概要
スイス西部およびその周辺地域で用いられるラテン語の派生言語であり、フランス語のアルプス方言。
「フランコ・プロヴァンサル語」(もしくは「フランコ・プロヴァンス語」)とも呼ばれる。
スイスのフランス語圏では19世紀まで「アルピタン語」が使われていたが、当該地域で標準フランス語が使われるようになった結果、現在使われているのはフリブール州とヴァレー州の一部地域だけで、話者のほとんどが高齢者である。
そもそも
フランス語は極めて多様な方言を多数含む言語であるが、これらはその相互理解性と文法的な類似性から大きく二種類に大別され、標準語やワロン語を含む北部のグループはオイル語、プロヴァンス語やモンペリエ方言などの南部のグループはオック語と称される。
オイル語とオック語が分化したのは、両者ともにラテン語の方言であった時期にまで遡る必要があり、言語学的には両者はルーツを共有する別言語であると見做されるが、方言を非愛国的とみなし迫害するフランスの言語政策のため、便宜上同じフランス語の方言(標準語ではない誤った汚い言葉)とみなされている(方言ではなく別言語とした場合、EUの少数言語保護政策上教育現場での使用などを禁止できず、都合が悪いため)。
オイル語は語末の子音が消失し、リエゾンしない限り発音されないことが多く、またゲルマン語からの借用語に富むが、オック語はイタリア語やスペイン語同様にラテン語の特徴を色濃く残しているという差異が存在する。
このオイル語とオック語の勢力圏の中間にはアルプス山中のローヌ=アルプ地域圏が存在し、そこでは「オイル語ほどではないがゲルマン語の借用語が見られ、オック語ほどではないがラテン語に近く、語末の子音も程よく残ったり消えたりする」という、両者の中間的な方言(=言語)が話されていた。19世紀の後半になってから、オイル語でもオック語でもない独立した言語がそこに存在することが関係者によって指摘された結果、「フランコ・プロヴァンサル語」と命名されて両者と区別された。