地球意思「オロチ」を復活させようとするオロチ一族と、かつてオロチに
挑みこれを封じた「三種の神器」の子孫たちとの戦いを描く。
なお、初代である『KOF94』にもオロチ編のキーキャラクター草薙京が主人公として登場するが、こちらは「序章」という扱いであり、厳密にはオロチ編には含まれない。
ただし、『'94』と、ストーリーの無いドリームマッチである『KOF98』もまとめた5作品を「オロチ編」という枠組みでまとめているケースも有る(PSP版『Chapter of Orochi』等)。
以下では'95~'97をオロチ編として解説する。
'95
京のライバルキャラであり、シリーズ屈指の人気キャラである八神庵が参戦した作品。
'94でルガールに挑んで負け、死に掛けの状態でルガールの飛行船の爆発に巻き込まれていたのだが、どういうわけか生きており、ルガールに洗脳された状態で戦うことになる。
システム
本作からチームエディットが可能になりチームの枠を越えてキャラクターを選べるようになった。
本格的なストーリー展開が行われ、八神庵の登場もあって草薙京が主人公としての存在感を発揮し始める。
システムは前作『'94』とほぼ一緒だが、挑発はBC同時押しに変更された。また、攻撃避けからカウンター攻撃が出せるようになり、『'94』では一部のキャラクターのバグにより可能であった大ジャンプが標準搭載された。
またスルーアタック自体にあまり利点がなかったためか、カウンター攻撃に変わる形で削除された。
その他『'94』ではジャンプ強キックと同じモーションであった空中ふっとばし攻撃は、キャラクター別の固有モーションに変更されている。
援護攻撃については、ごく一部のキャラクター同士に限り使用の際の相性が設定されており、使用するための条件を満たしていても相性によっては使えないようになっている。
ガードキャンセルを使える条件は前作の「5回以上の連続ガード成立」から6回以上に増えたため、この場合の実戦投入はより難しくなっているが、パワーMAXなら1回以上のガードから使用できる。
一発のダメージがKOF史上最も高く、パワーMAXで攻撃力1.5倍ということもあって多くのキャラで即死コンボが組める。
アーケードでもボスキャラクターが使用可能な上にそれより強い奴がいるなどゲームバランスはかなり悪い。(CPUが全体的に超反応で、しかも各技のダメージ量がプレイヤー側より高く設定されているためアホみたいに強い。
ステージ演出
ステージ演出が非常に凝っており、地中海ステージ(餓狼伝説チームステージ)では、一人目は橋からステージへ対戦開始と共に飛び降りるのだが、庵と鎮元斎を一人目にすると、落下速度の差の関係で、極端に速い庵が極端に遅い鎮にいきなり葵花絡みの即死連続技を決めることができるという鎮使い涙目庵使いウハウハとなっている。
アメリカ・サウスタウン道場ステージ(龍虎の拳チームステージ)では、歌舞伎の「セリ」のようなものに乗ってステージにせり上がるという演出上、ラウンド開始後約4秒間ほどはキャラクターの動ける距離が制約される。
派手なステージ演出もKOFシリーズの特徴の一つであるが、ゲームの戦略に影響を与えているのはこの作品だけである。
'96
オロチ四天王の一人ゲーニッツがラスボスとして立ちはだかった作品。
ストーリーモードでは彼を倒すとそのまま自身が持つ風の力で自害してしまう。
そのため、最終作「'97」にも登場しない。
前作から演出面が大幅に強化。超必殺技の複数所持、通常版とMAX版の差異明確化(パワーゲイザーならMAX版で3発に増加など)、発動時の演出が導入されたのも今作から。ゲームバランスは良くないものの、演出とBGMはシリーズ最高品質という声が高い。
「'95」からの変更点
参加キャラクターの一部入替
前作初登場のライバル・八神庵は、過去2作でラスボス、ルガール・バーンシュタインの秘書を務めていたマチュア、バイスとともに参加。また、怒チームではハイデルンに代わって養子のレオナが、龍虎チームではタクマに代わってユリが、ユリが抜けた女性格闘家チームは、前作の龍虎ライバル枠を引き継いだのか、香澄が加入している。
飛び道具の射程が大幅に制限され、遠距離で気弾の撃ち合いという状況が起きにくくなった。
画面端から端までまともに(?)飛んでいくのは、アテナのサイコボール、ケンスウの超球弾、庵の闇払い、舞の花蝶扇、クラウザーのブリッツボールくらい。
パワーMAX状態の攻撃力補正が大幅に低下。加えて、挑発でのゲージ減少が大幅に増したため、一定以上のプレイヤー同士の対戦において、パワーMAX状態になる事は滅多にない。
避けが削除され、代わりに緊急回避が追加された。しかし、導入初期という事もあって性能は悪く、今作が攻めて強いシステムである事もあってほとんど使われない。
そしてジョーの挑発。ネオジオフリーク創刊号の表紙を飾った男が、どうしてこうなった…
'97
