「言うことをきかんなら仕方がないのう………」
「殺すか」
巻頭ポエム
御先
真黒
真逆様
(67巻)
概要
身長 | 181cm |
---|---|
誕生日 | 1月1日 |
CV | 楠見尚己(初出はゲーム『Brave Souls』) |
霊王の住む霊王宮を守護する零番隊のリーダー格であり、全ての死神の頭目として君臨する存在。
尸魂界の殲滅を目論む滅却師の始祖であるユーハバッハが警戒している五人の“特記戦力”の一角にして、未知数の“叡知”を有する死神。
人物
ダルマのような外見をした巨漢で、坊主頭に顎ヒゲと大きく丸い赤目の瞳など愛嬌のある顔立ち。特徴として巨大な赤色の数珠を首にかけている。
「まなこ和尚」の二つ名を持ち、周囲からは和尚と呼ばれている。
普段の言動は穏やかで質素。
零番隊に悪態をついた砕蜂や、初対面の一護にハゲのオッサン呼ばわりされても、一切不機嫌なく応じるなど寛大な心の持ち主。
戦闘はなるべく避けるが、いざ本気になると一種の戦闘狂のような雰囲気になり、対峙したユーハバッハは彼のことを「凄惨」と称した。
功績
未知数の“叡知”を有するとおり、尸魂界のあらゆる物や事象に名前を付けた人物であり、二つ名の「まなこ」とは漢字で「真名呼」と書き、「真の名を呼ぶ」という意味を持つ。
そのため、全ての斬魄刀の真の名前を知っており、阿散井恋次に彼の斬魄刀・蛇尾丸の卍解の真の名前を教えているなど、膨大を通り越した知識量を持つ。
三界の全ての物事を察知できると思われ、小説版では実際に、京楽春水が現世で黒崎一護のクラスメイトに通魂符を渡していた事も知っており、京楽が驚愕していた。
また、後年に作者が読者の質問に公式に返答した際には、斬月のおっさんが一護に名を伝えようとしたが黒塗りになって叶わなかったのも兵主部の仕業であり、この時点で一護の精神世界に及んでいたユーハバッハの力に干渉していたと判明している。
つまり、事象を察知するだけでなく干渉もできる(しかも、ありとあらゆる事象の名付け親であるためにそれら全てに影響を与えられる)という事である。
- 一護は死神と滅却師のどちらにもなり得ると判明していたため、「お前を死神にさせたくはなかった」という斬月のおっさんの発言からも、ユーハバッハの策略を封じて一護が死神になる事を決定づけたのは和尚という事になる。
能力
「名も無きものに力無し」
「名も無き剣で 名も無き十字で わしを殺せると思うかね」
ユーハバッハから“特記戦力”の一人に数えられており、死神の頭目である事からも、『BLEACH』における最強の存在の一角であることは容易に想像できる。
ユーハバッハと剣術で渡り合う程の力量、凄まじい霊圧や、「千里通天掌」などの必殺技級の威力を持つ技の数々、凄まじい戦闘技術とスピード、「裏破道」など多彩な戦術を持つ。
ユーハバッハの外殻静血装を、純粋な力または霊圧だけで無効化させていた。
「何度叱っても軽々しくわしの名を呼ぶのう………」
「喉が潰れても知らんぞ」
自身の名前にすら呪いを含ませており、相手が兵主部の名前を呼んだだけでその喉を潰すなど、セキュリティ面も万全。
相手の喉を潰すということは、詠唱破棄ができない相手は問答無用で始解・卍解・鬼道・帰刃を封じられるという事である。
後述の通り、「名前」を与えたり奪ったりする能力を持つ。この作品では、「(真の)名前は力に直結する」ので、これを操作できるという事がいかに恐ろしい事かわかるだろう。
また、体がバラバラになっていても再生可能であり、もちろん生きている。
ユーハバッハが殺す事ができなかった存在は、一兵衛の他には藍染と主人公の一護ぐらいだろうか。
