概要
ウクライナやその周辺地域で話されるスラヴ語派東スラヴ語群の言語。同じ東スラヴ語群に属するロシア語とは言語圏が接しており、「方言連続体」と呼ばれるグラデーションのように類似した方言が地域的に連続している。特にキーウ(キエフ)を含むウクライナ東部ではそもそもロシア語に比較的近い方言が話されていた上、帝政ロシアからソ連にかけて長らくロシア語優位の社会となっていた事から輪をかけてロシア語の影響の強い言葉(あるいはロシア語そのもの)が用いられてきた。一方、ポーランドやオーストリアの影響下にいた時期の長いリヴィウなどのウクライナ西部ではロシア語の影響が小さい言葉が現在でも用いられている。
上述の通りロシア語とは方言連続体の関係にあるものの標準語同士の距離は離れており、どちらかと言えばベラルーシ語の方が発音や語法などの面でウクライナ語により近いと言える。
最もウクライナ語と近縁とされるのはスロバキアやポーランドなどで少数言語として認定されている「ルシン語」であるが、あまりに近しすぎるがために境界線が曖昧で(例えばウクライナ・ザカルパッチャ州の言葉はウクライナ語の方言ともルシン語の方言ともどちらとも取れる)、ルシン語を独立した言語ではなくウクライナ語の方言としてみなす立場もある(日本語と琉球語の関係に近いと言えるかもしれない)。
文字
ロシア語などと同じくキリル文字が用いられているが、使用されている文字は必ずしも一致しない。例えばロシア語では既に廃止されているІ/і, Ї/ї, Є/єがウクライナ語では現役で用いられており、逆にロシア語で用いられているЪ/ъやЫ/ыはウクライナ語では用いられていない。また共通の文字であってもЕ/е, Г/г, И/иのように両言語で発音の異なる文字もある。
この他、ウクライナ語用に新たに用意されたキリル文字としてҐ/ґが存在する。