており、職員もオーブ国民が占めている。一方、近所の食堂や売店、出入りの清掃業者は現地人であり、そこがセキュリティホールとなっている。
Eファイル
アンティファクティスが起こした一連の事件(つまり本作の内容)に関係する資料。ODRのエクリプス(ECLIPSE)が大きく絡んでいるため「E」を冠している。
C.E.73年にオーブの特定機密保護法が改正されたため、キオウ家監督下にて管理され、C.E.148年まで非公開となっている。メタ的には、このような形にして本編キャラの殆どが本作の内容について知らなかったことにしている。
余談
揺れる表記
バンダイの販売サイトや特設ページではエクリプスガンダムの型式番号が「MVF-X08」で、オーブ国際救助隊は「ODR(オーダー)」とされているが、ガンダムエース9月号に掲載された漫画『機動戦士ガンダムSEED ECLIPSE』の資料ではエクリプスガンダムの型式番号が「MVF-P08」とされ、劇中での台詞からオーブ国際救助隊は「ODR(オード)」と名乗っている(それらは単行本化の際に修正され一部のセリフも変更された)。
ちなみに、型式番号が「X」ではなく「P」だったのは、実戦運用を想定した機体に連合とC.E.71年以降のザフトは「X (eXperiment)」、オーブは「P (Prototype)」を付けるという設定に準じたためである。
細かな時系列
劇中の半年前に第一次連合・プラント大戦の講和会議「ナイロビ講和会議」(ここで取りまとめたものがC.E.72年3月10日に締結されたユニウス条約)が終了間近であることが語られていること、これが語られた少し後から半年前がC.E.71年7月であることから、劇中時系列はC.E.72年7月~9月辺りだと推測される。
株を上げた本編キャラ
本編キャラは基本登場しないが、登場キャラからの言及により株を上げた本編キャラが何人かいる。その顕著な一人がキラ・ヤマトであり、彼が完成させたナチュラル用OSの使用料を使ってマスドライバーを再建したことが語られたため復興面においてもオーブの英雄となった。また、ギルバート・デュランダルも「滅私の人」「よほどの手腕」と評され、アンティファクティスの思惑を大体読み切ってプラントが非のある形で巻き込まれないように立ち回っていた他、動向が不明瞭だったホムラもウミトから「(劣悪な状況の中、実務方面で)彼はよくやっているよ立派なもんだ」と言及された。
追加・補完された設定一覧
新しい設定を生やすよりも、既存の設定の掘り下げや拡張が主となっている。
- リビルド1416プログラム
- モビルスーツ操縦の適性(神経伝達速度が云々)
- オーブ解放作戦からユニウス条約締結までのオーブの状態
- 上述したOSの使用料についてもここでの補足
- 戦後におけるモビルスーツとOSの普及状況
- ユニウス条約締結後のニュートロンジャマーキャンセラーの扱い
- フェイズシフト装甲の被弾による消費エネルギー増加
- クルーゼ隊がヘリオポリスを襲撃した裏事情
- ゲリラ時代のカガリに関する情報の扱い
- オーブにおけるキラ・ヤマトとフリーダムに関する情報の扱い
- ザクウォーリアの開発時期
- 各勢力におけるハーフコーディネイターの扱い
- 戦中から戦後にかけての赤道連合(シンガポール)の状況
関連タグ
機動戦士ガンダムSEED MSV 機動戦士ガンダムSEED DESTINY MSV
機動戦士ガンダム0083 STARDUST MEMORY…TVシリーズの合間に起きた「なかったこと」にされた事件を取り扱う点、敵組織の目的がある人物と酷似しているなど、設定面で本作のオマージュと取れる部分が見受けられる。