一護はともかく、藍染ですらユーハバッハとのタイマンはおそらく難しいと思われるので、総合的に見ても実力は最強最古の死神に相応しい。
そして小説では他の零番隊全員を復活させた。
零番離殿の霊脈と零番隊の霊力が融合しており、離殿が全滅しなければ一兵衛が復活させられる。
また、とある台詞は一護を霊王にさせる目的故の発言らしい。
他には、「大虚級の奴らを倒すと、今の世界バランスでは崩壊してしまう」という懸念があったためにハリベルたちを放置したのだという。
「わしの力は 【黒】」
斬魄刀
- 解放前
始解する前の大筆の状態にも判明しているもので2つの能力がある。
1つは「名を切る」というもの。この筆は肉は切れないが名を切る事で切った対象の力を半分にすることが出来る。
例・「腕」→「う|で」→「う」
能力も半分筋力も半分今までの半分の仕事しかできない。ちなみに当たったのが片方の腕だけであっても両腕が対象となる。
2つ目は字を書くことでその字と同じ効果を付与するというもの。
例・「隠」と書く事で霊王宮を隠し、「封」と書くことで道を塞いだ。
- 始解【一文字】(いちもんじ)
解号は「黒めよ」。
詳細はリンク先を参照。
- “真打”(卍解)『しら筆一文字』(しらふでいちもんじ)
詳細はリンク先を参照。
技
- 千里通天掌
「あと千里戻って 反省してこい」
巨大な掌を出現させ、相手を問答無用で千里先まで突き飛ばす。両手や足でも同じような芸当が可能。
鬼道なのかは不明。
ユーハバッハはこの技を食らって吹き飛ばされたが、飛ばされている方向から自分目掛けて大聖弓(ザンクト・ボーゲン)を放つという自傷覚悟の強引な手段で元の場所へ戻ってきた。
- 百歩欄干
六十二番台の縛道で、欄干状の霊圧を投げつけて相手を捕らえる技。
作中では他に檜佐木修兵も使用している。
- 裏破道 三の道【鉄風殺】
裏破道と呼ばれる鬼道の一種。手刀から龍の頭部を模した鬼道を形取り、その龍の息吹によってあらゆるものを粉砕する。ユーハバッハの外殻静血装(ブルート・ヴェーネ・アンハーベン)の障壁を破壊する程の威力。
最上級の破道である五龍転滅とコンセプトが似ている。
- 不転太殺陵
詠唱:【宵闇ィよ 常闇ィよ ちょいと来い~
ちょいと顔見せ呑んで行け~呑めば命も飛んで行く~
死出の道にも花がァ咲くゥ~
肴はどこじゃ 真黒に染めて八ツに裂いて真黒な炎で真黒に炙って
ぺろりと喰らおう 喰ろうて残った真白な骨で墓標を立てて
弔うてやろう おんしが二度と生まれて来ぬよう
わしらの贄にならぬよう】
一文字の能力。百年後の尸魂界から夜を百夜奪って拵えた巨大な黒い御陵に相手を呑み込む大技で、対象の纏っている黒まで吸い上げ、血肉も骨も魂も何もかも黒に潰して無に還す。
アニメ版では、楠見氏による童謡に似た謳い上げに加えて和尚の動作が合わさり、さながら宴会芸や祭囃子のような雰囲気の詠唱となっている。
不転太殺陵自体も原作に比べると黒さが控えめになっている分全体像が見やすくなっており、墓標の群れ、さらに砂利道のように転がる夥しい数の頭蓋骨が確認できる。
和尚曰く、「転生すらも許さぬ真黒な地獄」であり、ユーハバッハと決着をつけるべく最終奥義として発動した。
本編の活躍
「今回は霊王の御意思で護廷十三隊を建て直しに来た」
「まずは黒崎一護 おんしを霊王宮(うえ)へ連れて行く」
第一次侵攻後
見えざる帝国の尸魂界侵攻で総隊長をはじめとした大勢の隊士が戦死という壊滅的な状況の中、霊王の意思の下星十字騎士団に対抗すべく黒崎一護らを鍛え直しに霊王宮へと連れて行く。
阿散井恋次に蛇尾丸の本当の卍解の名を教えたり、当初は高濃度の霊子で動けない恋次とルキアが剣術が出来るまでに動けるようになった時には直々に稽古をつけたりした。
