概要
CV:津嘉山正種
「帝愛グループ」の総帥である老人。部下からは「会長」と呼ばれている。カイジ最大の宿敵。
莫大な資産と鉄壁の運用管理術を誇りながらも、まだまだ足りないと世界中の金をかき集め帝愛による「王国」を築こうとする金の亡者。
この「王国」というのは比喩ではなくそのままの意味。地下チンチロ編でカイジが落とされた地下の強制労働施設とは他ならぬこの「王国」の建設現場である。現在は未完成だが、出来上がった暁には核シェルターとしての機能を備えた生活スペースとなり、例え地上で核戦争が起ころうが兵藤とその関係者を生き延びさせることができる、と兵藤は語っている。
嗜虐癖を持つサディストでもあり、人が苦しむ姿を見る事と、常軌を逸したギャンブルを何よりの愉悦としており、暴利によって弱者から搾取し、博奕で負けた者や借金を返せない者、失態を演じた部下に「器官破壊」「指切断」「焼き土下座」「地下強制労働」といった残酷な懲罰を強制し、命を奪うことすら全くためらわない。
前述の王国も、要は兵藤を初めとする選ばれた人間だけが生き延びればよく、他の者は死のうが苦しもうが関係なし、むしろ彼らが死んだり苦しんだりする姿を絶対安全なところから観察するのが心地いいという兵藤のスタンスを反映したものと言えよう。
残虐非道かつ醜悪な狂人で、伊藤カイジにとっては最も忌むべき相手だが、自らを「王」と称するだけあり単純に「強運の持ち主」というだけには留まらず、あらゆる面において常人を遥かに凌駕する力を持つ。また、世の中の真理を突いた発言も多く、勝負事となると何処かフェアな一面も持ち合わせる。
「以前は困っている人間を見捨てられず助けようと金を貸していたが、幾度も裏切られてきた」とも語っているため、人生の辛酸を舐め続けた結果こういう人格に行き着いたのかもしれない。
また、過去回想も併せて推察するに、過去に裏切りや権力闘争などを経て人間性が歪んだ可能性も否定できない。
ただしこの発言は単なる拷問でしかない焼き土下座を正当化する説明としての語りなので、全面的に聞くには怪しい点もあり、帝愛の実態を知っているカイジからは「どうせ、暴利だろ…!」と言われている。
しかし本人が反論するに曰く「金利について包み隠さず全て話している。借りる側はその金利について十分承知の上、借りていっている、そこになにも問題はないはず」「奴らは借りる時は『必ず返す。命に替えても、返す』くらいのことを宣うくせに、いざ返す段になると、頭だけ下げて口だけの謝罪をして平然と踏み倒してくるのだ」「そしてそれを許さないと心の内で冷血漢呼ばわり、逆恨みしてくる」とのこと。…それでも、「借金における誠意なんて誰がどう考えたって、どんな手を使ってでもいいから期日までに金を返すこと以外にない」「金を返さない時点で誠意なんてものはなく、結局頭を下げているのもパフォーマンス、簡単に頭を下げられるくらいに品性が下劣でプライドがないだけで本当にすまないと思っているわけではない」と語る。
言っている事自体は間違いでは無いが「どんな手を使っても」の例えに「内臓を売ろうと、強盗をしでかそうと、なにをしてもいい」と言っているため異常な事に変わりはない。
遠藤は兵藤について「人を想う気持ちが伝わらない鉄の氷の魔王のメンタル」と分析し、「他人の善意を自己保全から出た行動と捻じ曲げる」「自分以外は全て無価値」「人を感謝しない力スゴイ」と散々に評している。
また、黒崎によると懐っこい犬や猫や小鳥などの動物に対しては異様に可愛がるという意外な一面があるようで、その時の兵藤の様子はとても普段からは考えられないような満面の笑みや崩れた表情を見せていた。
