概要
中国語(汉語・華語)と総称される言語群のグループのひとつで、主に広東省東部、福建省西部、江西省南部の山間部に住む客家および少数民族シェ族により用いられている。また客家が流通や商業に従事する事が多かった事から清代以降台湾やシンガポール、マレーシア、インドネシアなどの各地に客家のコミュニティが広がったことでこれらの地域にも話者が分布している。特に台湾では官話系の国語(≒普通話)、閩語系の台湾語(客家からの呼称は「學佬(ホーロー)語」)並びにオーストロネシア語族に属する先住民諸語などとともに公的な地位を得ている。
4世紀以降中原や中国東北部から徐々に華南へと移動を続けた客家の言葉は漢文の時代の言語を継承していると言い伝えられているが、実際には北に隣接する贛語から分岐して少数民族シェ族の元来の言葉の影響を受けて成立したものではないかという説もある。
どの地域でも客家語話者は少数派である事から周辺の多数派言語の影響を受けやすく、また山間部という往来に難がある地域の言葉という特性上、地域差は大きい。その中で広東省梅州市の「梅県話」が伝統的に客家語の代表格とされてきた。客家移民の多い台湾でも同じく梅州市にルーツを持つ人々の話す「四県腔」が台湾客家語の代表としてメディアや公共交通アナウンスの言語として採用されている。それ以外の方言としては恵州市やその周辺の「恵陽話」「海陸腔」の影響力が大きい。
表記
他の中国語の例に漏れず、客家語の表記には漢字が用いられ、中国大陸では簡体字が、台湾では繁体字が用いられる。大陸では表記の標準化がなされていないものの、公的地位の認められている台湾では民国政府教育部によって「台湾客家語書写推薦用字」としてある程度の標準化が進められている。
また発音表記としてはローマ字が用いられ、清代にキリスト教の宣教師が考案した「白話字」という体系が広く用いられており、Wikipedia客家語版のように白話字表記の客家語が用いられた情報ソースも多い。
白話字以外では広東省教育部門と中華民国教育部によってそれぞれ別個に客家語専用の拼音が制定されている。このうち台湾の「客家語拼音方案」は『教育部台湾客語辞典』や『萌典』などのオンライン辞書でも用いられており、日本人が客家語を学習する上では比較的役に立つ表記法と言える。
この他日本統治時代の台湾ではカタカナベースの発音表記「広東語仮名」も存在しており、台湾総督府による辞典に採用されていた。なお客家語なのに「広東語」としているのは台湾の客家の大部分が広東省出身者であったためであり、広州市や香港の言葉としての広東語とは無関係である。