第二次侵攻
修行を終えた一護に既に3時間前から滅却師たちが瀞霊廷を蹂躙してると告げ、霊王宮と瀞霊廷の間にある七十ニ層の防壁を突破できる王鍵で編んだ外套を与えて彼を瀞霊廷へと向かわせる。
しかし、それによって防壁に穴が開いてしまい、防壁が再び塞がる100分の間にユーハバッハが神赦親衛隊を始めとした数名の騎士団を引き連れて霊王宮の侵入を許してしまう。
「やれやれ…人の優しさの解らん奴じゃ。おんしの面目の為にわざわざ力を半分に殺いでやったというのに……」
「全力のおんしが叩き潰されたら、滅却師共への面目が立つまい!」
和尚は斬魄刀の力で霊王宮を隠し、偽の霊王宮で王悦らに戦いを任せて親衛隊とハッシュヴァルト、石田を一度は撃破するもユーハバッハは聖別で彼らを強化した上で復活させてしまう。
ひとり自分の元へ踏み込んできたユーハバッハを迎え撃ち、斬魄刀解放後は終始圧倒し、始解で名を奪われて無の存在にされたユーハバッハに真打『しら筆一文字』で「黒蟻」の二文字を刻み、完膚無きまで叩きのめした。
…が、永きに渡る力の回復がこの時に終えたユーハバッハは真の力【全知全能 ―The Almighty―】を解禁。
斬魄刀の能力を無効にされ、背後からの不意の一撃で深手を負う。
最終奥義の不転太殺陵でユーハバッハを黒の世界に呑み込もうとしたが、それも無効化されてしまい、身体を木っ端微塵に砕かれて敗北。他の零番隊も親衛隊に敗北してしまう。
しかし、王鍵で出来ている肉体故か死んでおらず、一護たちが霊王宮に着いた時にはテレパシーで自身の名を呼ぶように語りかけ、一護から名を呼んでもらい力を少し分けてもらうことで元に戻り復活する。
復活はしたが力は回復するまでに時間かかるため、一護たちにユーハバッハを止めるように頼む。
しかし、彼らが去っていった際、
「すまんのう人間共 おんしらではユーハバッハには勝てん」
「…じゃが案ずるな。平和とは全てそういうものよ」
「のう ユーハバッハよ」
と意味深な言葉を残すもその後の出番は無く、ユーハバッハによって霊王宮が自身の居城に置き換えられた後は他の零番隊ともに行方不明のまま終了した。
アニメでは
原作では不明瞭のままになった霊王、ユーハバッハについて作者監修の補完されたり、描写が変更されている。
死神を超えてもらうと言い、不入参道(いらずさんどう)と呼ばれる特殊空間に一護を導く。
和尚曰く「霊王の赦しがなければ入れない神聖なる場所」と言い空間で一護は最奥まで進んでいくが、空間の重圧なのか一歩進むだけでもひどく疲弊していった。
そして進むたびに霊王の誕生や初代護廷十三隊といった過去の出来事が幻視として垣間見え、一護はそのたびに苦悶の顔を浮かべ、最終的に様々な力を取り込みさらなる力を得た。
「器(み)も魂(こころ)も強くなった」
「一護(あいつ)は本当の死神になったんじゃ」
「〝死神を踏み越えた本当の死神〟にのう………」
防壁の件だが、原作では単純な失策という描写が強かった所がアニメ21話では離殿で座っていた和尚の顔は目を大きく開き、その瞳には光がないと何を考えているのか分からない不気味さをだしていた。
この行動に同話のマユリは「零番隊め…何を考えている」、22話の京楽は「あれを撃ち落とさない?本丸を迎え入れるつもりかい?これも筋書き通りですかね」と2人共、和尚ら零番隊の行動に疑問と憤慨をみせており、ユーハバッハを招き入れてるような描写になっている。
24話では1000年以上前に光の帝国を築いていたユーハバッハの元にわざわざ来訪していた事が判明。
