概要
閩語とその他の汉語(漢民族の言語)との隔たりは大きい。王育徳の研究 (1960年) によれば、閩語のアモイ方言の場合では、スワデッシュの基礎単語200語で比較した場合、普通話との類似性(同源語)は 48.9% に過ぎず、これはドイツ語と英語の58.5%よりも少ない、つまり遠い。また、呉語の蘇州話とでは51.40%、広東語とでは55.31% 、比較的近い客家語とでも58.65%しか類似性はない。中華人民共和国の言語学者の研究でも、汉語が単一の言語ではなく、特に閩語がその中でも特異な性質を持っていることが指摘されている。
また、閩語はさらに主に5方言に分かれ、他に明確に分類できない2方言グループがある。これらは、たとえ語彙が同じでも発音の差が大きく、一般に相互に通じないとされる。このため別々の言語とすることもある。
- 閩北語 - 建甌・松渓・政和・建陽・崇安など
- 閩東語 - 福州・福清・古田・福安・蛮講など
- 莆仙語 - 莆田・仙游など
- 閩南語 - アモイ・泉州・漳州・竜岩・潮州・雷州・海南・台湾など
- 閩中語 - 永安・三明・沙県など
中華民国では閩南語系の台湾語と閩東語系の馬祖語がそれぞれ国家語のひとつとして標準中国語(国語)と同等の地位が保証されている。ただし台湾語が民国政府支配域全体で公共交通放送用法定言語のひとつに指定されているのに対して、馬祖語は連江県限定となっている。
差異
閩語の地域のうちで、北部(閩北語)では古来、「十里不同音」と呼ばれていたように、山を一つ隔てれば相互に対話できなくなるほど言語の違いが大きかったが、沿海地方では、交通が便利で交流が活発だったことと、普通話の影響を受けたことから、相互理解の程度はかなり高い。
泉州・廈門・漳州・台湾で使用される閩南語は、東南アジアの閩南語と意思疎通が可能であり、潮汕の閩南語との間でも、一定程度の相互理解が可能である。使用人口が非常に多い上に分布の範囲も広大な地域に及ぶため、その影響力も閩語の分支のうちではひときわ大きなものとなっている。
閩東語は福州と海外(東南アジア・日本・北アメリカ)の華人コミュニティーの間で意思疎通が可能な他、近隣に対しても一定程度の類似性があるものの、閩南語とは相互理解が不可能である。
関連タグ
・言語
・福建省
・海南省
・台湾