オロチ編最終章。最終ボスは復活を果したオロチ一族の長「オロチ」。
ゲーニッツを除くオロチ四天王の三人(七枷社、シェルミー、クリス)が登場。
オロチ一族としての本性を現した姿で中ボスとしても立ちはだかる。
オロチ八傑集の一人ガイデルの娘レオナ・ハイデルン、先祖がオロチの炎を受け入れてしまっていた庵も暴走という形で力を目覚めさせ、乱入キャラとしてプレイヤーチームと戦うことになる。
ゲーム雑誌『ゲーメスト』・『ネオジオフリーク』・『ファミ通』の3誌による人気投票も行われ、各1位のキャラクター3人による'97スペシャルチームも登場。
このチームのメンバーは『リアルバウト餓狼伝説SPECIAL』からのボイスを流用している他の『餓狼伝説』シリーズのキャラクターと違い、完全新規で録り直されている。
完成度の高いストーリー性が特徴的な作品であり、歴代『KOF』の中でも屈指の人気を誇る一方、BGMが一部のキャラしかなく、セリフもないことから批判が多かった。
BGMに関しては、「TV番組の生中継のような演出」の再現を狙ったもので、ゲーム中では「Satella News Network」というテレビ番組の中継映像として演出されている。
システム
キャラクター選択前にアドヴァンストモード、エキストラモードという二つのシステムを選ぶ。前者は『KOF'96』がベースのシステム。後者は『KOF'94』がベースのシステム。
前作のレバー認識に対する非難に対応したためか、本作ではレバー認識が非常に甘く技が出やすい。しかし、その甘すぎるレバー認識と多数の短縮コマンド(後述)の存在により、技の暴発が多いのが難点。
また、超必殺技発動時に画面が暗転する演出が本作から導入された。
'96で存在しなかった特殊技が復活し、さらに通常技からキャンセルで出すことができる。一部の特殊技は通常技からキャンセルすると、単発で出したときとは性能が変化するものもあり、この性質は『KOF』特有のものとして後のシリーズに持ち越されている。
キャラ相性が非常に重要なゲームで、並べ方によってパワーゲージの有無が変わってくる。例えば庵や山崎を一番手におくと、二番手は必ずパワーゲージがない状態から始まる。
そのため、キャラクターの選択、順番にも戦略性が生まれ、強キャラだけで固めるのがよいとは限らなくなった(例えば暴走庵、覚醒レオナ、裏社で組むと、毎回ゲージがゼロで格下のキャラクターにも負けてしまう可能性は低くない)。
その後
ストーリーラインに含まれないお祭り作品である『'98』を挟み、『'99』より新たなストーリー「ネスツ編」がスタートした。主人公の交代に伴って『'99』の開発時には京と庵を欠場させる案も挙がったが、結局隠しキャラクターとして登場し以降のタイトルでも皆勤している。
オロチ一族は一時期影を潜めることになったが、「ネスツ編」に続くストーリー「アッシュ編」では封印されたオロチの力を利用しようと目論む勢力が登場、死亡した八傑集がストーリー上でも徐々に再登場していく。
裏話
書籍「ALL ABOUT ザ・キング・オブ・ファイターズ'95」の「SNK開発チームインタビュー」によると、やや冗談交じりの回答ではあるものの「やっぱり、1999年でケリつけたいですね、ストーリー的に。(サブプランナー・とよちゃん)」「やっとこの間終わったところだから、あんまり考えたくないなあ。(プランナー鍬差)」とあり、'95完成時点では「オロチ編」という物語構成や、それを三部作にする構想はまだ無かったようである。
また、「基本的に『'94』を作っている最中から『'95』っていうのはあり得るだろうって、スタッフのほうも考えてましたんで、いざ作ることになったときは、ま、きたかなって言う感じで(笑)」とあり、'94制作中時点から'95の制作についても開発チームの視野にあったようだが、「内容的にどういうものにしていくか」のちゃんとした制作スタート時点は「初冬ぐらいです」とのこと。
'94制作時に勝るとも劣らない過密スケジュール進行だったらしく「(職場に)泊まりっていうのは日常茶飯事ですよね」「完徹はないですけど、会社に泊まって、朝の4時、5時までやって、始業の9時前に起きてっていう。」「週に3回帰ったら周りから白い目で見られるって世界で(笑)」「男も女も関係ないです。」「とにかく部屋がクサくなるんですよね、泊まってる人間が多いと。」「(会社から)歩いて20分くらいのところに風呂屋があったんですけど、1月の阪神大震災でツブれてしまったんですよ。だからいっさいシャワー施設もないし、お風呂もない。」「月1万円払って近くのスポーツジムの会員になって、そこのシャワーを利用するとか、苦労しましたね」と振り返っていた。
チームエディット機能は実は'94時点から発案されていたそうだが「チーム対戦というシステム自体が史上初の試みだったんで、まずそこが受け入れられないとどうしようもないだろう」との考えからボツにされたとか。