尸魂界侵攻を目論んでいた当時のユーハバッハに「尸魂界と光の帝国は不可侵条約を結び、死神側は干渉しないからおんしらは帝国の繁栄をしていたらいい。」という案を出して、彼らに交渉する。
しかし、与えた魂と力を吸収する際に民達の苦しみや死の恐怖の声が聞こえるというユーハバッハは「曾て世界は永遠の安らぎが存在していたが、三界にした事で安らぎを失い死という恐怖がある」と今の世界のシステムを忌み嫌い、和尚の言葉に欺瞞があると拒絶する。
「世界を生と死に分け死の恐怖を齎した者は誰だ」というユーハバッハの問いに和尚は「霊王様じゃ」と答えると「この三界の何処に安寧が在る!」と【全知全能】を発動させて怒るユーハバッハに和尚は咄嗟に左手に宿していた霊王の左腕を発動させ、彼に「三界の誕生、ある者達によって四肢と力を奪われた霊王と、霊王を抱える和尚の姿」を見せる。
…が三界と霊王の真相を目の当たりにしたことで更に怒ったユーハバッハは和尚の左腕を掴み、霊王の左腕を簒奪しようとしたが、彼でも見通せない霊王の力によって霊王の左腕を押し付け、代わりに【全知全能】を封印して見通せないようにした。
交渉は決裂するも命までは奪わずに「慎ましく生きよ」と慈悲の言葉を言い残して立ち去った。
山本元柳斎重國との比較
連載当時、どちらも特記戦力レベルの存在であるため、「一兵衛と全盛期の山爺はどっちの方が強いのか」という議論は大いに交わされた。
後年に作者監修の下で描かれた千年前の初代護廷十三隊とユーハバッハの戦いでは、ユーハバッハは全知全能を発動していない状態で不意討ちを食らっていたこと(これについては、千年前の戦争の前にユーハバッハのもとを訪れた和尚が彼に霊王の左腕を無理矢理与える代わりに、全知全能を封じていたためであることが判明している。)、山本が偽ユーハバッハを本物だと正体を明かす直前までかけらも疑わなかったこと、和尚もユーハバッハの全知全能に驚いていた(?)ことから、千年前に山本たちが全知全能を封印されていたユーハバッハに勝利した戦歴は判断材料として弱いという指摘もある。実際、千年前のユーハバッハは霊王宮に立ち入ることすらできなかった。
- よく引き合いに出される山本の発言である「儂より強い死神は千年生まれていない」は、「千年前には生まれている」とも取れる。実は兵主部を含め1000歳以上が確定している面々はかなりいて、一番隊副隊長である雀部長次郎すら2000歳以上である。
- 零番隊は護廷十三隊よりも上位の組織であり、零番隊の総力が護廷十三隊全軍よりも上なのは京楽春水も認めている。そもそも、なぜ零番隊が護廷十三隊より総力が上なのかと言うと、零番隊は霊王様を守護する立場であるため、仮に山本含む十三隊全員も含めて、たとえ誰が霊王様に反逆しても鎮圧可能なレベルになっていないと意味がないからである、という考察もある。
- 理由は不明だが、山本や一護とは違い、ユーハバッハから卍解(真打)を封じるなどの対策をされていない。結果的に和尚はユーハバッハに敗北したものの、ユーハバッハはこのタイミングで開眼出来ていなければ普通に和尚に敗北している状況であり、かなり危ない綱渡りをしていた。
- 山本はユーハバッハと対峙する度に卍解してるのに対し、和尚は始解で普通に圧倒している。(なんなら斬魄刀を開放する前からユーハバッハと渡り合っていた。)
- 山本はユーハバッハに殺害されたが、和尚は蘇生できた。他のメンバーも零番離殿さえ全滅していなければ、いつでも和尚の力で蘇生可能。
- 卍解を奪われて戦意喪失した山本と比べると、和尚は聖文字に目覚めたユーハバッハを見て初めて驚愕していた。
- 和尚の「墨」は概念的な事象でもあるので、山本の能力によって蒸発するのかは不明である。
