概要
おそらく前代未聞のネコ1匹に狩り尽くされた鳥として有名な絶滅種の小鳥。
スズメ目・イワサザイ科に属する。
(とはいえ6200種を超える大グループ・スズメ目の一員というだけで、同じくスズメ目のスズメとはだいぶ遠縁。スズメ目の中でもニュージーランド固有のグループ・イワサザイ科に属する)。
夜行性でメスの方が大きく、虫を主食にしていたらしい。
大きさ10センチくらいだが、羽が小さく飛べない鳥だった。
絶滅の経緯
1.6平方kmしかないスティーブンス島は狭いので、これまで人が居住した事の無い平凡な無人島だった。
ところが、1892年に「この島に灯台を作ろう!」ということで建築工事が始まり、その灯台守としてある一家が移住した。
この一家にはメスの飼い猫(妊娠中)がおり、そのネコは2年ほどたったある日見慣れない小鳥を仕留めて持ってきた。
「うーん、なんだこの鳥?」
飼い主の男性はその鳥が何者なのかを調べるためにウォルター・ブラーという学者に送ってみたところ、これが新種だという事がわかった。
その後標本サンプルはトラヴァースという別の男性にも送られ、さらにロスチャイルドという学者もこの鳥の標本を入手。彼がスチーブンイワサザイの新種発表を行った。
で、後々トラヴァースは金儲けのためという不純な動機ながら助手と一緒に島にやって来て調査を行った。が……
「オイオイ、こいつぁなんの冗談だ…野良猫しかいねェじゃねえか……」
最初に来たネコは妊娠中だったので、その子供たちがすっかり野良猫として定着してしまっていたのだ。
もはや骨も残っちゃいまいと断念したトラヴァースは引き上げ、新聞には「スチーブンイワサザイ絶滅」と取り上げられることに。
その後生態系に悪影響を与えているということでネコたちは全頭駆除されたが、とうとうスチーブンイワサザイが再発見されることはなかったのだった……。
後の世に「外来種をむやみに放してはいけない」という教訓を残したメッセンジャー、それがこの鳥である。
スチーブンイワサザイは天敵のいない小さな孤島に棲んでいたため、外敵に対し、全く脆弱であり、飛翔もできなかった。個体数も多くはなかったはずである。そのため、短期間の間に直ぐに絶滅してしまった。スチーブンイワサザイだけでなく、孤島の固有種(特に飛べない鳥)にはこのような事例が多い。
イワサザイ科の懸念
この鳥が属するイワサザイ科はスズメ目のグループでは珍しく、4種全てが飛ぶのを苦手とする。いずれも平和なニュージーランドで生息していた為、飛翔能力が衰えてしまったのだろう。
スチーブンイワサザイの他にはヤブサザイも1972年頃に絶滅してしまっており、残るイワサザイとミドリイワサザイも窮地に追い込まれている。
知名度の低いこのグループだが、カカポやキーウィの様に宣伝されて欲しいものである。
ミドリイワサザイの動画↓