ハイパーデュートリオンエンジン
はいぱーでゅーとりおんえんじん
ザフトが開発したモビルスーツ(以下MS)用の新型核エンジン。C.E.73年11月から74年初頭にかけて行われた第二次連合・プラント大戦において幾つかの高性能MSに採用された。
ZGMF-Xシリーズで実用化されたMS用ニュートロンジャマーキャンセラー搭載型核エンジン(核分裂炉)と、セカンドステージシリーズで実用化されたデュートリオンビーム送電システムを併せ持ったハイブリッドエンジンとなる。
プラント最高評議会議長ギルバート・デュランダルが、最新鋭の次世代MS群サードステージシリーズを開発する際に「最高の技術を全て盛り込む」ことを指示したことによりその一環として開発された。
名称だけではわからないが核分裂炉であるため、使用にはニュートロンジャマーキャンセラーの併用が不可欠である。しかし、第一次連合・プラント大戦の停戦条約であるユニウス条約にてモビルスーツ等の兵器へのニュートロンジャマーキャンセラーの搭載は禁止されている。それにもかかわらず導入に踏み切ったのは、第二次大戦開戦のきっかけとなった連合のMk5核弾頭ミサイル発射以降条約が形骸化していることが大きい。
仕組み
主動力となる核分裂炉には、約2年前に開発されたZGMF-Xシリーズに搭載されていた核エンジンよりも小型・高出力化した超小型原子炉(ウルトラコンパクト・ニュークリア・リアクター)を採用している。その上でデュートリオンビーム送電システムに対応する高性能なバッテリーも併載している。2つの動力が相互補完し合うために、理論上は戦闘中のパワーダウンが発生することはなく、従来型核エンジンの数倍の出力を発揮する。要するに、従来型バッテリーが抱えていた「短時間でエネルギーが切れる」という欠点を核エンジンの余剰エネルギーを適宜供給することで解決し、従来型核エンジンが抱えていた「エネルギー消費量が供給量を上回った瞬間にパワーダウンする」という欠点を不足分をバッテリー側から供給することで解決している。これにより、従来型核エンジンを搭載しているフリーダムでは不可能だったミーティアの「MA-X200 ビームソード」の大延長をストライクフリーダムとインフィニットジャスティスは可能とした。しかし、デスティニーのように兵装周りの出力調整が不十分なために不要なエネルギー消費が多い場合はバッテリー側のエネルギーを使い切ってそのままパワーダウンしてしまうこともある。
また、デュートリオンビームを受信する装置を頭部に備え付けているが、デュートリオンビームを照射できる母艦はセカンドステージシリーズ専用運用艦ミネルバしか存在しないため、送電システムを用いるにはミネルバの艦載機ないし友軍である必要が出てくる。なお、相互補完が間に合っている(バッテリーに十分なエネルギーが残っている)限り受信する必要はなく、作中でも相互補完が間に合っていたためか、どの搭載機もデュートリオンビームを受信したことはなかった。とはいえ、受信すれば数秒でバッテリーを完全に充電できるため、保険として無駄にならない装置ではある。
第二次大戦後、大破したデスティニーがデスティニーSpecⅡに改修される際にデュートリオンビームを照射する機能が追加された。しかし、あくまでオーブ連合首長国(モルゲンレーテ社)が技術試験のために実装した機能であり、公的な機関が運用しているミネルバの後継艦ミレニアムにはデュートリオンビームを照射する機能は搭載されていない。加えて、第二次大戦後のC.E.75年時点で運用されている送電システムに対応した機体はインパルスSpecⅡとインフィニットジャスティス弐式程度しか稼働していない(この他所在不明のガイアも存在。元々搭載されていたストライクフリーダムに関しては弐式への改修において頭部の受信装置があったと思われる部分に「EQM-Y148 収束重核子ビーム砲ディスラプター」を追加装備した上動力が変更されているため撤去されたと思われる)。
コクピット&M.O.S
サードステージシリーズ専用規格
