概要
可視光線や赤外線をはじめとする電磁波を偏向させる効果を持つ架空の特殊粒子。その特性はマイクロ・プリズムに近似しており、粒子そのものが電磁場や量子情報を電場するキャリア(伝導体)の特性を持つため、様々な用途に用いられる。要するにSEED版ミノフスキー粒子である。
ステルス用途に使えるため、「大量破壊兵器の隠匿」が容易になり得るこの技術は戦争終結後に結ばれた「ユニウス条約」によって、「ミラージュコロイド搭載機の使用は禁止」という形で大きな制限を受けた。ただし、明確に禁止されたのは「ステルス機能を搭載した機体」に関してのみである。
ミラージュコロイド技術そのものはビーム兵器の根幹等にも使われているため、ステルスに引っ掛からない技術に関しては果てなく開発・運用されている。
劇中や設定を見るに、当初は「ミラージュコロイド」の事を後述のステルス機能に限定して呼んでいたため、ミラージュコロイド=ステルス機能という極端な表現になってしまっていた。その後、ビーム兵器関係の根幹技術にミラージュコロイドの存在が確認されてからは、「光学迷彩技術の禁止」という形にするために「ミラージュコロイド・ステルス」という単語が登場する事になる。そのため、多くの資料で「ミラージュコロイド搭載機」と記載されている場合はミラージュコロイド・ステルスによる光学迷彩を搭載した機体の事を指す。
主な使い道
ミラージュコロイド・ステルス
前述のとおり可視光線や電磁波を偏向する特性があるため、このコロイドを表面に定着させる事で自機の姿を背後の景色にカモフラージュする事ができ、機体の隠匿が可能となる。要するに迂回型の光学迷彩の一種である。目視捕捉の基本となる対象物に対して光の反射が行われないため、これを展開されると相手側からは完全に視認できなくなり、電磁波もレーダー反射しなくなるため電子的な索敵も困難となる。
ミラージュ(蜃気楼)という名前の由縁たる用法で、ザフト・連合を問わず研究がなされていたもののであり、ジン戦術航空偵察タイプにおいて停止時に限り運用に成功、ブリッツによって戦闘時での使用に耐用するレベルで実現する。もっとも、ミラージュコロイドを定着させるためには装甲表面に電磁場層を形成し続ける必要があるため多大な電力消費が発生する。また、電磁場層を相転移によって乖離させてしまうことからフェイズシフト装甲との併用が行えない(フェイズシフト装甲を展開した瞬間にコロイドが剥離する)。
足跡や航跡など外部への影響や、それに伴って発生する音までは消去できない。もっとも、真空である宇宙空間では音の問題はなくなるものの、大抵の場合「移動にスラスター噴射等を必要とする」ため、ノズル周囲の粒子が吹き飛ばされ熱紋・電磁波の秘匿が不可能となるという別の問題が発生する。従って、ガスなど熱を発しない推進剤の使用や、慣性移動などの手段を取る必要がある。
- 水中ではコロイドが水に溶解し、装甲に定着しないためこれまた使用不可。
- C.E.71年当時は黒かそれに近い色(メタリックグレーなど)の装甲でしか使用出来なかったが、後に黒色以外の装甲にも使用できるように改良された。
- C.E.73年時点では条約によりミラージュコロイドが規制されている他、この技術を探知する技術の確立で絶対的な優位とまでは言えなくなった。(それでも視認できないと言う強みは残る。)
- C.E.75年時点では専用の戦艦、MSでなくても外部装備という形で運用できるようになっている。未搭載MSには使用可能な外装装甲、未搭載戦艦には使い捨ての布型外装によって使用を可能にした。
※ブリッツの場合連続85分間(小説では80分)という使用時間の制限があるが、劇中において時間制限が問題となる描写はなかった。
電子妨害用途
先述の通りミラージュコロイドは可視光線と電磁波を偏向するため、これを利用した派生技術も幾つか存在する。デスティニーの場合、周囲の空間にミラージュコロイドを放散させ、そこにエネルギースクリーンを投影する事で自機の残像を形成し相手側の捕捉を妨害する。コロイドそのものの持つ電磁波偏向特性もあるため、レーダー側の攪乱も可能というワケである。
ビームサーベル技術
ミラージュコロイドを装甲表面に定着させるための磁場形成理論を応用することにより、磁性を持った粒子群を刀身状に形成することができる。これがC.E.におけるビームサーベルの原理となる。
要するにIフィールドをミラージュコロイドに置き換えたものだが、このビームサーベルでは同じ磁場で固定されたサーベルと衝突した場合、反発せずにすり抜けてしまう特性がある。一方、ユニウス条約締結後のザフトではこの磁場形成理論に依らない新たな刀身形成技術の開発に成功している。
更には、クライン派が独自に接収・改修したドムトルーパーには、ミラージュコロイドの技術を応用したアンチビームフィールド形成装置、「スクリーミングニンバス」が搭載され、ビームと同属性の電子を含む粒子を散布することにより、大火力の砲撃すら凌ぐ防御力、接触することで敵機を撃破できる攻撃力を両立している。
