概要
どの程度の規模の地震が、いつ・どこで発生するかを予知すること。時期・場所・大きさの3つの要素が重要となるため、漠然と「明日地震がおこる」などというのは地震予知には含まれない。地震が発生する場所・時期・大きさを事前に予測することができれば、被害を軽減することにつながる。しかし残念ながら、現在の科学では地震を正確に予知することはほぼ不可能であると言われている。
日本における地震予知
1962年に通称「ブループリント」と呼ばれる「地震予知-現状とその推進計画」という報告書が発表され、国家プロジェクトとして「地震予知計画」(測地学審議会の建議に基づく年次計画)が1965年度から始まった。1969年には、地震予知に関する調査・観測・研究結果の情報交換・学術的検討などを行う「地震予知連絡会」が国土地理院に設けられた。その後、1995年の「地震防災対策特別措置法」に基づき総理府に「地震調査研究推進本部」が設置された。
東海地震の予知問題
東海地震とは、南海トラフ沿いで想定されている巨大地震の1つで、遠州灘から駿河湾にかけてのプレート境界(駿河トラフ)を震源域として発生すると想定されている、マグニチュード8クラスのプレート境界地震のことである。
この地域では100〜150年ほどの間隔で大規模地震が発生しているが、1854年に起きた安政東海地震以降は160年以上にわたり地震が発生しておらず、地殻にひずみが蓄積されているため、「東海地震はいつ発生してもおかしくない」と考えられている。さらに東海地震については、その発生メカニズムや発生場所、規模などがある程度特定されていることなどから、日本で唯一予知の可能性がある地震と考えられてきた。
ひとたび東海地震が発生すれば大きな被害が出ると予想されるため、1978年には東海地震の予知を前提として「大規模地震対策特別措置法」が制定され、静岡県を中心とした東海地方の各市町村が「地震防災対策強化地域」に指定され、東海地域を中心にひずみ計などの観測機器が配置されて、異常の有無が常時監視されるようになった。この観測において異常なデータが検出された場合、専門家による判定会が招集され、判定結果をもとに気象庁は「地震予知情報」を発表し、閣議を経て内閣総理大臣により「警戒宣言」が発令されるという仕組みであった。この「警戒宣言」が発令された場合、地震防災対策強化地域ではまるで戒厳令のような厳しい規制が実施され、交通規制が行われたり学校が休校になったりするのである。
しかし現在では、このような「東海地域のみを対象とした予知を前提とした防災体制」は取られておらず、気象庁は2017年から「南海トラフ地震に関連する情報」の運用を開始した。