機体データ
型式番号 | GAT-XX370 |
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全高 | 18.25m |
重量 | 98.50t |
装甲材質 | トランスフェイズ装甲 |
動力源 | バッテリー |
開発 |
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所属 |
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武装 |
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パイロット | ジョエル・ジャンメール・ジロー |
概要
GAT-X370 レイダーをベースに開発された可変モビルスーツ。ハーフコーディネイターのテロ組織「アンティ・ファクティス」のリーダーであるジョエル・ジャンメール・ジローの専用機。
開発コンセプトは「第2期GAT-Xシリーズの複合型モビルスーツ(MS)」であり、レイダーをベースにして機体の各部にGAT-X131 カラミティやGAT-X252 フォビドゥンの装備を取り付けた重武装化が施されている。その重武装化は後発となるゲルプレイダーにさえ匹敵する。
頭部には口部の「ツォーン」だけでなく、額部にも頭部増設光学兵器ユニット「ミーミル」を搭載し、バックパックには「シュラーク」と「エクツァーン」、両脹脛部のスラスターには52mm超高初速砲が備え付けられて砲門数と火力が大幅に向上している(砲門数はカラミティを超えている)。さらに、腕部クロー「ザラストロ」には、敵のビーム攻撃を曲げて無効化してしまう偏向機構「ゲシュマイディッヒ・リージョン」が採用されている。特徴的であったミョルニル系統の武装は一切採用されていないが、代わりに両腕にはシールドを備えたクローアーム「ザラストロ」で格闘能力を確保しつつ、右側面からの攻撃にも耐えられるように改修されている。これだけ重武装化されていてもレイダーの推力の高さにより重力下でもMS形態のまま単独飛行可能であり、増設した火器についてもモビルアーマー(MA)形態時に全て前方を向くように配慮されている。この他、エールカラミティのアドラーを拝借して使用している。
しかし、一撃離脱を得意とする原型機や制式採用機に対して、カラミティの支援砲撃能力やフォビドゥンの強襲突撃能力を中途半端に盛り込んで重武装化した結果、原型機を知る者から見ればレイダーの個性を殺してしまっており器用貧乏な感じが否めないという印象を抱かれている(戦闘スタイルもフォビドゥンに近い)。また、バッテリーで運用するにはその出力に対して攻撃と防御のそれぞれでエネルギー消耗が激しいため、攻撃時には偏向機構が使えず、防御時には攻撃できないという問題も抱えている。もっとも、フォビドゥンもゲシュマイディッヒ・パンツァーが前方を塞いで邪魔になるため攻撃と防御を両立することはできなかった。
それらを加味しても機体ポテンシャルは非常に高く、ビームサーベルとビームシールド以外の武装を失っている上に核エンジンが暴走気味だったとはいえ、核動力機のエクリプス2号機を圧倒するほどの性能を発揮した。特にMA形態時の初速と機動力は重武装化してもなお原型機から継承できており、超音速飛行に達する前のエクリプス2号機であれば捕らえるほどである。
ジョエルの正体がブルーコスモスの工作員であることから、アンティ・ファクティスに機体を流しているのはエールカラミティと同様に地球連合軍、それもブルーコスモスに毒された一部の将官が機体を融通したものと思われる。
開発経緯
第1次連合・プラント大戦において、ジャスティスとフリーダムというZGMF-Xシリーズは脅威に値する活躍を地球連合軍に見せつけ、それらの機体に対し第2期GAT-Xシリーズのカラミティ、フォビドゥン、レイダーは一定の戦果を上げていたことが確認された。このことから、この3機の集約した複合型をコンセプトに設計され、開発プロジェクトは特にプラント(コーディネイター)に忌避感を持つ大西洋連邦系、ブルーコスモスに属する軍需企業の主導で進められた。
