概要
ベラルーシやその周辺地域で話されるスラヴ語派東スラヴ語群の言語。同じ東スラヴ語群に属するロシア語やウクライナ語とは言語圏が接しており、「方言連続体」と呼ばれるグラデーションのように類似した方言が地域的に連続している。特にウクライナ語とは共通点も多い。一方で歴史的にポーランドの影響下に置かれていた時期が長いため、語彙の面ではポーランド語からの影響も強い。
ベラルーシ自体がポーランドやロシア・ソ連の支配下に置かれていた時期が長かったため、支配者層のポーランド語志向・ロシア語志向が強く、相対的にベラルーシ語は「農民の言葉」として卑下される傾向にあった。これは現在も例外ではなく、ベラルーシ語はベラルーシ共和国の公用語に指定こそされているもののルカシェンコ政権下のロシア語化政策により迫害されている有様である。
文字
現行正書法はソ連・スターリン政権下にロシア語のキリル文字正書法に似せて制定されたものである。その為文字の大半はロシア語と共通しており、相違点は以下の3点くらいである。
- И/иの代わりにІ/іが用いられている。
- Ъ/ъの代わりにアポストロフィが用いられている。
- ロシア語にない/w/の発音を表すため新たにЎ/ўが導入されている。
一方で正書法におけるロシア語との大きな違いは「発音通りに表記する」という点である。例えばロシア語のО/оはアクセントの有無により/o/と読んだり/a/と読んだりするが、ベラルーシ語の場合は語形変化によりО/оからアクセントが外れるとА/аに置き換える方式を取っている。
そのため、発音はロシア語よりもまだ簡単なものの、語形変化は寧ろロシア語よりも複雑になっていると言える。
ベラルーシ国外ではレーニン政権下で制定された独自色の強い旧正書法や、ポーランド語の表記法に似たローマ字表記法が用いられる場合もある。これを反映してか、Wikipediaベラルーシ語版は現行正書法と旧正書法の2バージョンが提供されている。