概要
イギリス・グレートブリテン島の南西部に位置するウェールズに土着の言語。インド・ヨーロッパ語族ケルト語派に属する。
「ウェールズ(Wales)」という名称は英語名であり、自称では「カムリ(Cymru)」であるため、ウェールズ語自体ではウェールズ語を「カムリ語(Cymraeg)」と称している。
英語を話すゲルマン系のアングロサクソン人たちが大陸から流入してきた5世紀ごろより前にグレートブリテン島に先住していたケルト系のブリトン人の言葉が生き残ったものである。
島の南西端で話されているコーンウォール語や大陸側のブルターニュ半島(フランス)で話されているブルトン語もブリトン語の末裔であり、これらとは近い関係にある。
現在のウェールズでは共通語として英語が広く話されるようになってはいるものの、人口の約3割にあたる85万人がウェールズ語を話しており、隣のイングランドにも推定11万人ほどの話者がいる。ウェールズの北西部に近いほど話者率が高く、特にグウィネズ州では人口自体は希薄ながらもその大多数がウェールズ語話者となっている。ウェールズ語が優勢な地域を総称して「Y Fro Gymraeg(ア・ヴロー・ガムラーイグ)」という呼び方もある。
前につく単語に応じて語頭の子音が変化(子音交替)する特徴を持つ。ウェールズ語を意味する単語「Cymraeg」に対する上記の「Y Fro Gymraeg」もその例の一つである。
また、綴り上では「LL」にあたる無声歯茎側面摩擦音[ɬ]など、英語や他の欧州語にはあまりみられない珍しい音を持つのも特徴。ちなみにこの「LL」は英語にもあるような「L」と同様に舌と歯茎をつけて閉鎖を作りつつも、舌の両脇の頬から息を通して摩擦音にする発音であり、日本語表記ではサ行で代用されることが多い。
主な単語
体の部位
意味 | カナ表記 | 綴り | 備考 |
---|---|---|---|
頭 | ペン | Pen | |
額 | タルケン | Talcen | |
目 | サガド | Llygad | |
耳 | クリスト | Clust | |
鼻 | トルウィン | Trwyn | |
口 | ケグ | Ceg | |
腕 | ブライフ | Braich | |
手 | サウ | Llaw | |
脚 | コエス | Coes | |
足 | トロエド | Troed |
数
意味 | カナ表記 | 綴り | 備考 |
---|---|---|---|
0 | ディム | Dim | |
1 | イン | Un | |
2 | ダイ | Dau | |
3 | トリ | Tri | |
4 | ペドワル | Pedwar | |
5 | ピンプ | Pump | |
6 | フェフ | Chwech | |
7 | サィス | Saith | |
8 | ウィス | Wyth | |
9 | ナウ | Naw | |
10 | デグ | Deg |
自然
意味 | カナ表記 | 綴り | 備考 |
---|---|---|---|
水 | ドゥール | Dŵr |
生き物
意味 | カナ表記 | 綴り | 備考 |
---|---|---|---|
動物 | アニヴァイル | Anifail | |
イヌ | キ / キー | Ci | |
ウサギ | クニャン | Cwningen | |
ウシ | グワルセーグ / タル(牡牛) / ビウフ(牝牛) | Gwartheg / Tarw / Buwch | |
ウマ | ケフィル | Ceffyl | |
オオカミ | ブライズ | Blaidd | |
クマ | アルス | Arth | |
コウモリ | アスドリム / アストリム | Ystlum | |
シカ | カルゥ | Carw | |
ネコ | カス / キャス | Cath | |
ビーバー | アヴァンク / アーヴァンク | Afanc | |
鳥 | アデリン | Aderyn | |
魚 | パスゴディン | Pysgodyn | |
サメ | モルギ | Morgi | |
節足動物 | |||
クモ | コリン / コピン | Corryn / Copyn | |
チョウ | ピリパラ | Pili-Pala |