開発期間短縮のため既存技術を転用した結果、いびつでキメラ的とも言えるフォルムを持ち、ただでさえナチュラルの手に余っていた操縦性は更に劣悪となっており、ナチュラルではまず操縦できない。つまり、「対コーディネイター用に作られながらコーディネイターでなければ操れない」という矛盾した機体になった。そのため、反コーディネイターを掲げるブルーコスモスの政治・思想とは相容れず開発は中断され、アンティ・ファクティスがそれを引き継いで完成させた。
前述した様々な理由により本機は欠陥兵器に分類されるが、それらを差し引いても高い火力・防御力・機動力を有していたことは特筆するべき点とされ、同時に「標準サイズのMSでは機能の全搭載は困難」「専用パイロットの育成が必要」といった欠点を洗い出すことにもなり、GFAS-X1 デストロイの開発・運用へ繋がることとなる。なお、デストロイの開発元はユーラシア連邦のアドゥカーフ・メカノインダストリー社であり、ブルーコスモス経由によりデータが渡ったものと思われる。
武装
125mm 2連装高エネルギー長射程ビーム砲「シュラーク」
大型ジョイントアームによりバックパック部と接続された2連装ビーム砲。本機のメイン武器。
通常のビームライフルの2倍以上の砲身・口径と、高い出力・連射性を併せ持つ。
カラミティ系列との違いとして、エクツァーンの砲身に設置された誘導装置によってフォビドゥンのフレズベルクと同様にビームの軌道を自在に変えられる。これにより、ゲシュマイディッヒ・リージョン(後述)と射撃を両立できないために同射線上からカウンター射撃を食らうリスクを軽減できる。
腕部クロー「ザラストロ」
両腕にマウントされた対ビームシールドも備えたクローアーム。名称の由来はモーツァルトのオペラ『魔笛』に登場する僧の名前と思われる。
レイダーの「2連装52mm超高初速防盾砲」のシールド部とレイダーのクローを組み合わせたような装備だが、原型機ではクローの中央部に搭載されていた短距離プラズマ砲はオミットされ、代わりに刺突用の鋭利な突起になっている。また、グリップが存在しており、マニピュレータにて保持することもできる。
クローはMA形態時にも格闘武器として使用できる。
エネルギー偏向機構「ゲシュマイディッヒ・リージョン」
原型機の腰部クローを換装するようにして搭載されたブリッツの「ミラージュコロイド」の原理を応用した対ビーム防御システム。名称はドイツ語で「ゲシュマイディッヒ」は「柔軟な」、「リージョン」は『領域』を意味する。
フォビドゥンのゲシュマイディッヒ・パンツァーに連なる装備であり、両腰部の発生器から生じさせた磁場によりビームの粒子を歪曲させ、自機への命中を避ける。
磁場を発生する部分だけ取り出したような装備のためか、実体シールド部分は無くなっている。また、発生器は専用のアームによって保持されており、発射されたビームの方向に発生器を向けて伸ばすことができる。そのため、ゲシュマイディッヒ・パンツァーの問題点だった「実体シールドが前方を塞ぐ」という問題は概ね解決できているが、エネルギー消費の問題により相変わらず防御(歪曲)と攻撃は両立できない。
88mmレールガン「エクツァーン」
シュラークとバックパックを接続している大型ジョイントアームのバックパック側接続部から小型ジョイントアームにて保持されているレールガン。「エクツァーン」はドイツ語で「犬歯」を意味する。
フォビドゥンと同様に砲身に磁場発生機が設置されており、本機の場合はシュラークの弾道を曲げる役割も持つ。一方、磁場発生機として使う場合はシュラークと同時に発射できない。
52mm超高初速砲
両脹脛部のサブスラスターに備え付けられた速射砲。レイダーの「2連装52mm超高初速防盾砲」を単装にして分散配置している。
スラスターごと回転させることで射角を確保できる。ビーム兵器ではなく実弾武器の模様。
頭部増設光学兵器ユニット「ミーミル」
額部に搭載されたリーゼントのようなビーム砲。名称の由来は北欧神話の主神オーディンの相談役の賢神ミーミルと思われる。
