概要
月島秀九郎の完現術。本の栞を媒体に、白い刀身の剣に変化させる。
当初は銀城空吾によって「ただの何でも斬れる刀であり能力はない」とされていた。
その効果は『斬った人間・物質の過去を改変する』という恐るべきもの。これは、本の栞を刀に変え、斬った相手の過去の出来事に自分の存在を挟み込み「分岐」させることにより、斬った相手の過去の出来事を自分の都合の良いように作り変える能力。あくまで相手の過去を斬って、そこに栞を挟んでいるだけのため、殺傷性はない。
もちろん普通の刀として「能力を使わないで」斬る事もでき、その場合は殺傷性がある。具体的には、分厚いドアをサクっとバラバラにする程。小説では、あのグリムジョーを負傷させる程の切れ味を誇った。
また、過去改変能力を既に使われている人物を能力を使ってもう一度斬ると、能力を取り消して元に戻す事ができる。
その力は催眠のように相手の認識を改変して「そう思い込ませる」「記憶を書き換える」などという生易しいレベルではなく、対象の経てきた時間・事実そのものを改変してしまう。対象のみに作用する歴史(過去)改変能力、と言えばわかりやすいだろうか。
もっと言うならば「"月島秀九郎"というオリ主が主人公の"原作介入モノ二次創作"の原作キャラをそのまま原作に持ってくる能力」と言える。(逆に自分以外の周囲の人間全てに「挟まれ」てしまった一護はさながら「オリ主介入モノの世界に連れてこられてしまった原作キャラ」である)
この能力を使えば相手に自分のことを「友人」、「恋人」、「恩人」と思い通りに認識させることはもちろん、改変した内容を物理的に反映させることすら可能となる。
たとえば、床などを斬り「以前にそこに罠を仕掛けた」という過去を挟み込めば、そこに実際に罠が「ある」ように事実そのものが改変される。
その他にも自身に「対戦相手を昔から知っており、戦闘パターンを理解している」という過去を挟み込んで技を見切るなど、単なる認識改変を超えた力と応用性を持っている。
また、恐ろしいことにユーハバッハの未来確定能力によって「未来で折られてしまったので現在を拒絶しても直せない」天鎖斬月を「折られなかった過去があればそこまでなら戻せる」という理屈で折られなかったIFを作り出し無理矢理能力から逃れさせている(逆の理屈で「未来で折られていないのでユーハバッハが幾ら折っても拒絶されて直された未来を変えられない」ことを確定させているということ)のであのユーハバッハの能力や本人にすら通じ得る能力である。
弱点
このように無敵のような能力だが完全無欠でもなく、過去を挟み込まれた本人に取ってはそれは紛れも無い事実の出来事だが、周囲の状況がそれとあまりに乖離している場合、自身の過去に起こった出来事との矛盾を理解しきれずに混乱を起こす。
また、口頭で無理矢理ねじ込もうとしてもやはり齟齬が発生して負担が増す。
銀城曰く「やりすぎると壊れる」そうなので、挟み込む過去の規模をほどほどにしないと無理のない運用はできないようだ。
反動を受けるのが術者ではなく対象者なのが理不尽であるが。
また、思い出ではなく物体や生き物の状態の過去改変を行う場合、現在と辻褄の合わない改変はできない。
一護の折られた斬月がまさにそれであり、「ユーハバッハが未来に至るまで折った」は「月島が乱入して気が逸れて折り損ねた」過去を挟めばどうにかなっても、「今現在折れている斬月」はこの能力では元には戻せない。
また、同じ理由で生死の操作も不可能であるため「過去月島が斬り殺した」過去を挟んでも今のその人物が生きている以上「なんやかやで助かった」事になってしまう(これが出来るなら白哉をそれで殺せたはずである)し、今死んでいる者を助けた(重傷で済んだ)過去を挟んでも「なんやかやで死んでしまった」事になる。
なお過去を挟み込む際対象と同時に月島本人にも改変が発生しており、白哉との戦闘において「千本桜の特訓に付き合った」過去を挟み込んだことで千本桜の対処法を体に染み込ませるという戦法をとっているが、これは裏を返せば作中彼が行った過去認識改変のうち解除していない全ての体験と記憶を月島自身全て並行して持っている事になる。
そんなことをすれば上記の通り「世界に同時に複数人自分が存在しなければ絶対にあり得ない記憶や体験を得ていることに対する混乱と負担」が発生するはずなのだが、月島の場合「銀城との思い出以外の正誤や齟齬はどうでも良い」という理由で全矛盾をシカトして踏み倒すという無法を働いている。
そして「何よりも優先したいほどに大切な人」という過去を挟めば当然月島にとっても同じになるはずなのだが、上記と同じく「銀城が最優先なのは世界と天地がひっくり返っても変わらない」ので銀城以外の「大切な人」を平然と切り捨てられるし、一切の精神ダメージを負わない。
また、改変するのはあくまで「過去の出来事」であり、「現在の感情」を直接操っている訳ではない。そのため、敵が必ずしも「月島さんを斬ることなんて出来ないよ」になるとは限らない。
たとえば、「過去の情」より「今戦う理由」が勝る相手を篭絡する事はできない。
作中では「確かに兄は私の恩人だが、今の兄は(ルキアを救ってくれた)黒崎一護の敵だから、それを倒すのに何の躊躇いもない」という理由で朽木白哉に普通に倒されている(自分で決めたルールのために世界で2番目(現1番目)に大切な女性である義理の妹を処刑台に送った程の自分ルール遵守マンが相手だったのは不運と言わざるを得ない)。
さらに月島が挟む過去は基本的に「望む反応を引き出す為に一般的精神活動から逆算した過去」である(仲間になって欲しいなら「誰よりも信頼できる人物」に"なり得る過去"、籠絡したいなら「恋人」「恩人」"たり得る過去"など)。
なので、朽木白哉(ルキアを助けてくれた黒崎一護の全面的な味方であり、そのためなら恩人でも切り捨てる)、更木剣八(戦えればなんでも良い)の様に「常軌を逸した精神構造を持った狂人」の精神活動は思ったように操作できない危険性も孕む。
例えば「大切な相手ほど殺したくなる」という破綻者を籠絡するために「この世で最も大切な人」という関係性を選んでしまったが最後「何に優先してでもぶち殺したい相手」と認識されてしまう致命的なバグが発生する。
何よりその異常者の筆頭人物がまさに月島本人であり、上記の通りそのメリットを最大限活かしているのが皮肉である(銀城以外の人間との関係はどうでも良いので「この世で1番大切な相手」だろうと「恋人」だろうと躊躇なくぶち殺せるしその事で一切傷つかない、記憶に矛盾があろうと銀城との思い出以外どうでも良いので気にしない)。
小説『Can't Fear Your Own World』によると、グリムジョーのような「今現在の状況が最優先」な野生動物タイプにも能力は無効、或いは影響が軽微な模様。
また、挟んだ際に相手の情報を知ることが出来る模様。作中ではグリムジョーに挟んだことで王虚の閃光を学習した。本編で一護の力を事前に調べていたような発言があるが、恐らくチャドや井上織姫に挟んだ際に一護の昔の力を情報収集していたのであろう。
また、情報伝達の用途で使うことも可能らしく、雪緒に挟むことで情報を受けとり、銀城に挟むことで銀城に情報を渡すという器用なこともしている。(情報を渡された過去、渡した過去を挟むことで一瞬で情報共有できる、という寸法)
戦闘より、どちらかというと隠密目的に向いている完現術なのかもしれない。