デスティニーとレジェンドには本エンジンのポテンシャルを最大限活用するための専用コクピット及び専用M.O.S「Gunnery United Nuclear Deuterion-Advanced Maneuver (SYSTEM)(訳:核・デュートリオン統合先進機動砲撃システム)」が採用されている。これによりサードステージシリーズは通常モードとハイパーモードの二種類に機体出力の調整を行うことができる。このハイパーモード(高出力状態)時のサブディスプレイを展開したコクピットの設定画も存在するが、『DESTINY』時には未使用に留まっている。
また、核エンジンの一種でありながら、バッテリーを併載していることから従来のバッテリー機のものを踏襲したエネルギー残量計が採用されており、バッテリー側のエネルギー残量が少なくなるとアラートを表示する。上述した通り、本エンジンにおけるパワーダウン≒バッテリー切れなため、バッテリー機と同程度に重要なアラートである。
ターミナル製ZGMF-Xシリーズ独自規格
ZGMF-Xシリーズの機体とデルタアストレイに搭載されている核エンジン機専用M.O.S「Generation Unsubdued Nuclear Drive Assault Module (Complex)(訳:抑制されていない核駆動を使っている強襲モジュール複合体)」をアップデートするだけでも単なる高出力な核エンジンとして問題なく運用できる。こちらは多様な機体で長期間使われてきたM.O.Sであり信頼性が高いためか、専用M.O.Sのように何らかの問題が生じることはなかった。一方、このM.O.Sを搭載しているストライクフリーダムとインフィニットジャスティスの計器はZGMF-Xシリーズを踏襲しているためエネルギー残量計は採用されていないが、M.O.Sの起動画面等が表示されるマルチ表示モニターで原子炉の各種パラメータを確認できていたことからバッテリーの残量も同様に確認できる可能性はある。
採用経緯
エンジン自体の具体的な開発時期は不明だが、採用自体はC.E.73年10月以降にザフトが第2世代ドラグーン・システムの性能実証を行うため製造したZGMF-X3000Q プロヴィデンスザクにて、ドラグーンの性能を最大限に発揮するために採用されたのが初となる。その後、サードステージシリーズの1機としてプロヴィデンスザクをアップデートする形でZGMF-X666S レジェンドが完成する。また、ZGMF-X56S インパルスのシルエットシステムの1つであるZGMF-X56S/Θ デスティニーインパルスでみられたエネルギー不足問題を解消するために一から再設計されたZGMF-X42S デスティニーにも採用された。デスティニーとレジェンドは完成してから間を置かず実戦投入され多大な戦果を挙げた。
本エンジンの設計データはターミナルへ流れており、ファクトリーにて開発中だったZGMF-X19A インフィニットジャスティスとZGMF-X20A ストライクフリーダムの動力としても採用された。この2機はC.E.74年初頭にオーブ国防軍所属の機体となるが、オーブはユニウス条約を批准していないため条約違反にはあたらない。
インフィニットジャスティスとストライクフリーダムに用いられている技術は最新のものでもセカンドステージシリーズまでなことに加えて、サードステージシリーズはザフトの工廠が不休の突貫工事で開発した機体であることから、本エンジンはセカンドステージシリーズが開発されていた時点で既に開発・完成していた可能性が高い。ユニウス条約の条文的に、ニュートロンジャマーキャンセラーを兵器に搭載しなければ条約違反にならないため、エンジン単体の開発自体は問題なく行える。特にコズミック・イラには量子コンピュータを用いた高度なシミュレータがあるため実物を作る必要性も薄い。
ニュートロンジャマーキャンセラー デュートリオンビーム送電システム...使用された技術繋がり。
TRANS-AM...プールしておいた余剰エネルギーを解放することにより高出力化するという類似点を持つ。なお、こちらはプール分が尽きれば自動的に終了して低出力化するため、性能低下は起こるがパワーダウンするほどではない。