フォビドゥン及びその系列機が装備するエネルギー偏向装甲「ゲシュマイディッヒパンツァー」もミラージュコロイド技術の恩恵を多分に与かっている。装甲表面に発生させた磁場によりビームの粒子を歪曲させることができ、ミラージュコロイドも同時散布することによりそのキャリア特性を用いた歪曲方向の制御を可能としている。
同機に搭載されている誘導プラズマ砲「フレスベルグ」も理屈は同じで、この辺りは宇宙世紀の技術の「Iフィールド」に似ている。また、誘導目的のビーム偏向はレクイエムにも採用され、圧倒的な射角の広さを実現した。
(反磁性体かつ)極性分子の水分子にも干渉可能であり、フォビドゥンブルー等の水中戦用MSの対水圧装備といった応用まで確立されている。
コンピュータウィルス
外伝「ASTRAY」にて登場。コロイド粒子を媒介に敵の電子機器にコンピューターウイルスを送信する「バチルスウェポンシステム」を搭載したゲル・フィニートが登場する。
この圧倒的な能力は危険視され、一族によって隠匿された後に、テスタメントやプロトセイバーに搭載され、秘密裏に一族直下の組織に運用された。
その他
ゴールドフレーム天に装備された「マガノイクタチ」、さらに「マガノイクタチ」をライブラリアンがストライカーパックとして発展させ、ヴァンセイバーに装備することによって空力制御を行い、飛行能力を最適化する。『ΔASTRAY』ではミラージュコロイドだけでなく「クリスタル化」という独自の機能も併設されたネロブリッツが登場しているほか、『VS ASTRAY』にはミラージュコロイドを利用して自身の姿を偽装するアストレイ ミラージュフレームが登場している。
他にも、巨大兵器の隠匿に使用されるなど、ミラージュコロイドは(二つの意味で)見えないところでかなりの活躍している。その影響は大きく、第1次連合・プラント大戦の停戦条約として結ばれたユニウス条約には「ミラージュコロイドシステムの軍事使用禁止」も盛り込まれるほどだった。
ミラージュコロイドステルスに関して厳重に制限しているためなのか、ビームサーベルに使うには許されるなど条約には抜け道もあり、ファーストの核よろしく最終的には破られている。
対応策
ミラージュコロイドデテクター
ミラージュコロイド専用のレーダーであり、ミラージュコロイドそのものを探知するよう製作されている。
ほぼ不可能であったミラージュコロイドが展開された機体の探知が可能になったが、「ミラージュコロイドを使用している機体が近くにいる事がわかる」程度であり、使用している機体の正確な位置までは特定できない。
装置自体は小型であり、どんな機体であっても搭載が容易であるとされている。
ミラージュコロイドセンサー
周辺のミラージュコロイド(自ら散布することも可能)の動きを把握することで、エリア内の物体(機体やミサイルなど)の動きを感知することができる。
ミラージュコロイドを装備した兵器
地球連合軍
- GAT-X207 ブリッツ
- GAT-X207SR ネロブリッツ
- GAT-SO2R NダガーN
- TS-MA2 メビウス(SEED ASTRAY Bに登場)
- ガーティ・ルー(特殊宇宙戦闘艦)
ザフト軍
オーブ連合首長国
- MBF-01 アストレイ ゴールドフレーム天(完全体)
- MBF-P01-Re アストレイ ゴールドフレーム天>ゴールドフレーム天(未完成)
- MBF-P01-Re アストレイ ゴールドフレーム天>ゴールドフレーム天
- MBF-P01-Re2 アストレイ ゴールドフレーム天ミナ
- MBF-P01-Re3 アストレイ ゴールドフレーム天ハナ
- アストレイ ゴールドフレーム天ミナC
ライブラリアン
- LH-GAT-X103 ヘイルバスター
- LN-GAT-X207 ネブラブリッツ
- マガノイクタチストライカー
- MBF-P05LM アストレイ ミラージュフレーム(機体偽装、近接戦センサー用の特殊タイプ)
関連タグ
機動戦士ガンダムSEED 機動戦士ガンダムSEED DESTINY 機動戦士ガンダムSEED FREEDOM 機動戦士ガンダムSEED ASTRAY 機動戦士ガンダムSEED ECLIPSE
劇場版では(ネタバレ注意)
劇場作品機動戦士ガンダムSEED FREEDOMでは、敵味方問わずミラージュコロイド・ステルスを存分に使用している。
「ミラージュコロイドによるステルス戦法は禁止じゃないの?」とツッコまれる事もあるが、禁止措置はユニウス条約によるもの=地球連合加盟国とプラントの間でのみ有効であるため、諸々の事情でどの勢力にも属さない形になった主人公側は元より、地球連合から独立しているファウンデーション王国にも適用されない、ということである模様。
また、「アルテミス要塞に対しミラージュコロイド・ステルスを使用した潜入作戦」という見覚えのあるシチュエーションに対し、アスランは「ニコルの戦術だな」と懐かしむ発言をしている。
ミラージュコロイド搭載兵器(劇場版)
ファウンデーション王国
- レクイエム(偏向リング)
- 偏向リング設置艦
オーブ連合首長国
- クサナギ(布型外装による一時運用)
- ORB-01 アカツキ(コンテナによる一時運用)
- キャバリアーアイフリッド-2(搭載しているが未使用)