実は現実にも悪名高い独裁者や人間不信として知られる歴史上の有名人にも動物好きだった人間は少なくないので、兵藤もこれらの人物のように人間不信が故に自分に忠実な動物に愛を注ぐタイプだとも言える。
初登場は「希望の船」でのラストにシルエット。名前は『賭博黙示録カイジ』13巻で判明。「絶望の城」編での最終局面、「ティッシュ箱くじ引き」でカイジと直接対決をする。以後のストーリーでも兵藤と帝愛の存在はカイジの運命に立ちはだかり続ける。
このように原作では鬼、悪魔、狂人という言葉がこの上なく似合う人物なのだが、スピンオフ作品『中間管理録トネガワ』では夜に行われた会議中に眠ってしまい、モノローグで「おじいちゃん」扱いされた上に「ククク・・・・・・もう食べられぬっ・・!!」とベタすぎる寝言が出るなど、笑えてしまう描写が多い。
また、心理テストにハマった際には、テストの結果「今まで見てきた中でダントツの変態」と判定された利根川に恐れ慄き、黒服たちと一緒にドン引きする弱々しい姿も見せた。(もっとも利根川は例によってご機嫌を探りつつ適当に答えただけであった他、直後に心理テストの結果を「優勝」と評し上機嫌でケーキまで準備させ利根川を祝っているのだが)
ワン・ポーカー編の和也の回想でこれまで謎に包まれた家族構成について判明したところによるとソフィーなる女性が妻でその間に二人の息子(和貴・和也)をもうけていた事が判明。この頃の兵藤は、息子の危機を見落とした部下に対して「あれでは気づきようがない」と寛容さを見せたり、息子が遊んでいた黒ひげ危機一発を見て「樽に入った人間を剣で突き刺すこんな玩具を子供に与えていいのか…?」と内心思うなど、現在に比べると柔和な描写が見られる。(実際和也は後々それらしい拷問に手を出しているので「大人になってからはともかく子供に嗜虐趣味な遊びは不味くないか?」と考える程度の倫理は持っているらしい)
こういった過去エピやスピンオフ(身内に対して)の姿は本編の振る舞いとギャップがあるが、仮に上記にある「人に裏切られ続けてきた」過去が事実であるながら、人好しの上にどこかうっかりした天然な性格こそ、本来の彼の姿であるのかもしれない。もっとも、現在の彼からはその優しさは窺い知れないが…。(話自体はカイジたちを主軸に置いているから敵だが、彼から見ればカイジ達は「金を期日までに返せなかった上に、折角垂らした蜘蛛の糸を掴んでなおまた懲りずに借金して返せなくなったクズの中のクズ」なので非人扱いもある意味では致し方ないと言える)
家族
ソフィー
和也の回想で初登場。兵藤の妻で、兵藤とは10歳ほどのの差がある。日本語が少々怪しく、家族にも呆れられるほど天然ボケの気質があるが、思ったことは物怖じせずズバズバ言うタイプであり、あの兵藤でさえタジタジになっていた。当時のソフィーを知っている者からは子供達に愛情を注いだ良い母であった事が語られ、また帝愛内で唯一兵藤に意見を言える、いわばブレーキ役でもあった。和也7歳の時に交通事故で他界している。享年43。
和貴
兵藤の長男で和也の兄。和也の回想で初登場。容姿端麗な上に若年にして重要な地位を任されており、帝愛グループの跡取りと見られている。
和也
兵藤の次男。詳しくは兵藤和也を参照
関連タグ
間桐臓硯:中の人が同じ津嘉山正種氏で、あちらも妖怪じみた姿の外道な性格の持ち主。世界平和に近い何かを目指していたらしいが、後天的に悪辣な性格に変貌した点、一方で家族には愛情を持っている点も共通しているが、後者に関しては(円満な家庭を築けているかはともかく)兵藤の方がかなりまとも。(ついでに言うなら彼の言う家族は後々自分が寄生するための乗り換え先の確保に必要というだけのものなので大切にして当然である)