スキュラのような明らかに大口径であることが特徴だが、収束率が高いため照射されるビームは細く、エクリプス2号機のフェイズシフト装甲を一瞬で溶断する威力を有する。
砲身を開いて露出させたジェネレーター(増幅器)をツォーンと接続することができ、高い集束率は失う代わりに出力を大幅に向上させることができる。なお、機能的に可能なだけで想定されている運用ではないらしく、接続時は一部ケーブルを引きちぎる必要がある他、その出力と熱量に機体側が耐え切れない。
100mmエネルギー砲「ツォーン」
原型機から継承された口部に搭載されているビーム兵器。
口径こそ小さいが、近距離での威力はかなりのもの。また、頭部(カメラ)が向いた位置に発射できるという利点もある。
本機ではミーミルの方をメインとしており、その出力増強に用いられた。
M417 80mm機関砲
MA形態時の機首に内蔵された実体弾砲。非使用時にはエアロシェルでカバーされている。
MA形態のドッグファイトを想定して搭載されたが、通常装甲の相手ならばこれだけで撃破可能な威力を持つ。
M2M3 76mm機関砲
両肩に装備されているマシンガン。原型機と共通する武装。
MA形態での突撃用として搭載された。
オプション装備
空戦用複合兵装「アドラー」
4種のモード「ウォーハンマーモード」「ライフルモードA」「ライフルモードB」「ジャベリンモード」を切り替えて攻撃可能。内ライフルモード2種は副次的な武装となる。
元々の装備では無かったが、エールカラミティを撃墜する際に使用しており、MA形態時は右手にて強引に保持している。
活躍
ジョエル・ジャンメール・ジローの正体を外部へ伝えるためエールカラミティに乗って命からがら母艦から脱出したヴァレンティーナ・ビノンを始末するためにジョエルが搭乗する。出撃の際、ヴァレンティーナが置いていったアドラーを拾っている。
アドラーにてエールカラミティの右翼を狙撃して飛行能力を奪い、進退窮まって反撃に移った同機のスキュラをゲシュマイディッヒ・リージョンにて完封、スキュラの照射終了に合わせてシュラークにて撃墜した。この時、エールカラミティの右腕が爆散を免れており、その2連装ショルダーキャノンからビームが発射されるもザラストロにて防ぐ。
撃墜直後、襲ってきたエクリプス2号機との交戦に移る。ビームサーベルにて斬りかかられるも身体を逸らして回避し、カウンターとして左の裏拳を決める。次はミラージュコロイド・ステルスによる奇襲を受けるも、場所を察知してミーミルにて迎撃、エクリプス2号機の右腕を溶断する。
形勢不利として立て直しのためにエクリプス2号機がMA形態にて後退したのを見て、即座にMA形態に変形してそれを追い、初速の優位性から追いついて体当たりを行い、同機の加速を妨害する。
そこにエクリプスから横槍が入るも、ゲシュマイディッヒ・リージョンにて防ぐ。そのままエクリプス2機と交戦し、シュラーク発射に対してカウンター気味に放たれたビームライフルの一撃が左肩を掠めるも、以降のビーム射撃はゲシュマイディッヒ・リージョンにて完封し、近接戦でも両機を圧倒する。しかし、エクリプスがパイロット負荷を考慮しない高機動にて近接戦を仕掛けてきたのに対して弾幕を張って迎撃するも回避されて接近を許し、ビームサーベルにてアドラーを破壊される。反撃として負荷によりパイロットが気絶しかけて隙が生まれたエクリプスへミーミルを発射するも、2号機が身を挺して割って入ってきたため外す。
エクリプス2機が本機の弱点に気付き、MA形態にて陽動をかけながらのカウンターを狙ってきたため、シュラークを湾曲させて対応する。しかし、2号機の影に潜んで接近していたエクリプスに気付くのが遅れ、ゲシュマイディッヒ・リージョンが間に合わないままビームを食らって左腕を失い、そのままビームサーベルにてシュラークとエクツァーンも切断され、左腕の誘爆によりコックピットにもダメージを負う。
概ね無力化された本機に対して投降を促してきたエクリプスを残った右腕のザラストロにて拘束し、ツォーンと連結させたミーミルを当てようとするも、海中から2号機が割って入り、そのビームサーベルにて右腕を切断され、エクリプスを逃がしてしまう。即座に標的を2号機に切り替え機体が融解するほどの高出力にてミーミルを発射するも、ビームシールドにて凌ぎ切られ、ミーミルの出力に耐えきれず口部分が爆散、ダメージの蓄積により少し遅れて機体全体も爆散した。
