概要
CV:山口勝平
帝愛グループの会長・兵藤和尊の息子。兄に兵藤和貴がいる。外国人の母ソフィーから茶髪を受け継いでいる。顔は父親似。顔からは想像できないが意外と若く、カイジの見立てでは年齢は10代後半。
略歴
カイジと村岡が「17歩」で勝負している最中に乱入。軍資金の足りないカイジに、「あらかじめ支払われた保険金」という名目で手持ちの大金を貸し付ける。その真意は、桁外れのレートになるまでゲームを引き伸ばし、負け=破滅or死となるように仕向け、苦しむカイジと村岡を見物するためだった。決着後カイジのギャンブラーとしての才に感心し勝負を持ちかける。
勝負前に、「腹ごしらえ」として帝愛の息のかかった貸し切りレストランへカイジを招待するも、和也の日常生活が明らかになっていく過程で、殺人ギャンブルを小説の題材程度にしか考えない自身の態度をカイジに叱り飛ばされ逆上する。そしてカイジに「どちらの真実(リアル)が正しいか」を証明するべく、光山・チャン・マリオら3人の債務者を殺人ゲーム「救出」に挑ませる。当初は和也の世界観をなぞるように破滅への道を突き進んだ「救出」ゲームだったが、カイジの思いがけない行動により3人全員生存という結果に終わると、カイジにたいする敵意をむきだしにする。
そして、「カイジの偽善主義・理想主義とオレの真実主義・現実主義の戦争」として、”無慈悲な女神”たるコンピューター「マザー・ソフィー」のジャッジのもと、ワンポーカーによるカイジとの直接対決を開始。帝愛の敷地内・帝愛の装置を使用というどんなイカサマでも可能な状況だったにもかかわらず、一切不正をおこなわずカイジとの真剣勝負に向かう。しかし、後に賭けライフが無くなり絶体絶命のカイジをチャンとマリオらが「自らの命を手持ちライフとしてカイジに差し出す」ことで救出すると、自己愛こそ人間の本分とする和也は混乱し、さらにその動揺をカイジの博才とチャン・マリオらの捨て身の覚悟によってつけ込まれ、勝負は五分五分の状況に追い込まれる。そして王としての誇りもかなぐり捨て、自身とカイジの双方がマザーソフィーの隠しボックスを使用したイカサマを暗黙裡に認め合う「外道の勝負」(ワンポーカー第二幕)へとゲームを発展させる。
最終的にはカイジが勝利し、自身にはこれまで行ってきた所業が走馬灯となってマザー・ソフィの契約履行による制裁が下されようとするが、カイジたちの手により奇跡的に救助された。
そのまま気絶した状態で放置され、その直後カイジ達の逃亡劇が始まったのであった……。
24億脱出編にて、先述の制裁による落下の衝撃で意識不明のまま昏睡状態にある事が明らかになった。
人物
ボンボン育ちで周囲からちやほやされながら育ったことから性格がひねくれており、父親の影響もあって人間が苦しむさまに愉悦を感じるサディストである。「保険金」として貸し付けた金をカイジが返済できなかった場合の制裁方法も「人体欠損事故ルーレット」による事故演出スナッフという常軌を逸したものだった。
幼少期のとある事故が原因で「自分は誰からも愛されない」という考えが和也の心に深く根付いており、また、中学生の頃に誘拐されそうになったとき、さんざん和也から奢ってもらっていた連中が裏切ったこともトラウマのようになっているためか、『利己的な本性こそ人間の本質』、『自己愛こそこの世で一番強力な愛』といった思想を持つ。またこの性格ゆえに、金に疎く情に篤い善人を『草食動物以下』『もはや草』と卑下しており、「己の欲よりも他人への情を重んじる人間」がいることを信じようとしない。だが、決して情が理解出来ない人間ではなく、愛情や友情を欲しいけど、自分では手に入らない物と思い込み、存在しない物と自分に言い聞かせている部分が存在している。
和也は父には愛されていないと思い込んでいたが、兵藤会長は父親としての愛情は持っているようで、昏睡状態に陥った和也に対して何もしてやれない事がもどかしいと漏らしたり、和也の担当医師に頭を下げるという普段の会長からは考えらないような事をしている。(直後に和也に何かあったら殺すと恫喝はしたが)
