概要
福本伸行の漫画『賭博黙示録カイジ』に登場する帝愛グループ最高幹部の1人、利根川幸雄を主人公としたスピンオフコメディ漫画。全10巻。
原作『カイジ』シリーズの連載されている「週刊ヤングマガジン」の兄弟誌、「月刊ヤングマガジン」で連載されたが、「コミックDAYS」に連載移籍された。
前述の福本氏は、本作に関しては「協力」という立場で基本的に関与しないが、単行本第一巻・第四巻にて書き下ろし漫画を寄稿している。
作風
多額の金と命が肉薄する死のギャンブルやその最中の各々の心理描写など、非常にシリアスな物語が展開される原作とは打って変わり、帝愛の最高幹部でありながらも、会長の兵藤和尊(上司)と配下の黒服達(部下)との間で板挟みとなる利根川を通し「中間管理職」故の苦悩をコミカルに描かれている。
原作では主人公のカイジたちが参加する死のゲームのコミッショナーとして畏怖される存在だった利根川が、部下たちと連携を深めるために様々なイベントを企画したり、気まぐれな兵藤の顔色を窺い気を利かせたり、それらの多くが裏目に出たり失敗したりと、本編では見せたこともないような人間臭い側面が描かれている。
作画も然ることながら、独特の台詞回しやその間の取り方など、福本氏による原作と見紛うほどの高い再現力や、原作のワンシーンを意識したパロディネタなども見所の一つ。
なお、時系列としてはエスポワール号での「限定ジャンケン」開始よりも前とされる。
最初こそは時代を意識した演出(携帯が1990年代のものだったり)だったが、次第にスマホやTwitterが出てきたりとギャグ漫画らしく時代を無視するようになってきた。
最終話にてチーム利根川解散後の黒服達のその後(恐らく本編の「Eカード」後)が描かれている。
あらすじ
昨今のテレビや映画、音楽などに飽き飽きしている兵藤のために「死のゲーム」の企画を命じられた利根川。
十余名の黒服たちを招集し企画会議を開始するが、冒頭から没個性な黒服たちの顔と名前を覚えることに苦悩する。果たして企画はまとまるのか…?
登場人物
- 利根川幸雄(とねがわ ゆきお)
CV:森川智之
主人公にして本作屈指の苦労人。
帝愛グループの最高幹部という高い地位でありながら、会長たる兵藤のわがままと気まぐれに付き合うため、サービス残業や休日返上もいとわず勤務している。本編開始時も、ゲームを企画するにあたり週末のゴルフの予定が流れてしまったことを悔やんだり、出張の際には20連勤も珍しくないと発言している。…なんという社畜。
過酷な労働状況のため、食に貪欲で脂っこい物などを好んでいる節がある。
本編では概ねツッコミ役。
黒服たちと連携をとる上で部下の指導に関するマニュアルを購読したり、社員旅行や打ち上げ会で親交を深めようと試みるが、なかなか思い通りにならず苦悩する。黒服たちからは「利根川先生」と呼ばれている。ときにはインフルエンザ対策のために手の洗い方を指導したり、伸び悩む若手の黒服に個別指導を行ったり、部下の冠婚葬祭にちゃんと出席したりと、なんやかんやで面倒見が良い。仕事が違法な闇金融であること(高利貸し、債権の悪用など)を除けば、理想の上司と言う意見も少なくない。本人も違法な仕事をしている自覚を持っている。
健康診断や何らかの問題があれば、率先して改善に務め、自分を律して取り組む。
一方で、偶然見つけた「焼き土下座装置」をその用法を知らないとはいえ特大のバーベキュー用のプレートと勘違いしたり、原作でのカイジの心理描写のパロディをやってのけたりなどボケに転じることもしばしば。
- 兵藤和尊(ひょうどう かずたか)
CV:津嘉山正種
帝愛グループ会長。
原作同様に狂気じみた趣向を持つ老人で、非常に気まぐれ。
帝愛に長年勤める利根川ですら彼の心理は読めないとのこと。
己の機嫌一つで社員を切り捨てるなどから非常に怖れられる存在であるが、寄る年波には勝てず居眠りをするなど「圧倒的おじいちゃん(原文ママ)」ぷりを垣間見せることも。
西口が見抜いた人格から、とある面倒臭い女の内面を語った歌詞通りであるため、利根川が見抜く出来ないのも無理はない。
福本氏による第1巻描き下ろし版では、帝愛の新たなエンブレムを制作しようという会議に直々に参加し、黒服たちのボケにキレのあるツッコミを入れたり、焼き土下座までさせようとするなどかなりアクティブな姿もみせている。
なお、息子である和也の交友関係を気にかけたりするなど父親らしい面も覗える。
- 黒崎義裕(くろさき よしひろ)
CV:宮内敦士
帝愛グループ最高幹部の一人であり、利根川のライバル的存在。
普段利根川が兵藤に言ったら叫責される様な歯に衣を着せぬ言葉を発言しても、許してもらえる要領の良い人物で、唯一兵藤の逆鱗に触れていない。更にいつの間にか横から漁夫の利を得て兵藤を置き去りに美味しい所を奪う場面もある。
