概要
南海トラフ巨大地震が発生する可能性のある異常な現象が起きた場合などに、気象庁が発表する情報の通称。正式名称は『南海トラフ地震に関連する情報』。
従来、南海トラフの一部である駿河湾およびその周辺(静岡県)では東海地震という巨大地震が切迫していると指摘され、その予知は可能であると考えられていたため『東海地震に関連する情報』および『警戒宣言』が発令されるシステムであった。
しかしその後、東海地震の予知は困難であるという認識が専門家の間でも大勢となってきたため、気象庁は2017年11月1日をもって東海地震関連情報の発表を取りやめ、南海トラフ地震関連情報(南海トラフ地震臨時情報)に移行した。
南海トラフ地震に関連する情報
情報の種類 | 発表条件 |
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臨時 |
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定例 | 「南海トラフ沿いの地震に関する評価検討会」の定例会合において評価した調査結果を発表する場合 |
対象となる現象 |
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想定震源域内でM7.0以上の地震が発生(実際に東北地方太平洋沖地震の約2日前にはM7.3の前震が発生していた) |
想定震源域内でM6.0以上の(或いは震度5弱以上を観測した)地震が発生し、ひずみ計で当該地震に対応するステップ状の変化以外の特異な変化を観測 |
1カ所以上のひずみ計で有意な変化を観測し、同時に他の複数の観測点でもそれに関係すると思われる変化を観測している等、ひずみ計で南海トラフ沿いの大規模地震との関連性の検討が必要と認められる変化を観測するステップ状の変化以外の特異な変化を観測 |
その他、想定震源域内のプレート境界の固着状態の変化を示す可能性のある現象が観測される等、南海トラフ地震との関連性の検討が必要と認められる現象を観測 |
南海トラフ地震臨時情報
種類 | 発表条件 | 備考 |
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調査中 |
| この段階では、南海トラフ巨大地震との関連性は不明である |
巨大地震警戒 | 想定震源域内でMw8.0以上の巨大地震を確認した場合 | 地震発生時に津波からの避難が間に合わない地域の住民は1週間事前避難を行う |
巨大地震注意 |
| 日頃からの備えを再確認し、必要に応じて避難をする |
調査終了 | 「巨大地震警戒」「巨大地震注意」のどちらにも当てはまらなかった場合 |
発表事例
- 2024年8月8日、M7.1の日向灘地震が発生し、2017年に東海地震の判定会が南海トラフの評価検討会に移行してから初となる臨時の評価検討会が開催され、初めて臨時情報(巨大地震注意)が正式に発表された。NHKなどでは1週間程度、南海トラフ臨時情報を知らせる字幕が表示された。時期的には、臨時情報発表中という南海トラフ地震への緊張感が高まるお盆休みとなり、観光業などに大きな影響が出た。
情報の信憑性
正直なところ、『南海トラフ地震臨時情報』を鵜吞みにすると危険である。その理由としては、
- 南海トラフ巨大地震の発生を事前に予測した例が一切ない
- 気象庁の文書には以下の注意書きが含まれている。
- 「世界の事例ではM8.0以上の地震発生後に隣接領域で、M8クラス以上の地震が7日以内に発生する頻度は十数回に1回程度」という注意書きが書かれている(巨大地震警戒)
- 「世界の事例ではM7.0以上の地震発生後に隣接領域で、M8クラス以上の地震が7日以内に発生する頻度は数百回に1回程度」という注意書きが書かれている(巨大地震注意)
などが理由である。
発表されなくても、突発的に発生するおそれもあるため、必ずしも発表されるわけではない。