一方で、父親の庇護のないところで自分の力で何事かを成し遂げたいという強い願いを持ち、そのために小説の執筆を行っている。ワンポーカー編にて彼が愛用する色メガネは度数いりのものだということが明らかになったが、幼少期のころは裸眼であるため、恐らく10代の頃に文学にのめりこみ目を悪くしたのだと思われる。大衆向け作品にありがちな安易な恋愛描写を嫌っており、より「リアルな」小説の取材のために、重債務者や帝愛のしきたりに従わなかったものを相手に「和也プロデュース」と称して生命を賭けたギャンブルを持ちかけている。「和也プロデュース」の結果多くの死人が出ているが、それらは事故死として処理され表ざたにはなっていない。
勝負事にはシビアで、審判側に回った時には公平なジャッジを下す。「17歩」編では、カイジが偽の牌を山に忍ばせて村岡の「山からの逆算による手牌覗き」のイカサマを逆手にとったが、「不正バットを試合で使えば反則だが、家に持ってるってだけじゃ何の反則でもない。カイジは偽の牌を使って和了ったわけではないしそもそも山を覗かなければこの偽牌は何の意味も発揮しなかった」と野球を例にカイジの和了りを認めさせた。
「救出」編では、ゲームの展開が自分の価値観にそぐわなくなると、さまざまな手段で光山・チャン・マリオらに心理的なゆさぶりを仕掛けたが、ゲームの根本的なルールや目標を反故にすることはなかった。
また、どういうわけか、彼が用意するゲームには代償こそいるものの助かるためのルールがいくつか設定されている事が多い(ワンポーカーにおける網や、救出における外野が金を払ってくれたらペナルティをなしにできるなど)
闇社会の魔王たる兵藤和尊の息子として生まれ、他人からの阿諛にまみれ、他人の本心のみえない子供時代を送った彼だからこそ、真剣勝負によって相手の本性を見たいという渇望を持つようになったのだと思われる。「救出」編での前述の「もはや草」発言も、取り決められたルールを守らずに仲間内で意思伝達した光山らへの失望からきたものだろう。
しかし、和也と直接対峙し、その人物を見極めたカイジからは、和也は怪人物でありながらも年相応に甘い部分が露見していると評価されている。
ワン・ポーカー編で自身の思想、哲学、主義、有り金のすべてをかけて戦った和也だったが、その最後は、表面上は敵対しながらも和也を救いたいと思ったカイジに救助されるという、和也にとって二重に皮肉な結末となった。
愛よりも剣
劇中劇として登場した和也の小説作品。
ストーリーは「あるヤクザの組長の寵愛を受けながらもホストの達也と店の金を持ち逃げした亜里沙が、後に達也とともに捕まり、組長が課す命がけのギャンブルによって達也との愛を試される」という内容。
和也本人曰く、「下らねーラブストーリーと一線を画す」作品らしい。和也編での描写を見る限り文体はケータイ小説並みにくだけており、これを読んだカイジは「文章は稚拙」としている。だが、「和也プロデュース」による”取材”の結果生まれたものだからか、表現や展開には読むものを圧倒する不気味な迫力があるともカイジは感じたようだ。「自費出版ではなく商業的なルートで出版された」と和也が発言していることから見ても、他人に訴えかけるものがあるのは間違いなさそうである。しかし彼の父親ならば商業ルートへの圧力をかけることも可能であろう。その可能性に気付けないあたりカイジも言うように世間知らずのボンボンと言ったことである。
また、作中の「組長」について、「あれほどセンチメンタルな気分じゃなかったが」との断り付きで和也が自身の分身であることを認めているのだが、「組長」はあばただらけの醜い容姿として描かれている。どちらかといえば、それは和也よりも父親の和尊の容姿の特徴にあてはまり、このことから、和也が父親譲りの自身の相貌に嫌悪を持っているのではないか?と読み取ることも出来る。
尤も、あくまであの組長の外見は小説を読んでいるカイジがイメージしている姿という可能性もあるが。