概要
1960年代、NASAで勤務していたジェームズ・ラブロックにより提唱され、作家ウィリアム・ゴールディングにより命名された理論。名称はギリシャ神話の大地の女神「ガイア」に因み、この理論こそが女神ガイアの知名度を大きく押し上げた…というのはちょっと大袈裟かもしれない。
単純に言ってしまえば「この惑星は生物みたいなものであり、生態系と地球は相互に干渉している」という説である。
いわゆる惑星、環境の擬人化のようなもので、非常にわかりやすいことから、創作等にも「惑星の意志」「地球そのものの具現化」といった扱いで登場することが多い。
しかしガイア理論は現時点においては「思想」「解釈」の域を出ておらず、例えば「新型コロナウイルスの影響で経済活動が縮小されて大気汚染やオゾン層破壊が回復した」という事実があったとしても、それをガイア理論で「地球が人類から身を守る為にコロナウイルスを作った」などと安易な帰納法を行うのは言語道断である。
- 2020年4月20日(東部標準時)には新型コロナウイルス感染症の影響でニューヨークのWTI原油先物価格が史上初のマイナスを記録し、一時1バレルマイナス40ドル超まで落ち込んでいる。それだけ原油需要が落ち込んだという事である。産油国間のカルテル崩壊等、他の要因もある。(通称「逆オイルショック」。オイルショックの項目を参照。)
- しかしオゾン層は「新型コロナウイルス問題以前から緩やかに回復傾向」にあったと見られている。
あくまで環境保全とは持続可能社会の実現であり、経済活動の抹殺ではない。ガイア理論を論じるうえでは、人類の環境破壊を過小評価してはいけないが、過大評価してもいけないのである。人類もまた、地球で生きる生態系の一つなのだから。
また、地震や津波等の天災を「地球の意思」「地球の自浄作用」等と決めつけるのも被災者差別を生みかねない危険を孕んだ考えである事に注意しなくてはならない。
人間は地球の意思を超えた存在になったのか?
漫画『ジョジョの奇妙な冒険 第六部 ストーンオーシャン』に出てくるリキエルというキャラクターは、アポロ11号の月面着陸という出来事に対してこのような解釈をしている。
「1969年7月アポロ11号のアームストロングが人類初めて月面に立った歴史的事件…オレは今までそれのどこが偉いのかさっぱりわからなかった。なぜならロケットってのは科学者とか技術者が飛ばすものだろう?サルだって行けるわけだからな。だがオレはあそこにいる『ロッズ』たちを初めて見れたとき…その意味がわかったんだ・・・。月面に立ったのは人間の『精神』なんだってなッ!人間はあの時地球を超えて成長したんだッ!価値のあるものは『精神の成長』なんだッ!」
彼の言うとおり、人間は宇宙に進出し月面に立ち、地球の意思を超えた存在になったのだろうか?
しかし、未だ人間は地球外に生息可能環境を広げられてはいない。
ガイア理論を取り入れた作品
環境問題が不安視されていた90年代~00年代の作品ではガイア理論を取り入れた作品が非常に多く、ラスボスが「ガイア」そのもの、ということもあった。
- 『シムアース』・『46億年物語』:ガイア理論に基づいた地球育成ゲーム。
- 『火の鳥』
- 『ウルトラマンG』:地球からの刺客としてコダラー、シラリーが登場し、最後の敵となった。
- 『ウルトラマンガイア』:作中に登場するウルトラマンガイアとアグルは大地と大海の意志そのものである。
- 『ウルトラマンZ』:終盤で登場人物の1人が怪獣の大量発生をガイア理論で説明しようとしている。
- 『ウルトラマンSTORY0』:「惑星の声」が度々話のカギを握り、最終回ではゾフィーに味方し最強の敵・ババルウを打ち破った。
- 『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』:怪獣の行動した跡が浄化される(いわば地球の恒常性維持?)などの描写がある。
- 『平成ガメラ』
- 『天装戦隊ゴセイジャー』:ゴセイナイトの出自にガイア理論が大きくかかわっている。
- 『ファイナルファンタジーシリーズ』:度々惑星の意志が話の中枢となる(わかりやすい例は7)
- 『SPEC』
- 『クロノトリガー』
- 『スプリガン』
- 『BLUEGENDER』
- 『ワンパンマン』:最初の敵ワクチンマンが、地球が生み出した存在とされている。
- 『ヒーリングっど♥プリキュア』:地球の意思によって生み出されたヒーリングアニマル達がプリキュアのパートナーになる。ヒーリングアニマル達の多くは人間に友好的な存在だが、最終回に出てきたサルローの様に人間に批判的な個体もいる。
- 『惑わない星』:地球はおろか太陽系全ての惑星が意思を有し、人間のような姿で登場する。
- 『TYPE-MOON作品全般』:世界観が共通する作品において、霊長の抑止力「アラヤ」とは別に地球という星の生存本能が産み出した抑止力「ガイア」が存在する。
- 『寄生獣』
- 『ザ・キング・オブ・ファイターズ』:珍しく「複数の地球意思」が登場している作品。東洋の地球意思はオロチ編のラスボスである「オロチ」。地球のバランスを正すのが目的で、その過程で人類を抹消しようとしていたが、KOF97で優勝チームに敗れたことでその可能性を見出し、一旦保留として再度眠りについた。KOF2003以降で語られる西洋の地球意思は名前も行動目標も悉くが不明だが、現在は何らかの理由で活動を停止している。西洋の地球意思に従う「遥けし彼の地より出づる者」がオロチの力を西洋の地球意思の復活のために充てようとしたり、東洋側も西洋側を敵視するなど、同じ地球意思でありながら東洋と西洋で仲は良くない様子。「遥けし彼の地より出づる者」も人類との戦いを経て西暦600年頃から彼らはほぼ姿を消しており、事実上オロチのみが現代の地球意思だと言っても過言ではない状況になっている。
関連イラスト
地球をお手当て
(※2020年5月の作品です)
関連項目
宇宙船地球号:ガイア理論と共に語られる別の思想