- 山本が炎の能力を使うと、たしかにその場が明るくなる一方で「影」も「濃くなる」だけでなく燃焼によって生じた「焦げ」や「炭」や「煤」もあり、さらに残火の太刀も自身の側に黒い部分を増やすため、流刃若火の特性は和尚に対しては決して有効的な能力とは言えない。
したがって、恐らく和尚は山本より強い可能性が高い。
- よくネットで言われる例えとして、「山本はゲームでいうトッププレイヤーの一人だが、兵主部は運営側に近い」というものがある。
余談
- 「全ての事象の名付け親」であり、「対象を書き換える」や「問答無用で世界から力を奪う」ことができる兵主部は、久保帯人のアバターの様な存在とも言える。
- 普段はひょうきんな一兵衛が、「仕置き」が必要と判断した際に恐ろしい顔になり豹変するのは、仏教において悪を「恐怖」や「力」によって屈服させることと似ているらしい(如来と明王が互いに化身という関係からと思われる)。
- この事から、一兵衛のモデルは達磨や阿羅漢の他にも、表裏一体の存在である閻魔と地蔵菩薩ではないか、という声もあるとかないとか。一兵衛の「喉や言葉をつぶす」という能力も、閻魔の「舌を抜く」にある意味近いのかもしれない。
- 一兵衛の能力は、『Bleach』(漂白)という作品のタイトルに対するアンチテーゼであり、黒崎一護の「月牙天衝」と強化形態がそれぞれ「白」→「黒」→「白」→「白と黒の共存」となったことにも無関係ではない。
- 彼の放った鬼道「裏破道」の龍は、「鯉龍」という「筆」に関連した事象と似ている。
- 初登場時からその後は、ずいぶんと見た目の雰囲気が違っている。
- ひょうすべという名前の妖怪がいる。名前の由来だろうか。山本元柳斎重國も、山本五郎左衛門や山爺が名前の由来だとする説がある。
- 一兵衛こそ「ペンは剣より強し」を体現した存在であるという意見もある。
- 一護に藍染が敗れた時と同様、「人間風情」という表現がフラグだったという声も。
- 「不転太殺陵」が発動できた時点で100年後にも世界は存続できていることを察知していた可能性がある。
- クインシーの装備が「白」を基調にしていることも兵主部への対策だった可能性がある。
- ユーハバッハと一兵衛は、共に髭が特徴で、共に「自身の所属(滅却師・死神)に対して完全に支配・無力化する術を持つ」点で共通する。一兵衛が対象を黒く塗り潰すのに対して、ユーハバッハは白い光で部下の能力と命を奪う。
関連タグ
正体
小説『Can't Fear Your Own World』では出自が明らかになり、死神に占領される以前の原初の世界に誕生した存在で、文字通りの神々の一柱で霊王様の親友だとされる。そのため、尸魂界開闢以前から生きていると考えられる。尸魂界の歴史が百万年と明言されている事から、年齢は百万歳以上は間違いないところ。
世界は昔、生も死もない世界と地獄が存在しており、生も死もない停滞していく世界で虚が人間を襲い始めたことで、不幸が不幸を呼ぶ、いずれは地獄の他に新たな地獄が生まれる運命を避けられない混沌とした世界だった。霊王は虚から世界を守るために奮闘していた。
一護の先祖である志波家を含む五大貴族の先祖が、世界の運命や不条理を変えるため、停滞し滅びへとよどんでいく世界を前進させるため、地獄への恐れ、滅却師への対策として、虚を可能な限り救いたいといった様々な理由から、この世界を三界に分けて生と死を作り循環させるために霊王の力を借りることになったのだが、志波家が霊王の説得に向かった際に他の貴族の1名が霊王を不意打ちし封印、霊王からの反逆や封印の破壊を防ぐため、手足をもぎ取り内臓などを取り出し生も死もない人柱にしてしまった。
