概要
言語学的には無数に存在するアラビア語の方言の一つであり、現存するアラビア語の中で唯一ラテン文字を用いて表記する。
かつてアラブ人がシチリア島を統治していた頃に持ち込んだアラビア語シチリア方言が母体となっており、在来のロマンス語であるシチリア語の影響を大きく受けて現在の形となった。シチリア島では既にアラビア語系の言語は在来のロマンス語に取って代わられたため用いられていないが、シチリア文化圏に属していたマルタで生き残った形となっている。
シチリア語の影響を強く受けているだけあり、専門用語がふんだんに用いられた文章はイタリア語などのロマンス語の知識があればそこそこ読み解くことが可能である。しかし基礎語彙はアラビア語そのものであるため簡単な文章であればある程他のヨーロッパ諸語の話者にはよく分からなくなってくる。
ラテン文字を用いるだけあり発音はアラビア文字を用いるアラビア語に比べ圧倒的に簡単であるが、その分セム語派独特の「特定の子音の並びを骨格とし、そこに母音や別の子音を挿入する形で語形変化させる」という文法から、語形変化はカオス極まりない事となっている。