それでも戦闘開始時から故障により暴走気味だった2号機の核エンジンに更なる負荷をかけて暴走=核爆発を確定させるという置き土産を残すことには成功した。
立体物
2023年10月6日のBANDAI SPIRITSのPV動画「機動戦士ガンダムSEED ECLIPSE ガンプララインアップPV」で【企画進行中】と告知されている。
その後、「FULL MECHANICS 1/100 レイダーガンダム」を流用したバリエーションキットとして、プレバン限定で販売されることになった(詳細は→こちら)。価格は6,820円(税込み)、商品名は「ブーストレイダーガンダム」である。
センサー類やミーミルの砲口以外はパーツ分割により色分けされている。原型機の他、カラミティのランナーも使われており大量の余剰パーツが存在し、リード線はないがミョルニルも組むことができる。
一方、複合兵装アドラーは付属しておらず、エールカラミティの物と持ち手パーツを流用する必要がある。
- PV動画
※02:24の予告。
余談
- 頭頂に備えた大型ビーム砲や射出される細めのビームは、メタ的に言えば『FREEDOM』の額部搭載武装を意識したものとされる。威力はさすがに3年後に開発される「常識を遥かに超える武器」には及ばないかと思われる。
- 『ECLIPSE』は他にも『FREEDOM』を意識したセリフや描写が見られる。一例としては「自国に核兵器を撃ち込むだと?そんなバカな話しがあるのか!?」→「あるわ!」など。
- レイダーのバリエーション機は、何れも大型オプションや重武装化へ走る傾向があり、そのためか「クロト搭乗のレイダーの構成が一番シンプルでは無いか」と言う声もある。
- 「GAT-XX370」という型式番号の他、頭部のツォーンや両脚のスラスターなどの特徴を踏まえると、ベース機はGAT-X370 レイダーと思われる。ただし、クロト機は前大戦で撃墜されて宇宙の藻屑となっているため、本機のベースとするために再生産されたものと推察される。
- ブーストレイダーはおそらくクロト機の再生産を改造している可能性がある。パイロットのジョエルがブルーコスモスの工作員であることに加え、概要にも述べたが「ジョエル専用レイダー」として開発されていることなどから、開発にブルーコスモスが関わっている可能性が高い。なお、メタ的なことを言うとブーストレイダーは「FULL MECHANICS 1/100 レイダーガンダム」のバリエーションキットとして商品化が企画されている。
- なお、同じレイダーのカスタマイズ機であるゲルプレイダーは、再生産や開発など諸々の費用が原因で既存のGAT-333 レイダー(制式仕様)を基にクロト機の仕様を再現、クロト機の再現モデルをベースにして改修が施されている。ゲルプレイダーは改修プラン「アクタイオン・プロジェクト」に基づいているが、ブルーコスモスの私兵たる第81独立機動群「ファントムペイン」が関わったのは第1期GAT-Xシリーズのみであり、それ以降の機体にファントムペインは関わってない事が原因とされる。
- 実戦運用を想定した試作機の型式番号に付けられる「X」を2つも冠している唯一の機体である。「試作機をベースにした試作機」という、本機の未成熟さがよく表れている。
- MS形態時の砲門数は8門(アドラー込みなら9門)、対してMA形態時の砲門数は11門と、MA形態の方が火力が増す珍しい機体である。
関連タグ
機動戦士ガンダムSEED ECLIPSE 第2期GAT-Xシリーズ ジョエル・ジャンメール・ジロー
大西洋連邦 アンティ・ファクティス...開発元。
レイダー...ベース機。
デストロイ...後継機。開発元は大西洋連邦ではなくユーラシア連邦。
ゲルプレイダー...同じくレイダーをベースにした機体。既存兵器を過積載して重武装化したという共通点も持つ。なお、ブーストレイダーは開発期間短縮、ゲルプレイダーは開発予算節約が目的である。