しかし霊王自身は未来が多少見えており、この案を心では受け入れていて、死神への恨みはあるが世界のためにあえて無抵抗で人柱にされた。
兵主部は五大貴族の先祖たちに命じられて霊王を護るために犠牲を厭わない忠実な僕になったが、親友である霊王の心情や状態を一番良く理解していたのも兵主部であり、霊王の意思が人柱となった以降も存在して世界を緩やかに流動させていく潮流として機能していたこと、一護の出現も霊王の意思だったことなどをおそらく世界でただ一人理解していた。
兵主部の霊王への忠誠と守護する心は揺るぎない。ユーハバッハに一護が倒された場合は一護を霊王にしようとしていた。というか、一護が倒される前提で一護を向かわせた(ユーハバッハにわざと負けた様にも思える)。これも冷酷にも思えるが、決して悪ではない。
- 世界を守る責任者としての立場(1名の犠牲で世界が保たれることの是非)
- 親友である霊王は自ら犠牲になって100万年も世界を保ってきた
- つまり、新たな霊王によってようやく親友を解放できるとも言える
- 人間・虚・滅却師・死神の属性を全て持つ一護は霊王と似ており、その性格故にそれら全てに「理解」があるという意味でも、間違いなくユーハバッハよりも霊王として最適だったこと
- ユーハバッハが意思ある状態で霊王になった場合、憎しみや悪意を持つユーハバッハの意思が大局を動かす世界の潮流として表れてしまう可能性がある
- 一護自身も、自分が犠牲になることを選んでいた可能性が指摘されていること
- 一護が霊王になった場合、兵主部と京楽で、可能な限り一護が霊王として幸せになれる様に画策していたこと
- 霊王を人柱にすることは、五大貴族たちの多数決ゆえの決定だけでなく、既に親友である霊王自身が自らの意思もあって犠牲になり、世界も分離した状況もあり、親友や世界のためにも兵主部が抵抗できる状況ではなかったこと
- 仮に十三隊全員が反逆した場合などの災禍に対処できるのは兵主部レベルの存在しかいないため、今のポジションを離れるわけにもいかないこと
また、朽木ルキア達を優先的に回復・戦闘力を上げさせたのは、一護を霊王にした場合の新たな零番隊または似た組織を確保するためだという考察もある。一護が現れたのは霊王の意思であるとされ、運命であるという部分も無関係ではない。
また、死神という存在自体が善悪を超えている。以下の例の様に、とてもじゃないが正義の味方と思えない事態がかなりある。兵主部があえて十三隊に関与しないことも理由があると思われる。霊王も死神を恨んでいたが世界のために仕方なく人柱になった可能性が指摘されている。そのため、ミミハギ様やペルニダの出現も霊王の意思であり、すなわち十三隊の壊滅も霊王の意思だった可能性も否定できない。
護廷十三隊の負の側面
- 山本元柳斎重國を含む過去の13隊の暴虐性
- 滅却師を絶滅寸前まで処刑したこと
- 滅却師が大量に虚を倒したことにより崩れたバランスを保つために流魂街の住民を問答無用で大量に消滅させるなどの残虐な手段も厭わないこと
- 山本が京楽と浮竹を殺害しようとしたこと
- 危険人物である涅マユリ(躊躇なく部下を爆弾にしたり、滅却師たちを死ぬまで拷問や人体実験にかける)を隊長として認めたり、貴重な戦力同士で殺し合うという剣八の継承制度を黙認している
- 隊長たちは死後地獄行きになること
- 痣城剣八の一族に対して貴族が行った残虐非道な虐殺
兵主部曰く「零番隊は死にたくても簡単には死なせてもらえない」らしい。
兵主部も世界の残酷な姿に直面し悩み、大義のために犠牲を払ってきた存在とも言える。