兵藤の無茶振りを断っても気に入られている為、利根川から密かに嫉妬されている。
しかし、後述のまさやんが悪戯を繰り返していた際、声を荒立てる事無く威圧感で諌めるなど帝愛幹部らしい裏に怖い一面を隠している。
- 本田正安(ほんだ まさやす)
CV:大塚明夫
通称「まさやん」。
兵藤の影武者となる人材を探す利根川と山崎が奇跡的に遭遇した、会長と瓜二つの飲食店従業員。複雑な鼻の形や特徴的なシミの位置など細部まで完璧に一致しているが、性格は会長とは正反対の、人当たりが良く仕事熱心な人物(…だった)。
帝愛の重役である利根川きっての願いで兵藤の影武者役を快く引き受ける。
以降は山崎指導の下、会長の言動を完璧に真似できるようにその人格からしぐさまで徹底的に再教育され、最終的には会長同様(もしくはそれ以上の)野性味溢れる狂人への変貌する。
しかし、その頃にはすでに会長の中での影武者ブームが去っており、御役御免となってしまう。
事情を聞いた遠藤勇次が気を利かせて野生に返す(?)が、長い特訓の末にまさやんに愛着を持っていた山崎の懇願で捜索され、以降もチーム利根川で彼を監理することとなった。
老人離れした身体能力の持ち主ではあるのだが、吊り輪から制裁で振るう杖の素振りでは離れた所にある蝋燭の火を消すなど、明らかに方向性を間違えている特訓を実行している。
その後も時に会長を騙らせて悪戯に使われたり、逆にメンバーの私物を隠す悪戯をしつつも会長より愛嬌があるためかチーム利根川のペット的存在として餌付けされ、愛されている。
72話にて、影武者ブームが戻った兵頭と遂に対面。その容姿には兵頭も感服するほどである。
そして、兵頭直々に英才教育を施された上で1週間の影武者生活を送ったが、贅を極めた生活に味を占めてしまい。旅行から帰った会長とひと悶着を起こしてしまう。
最終巻書下ろしにて、その後牢屋に入れられ騒ぎを起こしたが、山崎との会話中に彼が手を叩いた瞬間、元の人格に戻り、元の居場所に帰っていった。
利根川主催の「死のゲーム」の企画会議に参加する黒服たち。
詳細やメンバーなどは当該記事を参照。
- 東さん(とんさん)
CV:大河元気
「人間麻雀」の解説のため、利根川に召集された黒服。
呼称の由来はその際に着用したシャツに貼られていた「東」の文字から(本名は不明)。
以降も雑用係として不定期に登場していたが、津久井が失踪後の穴埋めとしてメンバーに昇格。後任の座は海老谷が務めることになった。
アニメ版
『どれ・・・ワシも動くとするか・・・!』
マッドハウスの手によってテレビアニメ化された。
日本テレビ・AnichU枠で2018年7月から同年12月まで放送されたほか、日テレプラス(読売新聞系のCSテレビ局のひとつ)や福岡放送およびテレビ信州でも放送されている。
話数カウントは「Agenda」。
ナレーションは川平慈英が務めている。
14話より『1日外出録ハンチョウ』のエピソードも放送されている。
話数 | サブタイトル | 原作 |
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Agenda1 | 始動 | 第1話 |
Agenda2 | 忖度 | 第2話、第3話 |
Agenda3 | 鉄板 | 第4話、第5話 |
Agenda4 | 大人 | 第6話、第7話 |
Agenda5 | 猛省 | 第8話、第9話、第10話 |
Agenda6 | 大砲 | 第11話、第12話、第12.5話 |
Agenda7 | 蔓延 | 第13話、第14話 |
Agenda8 | 海老 | 第15話、第27話 |
Agenda9 | カツ | 第16話、第17話 |
Agenda10 | リハ | 第18話、第19話、第20話 |
Agenda11 | 出張 | 番外編「出張」、番外編「飲会」、番外編「尖靴」 |
Agenda12 | 似非 | 第22話、第23話、第24話 |
Agenda13 | 出港 | 第21話、第26話 |
Agenda14 | 外出 | ハンチョウ第1話、ハンチョウ第3話 |
Agenda15 | 豪遊 | ハンチョウ第2話、ハンチョウ第4話、トネガワvsハンチョウ |
Agenda16 | 天敵 | 番外編「追走」、第30話 |
Agenda17 | 内示 | 第28話、第29話 |
Agenda18 | 同調 | 第32話、ハンチョウ第6話 |
Agenda19 | 新人 | 第31話、第33話 |
Agenda20 | 接待 | 番外編「接待」、ハンチョウ第5話 |
Agenda21 | 中傷 | 第34話、ハンチョウ第7話 |
Agenda22 | 後編 | ハンチョウ第8話、第35話 |
Agenda23 | 予感 | 第36話、ハンチョウ第9話 |
Agenda24 | 終着 | 第37話、第25話 |