概要
『賭博黙示録カイジ』の最序盤に登場するギャンブル。客船「エスポワール」で開催された変則じゃんけんである。
物語の主人公・カイジは友人の保証人として負った莫大な借金をチャラにすべくこのギャンブルに身を投じる事になり、彼がこの先命を賭けた勝負に挑む上での最初のギャンブルとなっている。
ちなみに、他の参加者たちも帝愛から莫大な借金を負った債務者ばかりで、船井譲次や安藤守のように人間性としても業の深い者たちばかり。
ルール
参加者はそれぞれ3つの星とグー、チョキ、パーが描かれたカードを4枚ずつ計12枚が与えられる。参加者はこのカードを用い、他の参加者とじゃんけん勝負を行い、勝てば相手の星を1つ手に入れる事が出来る。あいこの場合は星の移動はない。
また、全参加者は勝負前に最低100万円、最高1,000万円(30歳以上は最高500万円)を貸し付けられる。ゲーム参加中は利率1.5%の10分複利(4時間の場合、約4割増し)という暴利が課され、終了時点での借金がそのまま債務となる。この現金の使い道はルール説明で言及されておらず、一切自由である。
じゃんけん勝負の相手は参加者同士で探し合うことになり、相手が勝負に承諾したらじゃんけん勝負となり、船内のボックスに向かい合い、チェックでカードを確かめ、セットでカードを伏せて提示する。そして、オープンで互いにカードを見せて勝負する。この時使ったカードは(あいこであっても)ボックスに回収されるため、再度の使用は不可である。
船内には電光掲示板が設置されており、残り時間と、残っているグー、チョキ、パーのカードの枚数が表示される。
全てのカードを使い切った時点で星が3つ以上(リピーターは4つ以上)あれば勝利となり、勝利した場合、参加者の借金は全て主催者が肩代わりする。
一方で以下の条件を満たすと負けになる。
- 星が0になってしまう。
- 規定時間(4時間)内にカードを使い切っていない。
- 規定時間終了時に星が規定数に達しておらず、尚且つその後の星の売買でも規定数に達しない。
- カードを破棄する等のルール違反を行う。
負けになったプレイヤーは別室送りとなりその時点で所持している星とカードは全て没収される。この時点では他のプレイヤーが星を与えて救出することも可能だが、救出されなかった敗者はその後エスポワールでどこかへ連れて行かれる(当然過酷な運命が待ち受けていると思われる)。
作中でカイジは仲間の裏切りに遭い別室へ置き去りにされかけるが、自身の機転で脱出に成功している。
カードについては前述の通り破棄は不可だが、他のプレイヤーとの交換や売買は黙認される。また、星についても交換や売買は可能である。
実写映画版
本作を実写化した映画『カイジ 人生逆転ゲーム』にも同ゲームが登場する。
ルールは基本的に原作準拠であるが、以下の変更が加えられた。
- 規定時間は30分
- 電光掲示板にカードの残数表示はない。
- 勝負前の現金貸付はなく、代わりに星1個につき100万円(計300万円)の借金を負う。
- 金利は利率1%の1分複利(30分の場合、90万円の利息)。
- 規定時間終了後の星売買は無し(終了時点で星は1個100万円で買い戻し)、終了時点で残っている全プレイヤーは即別室行き。
ちなみに、今作におけるカイジは最終局面で目論みが破綻してカードをすべて消費することに失敗してしまい、別室行きとなった後に背中に焼印(物理)を押されてしまい、その後は地下帝国へ連行され強制労働を強いられる羽目になる。
余談
「FUCK YOU!
ぶち殺すぞ……ゴミめら……!
お前たちは皆… 大きく見誤っている…
この世の実態が見えていない
まるで3歳か4歳の幼児のように、
この世を自分中心…… 求めれば…… 周りが右往左往して世話を焼いてくれる
そんなふうにまだ考えてやがるんだ 臆面もなく……!
甘えを捨てろ」
「質問すれば答えが返ってくるのが当たり前か……? バカがっ……!」
「世間はお前らの母親ではないっ…!
おまえらクズの決心をいつまでも待ったりはせん……
世間というものは… とどのつまり……
肝心なことは何一つ答えたりしない…!」
「おまえたちは負け続けてきたから…
今 誰からも愛されることなく 貧窮し……ウジウジと……人生の底辺を……
這って 這って這って 這っているのだ……!
なぜか……?
それはおまえらが……ただ負け続けてきたからだ……
他に理由は一切ない…
おまえらはもう20歳を越えて
何年もたつのだから もう気が付かなきゃいけない
もう 心に刻まなきゃいけない……!
勝つことがすべてだと……
勝たなきゃゴミ…… 勝たなければ…… 勝たなければ……
勝たなければ………!』
限定ジャンケン…というかエスポワール編を特異たらしめている最大の要素は、ゲーム開始直前での利根川幸雄による長演説であろう。
前述したような「ゲームに負けた場合のペナルティ」に関して帝愛側は当初は一切の告知をしようとしなかったので集められた債務者たちからブーイングが起こるが、これを利根川は一喝し、むしろ債務者たちの自尊心を煽るような言葉を続ける。
これに大部分の参加者は感化されてしまい、会場は熱気に包まれるが、カイジは違和感を覚えていた。
そう、これは体の良い論点のすり替えなのである。
参加者は自分たちの安全保障のために情報を求めていたのに、いつの間にか利根川は論点を参加者のやる気や自己責任に置き換えており、まんまと彼らを口車に乗せることに成功している。
「こんな言葉で簡単に乗せられること自体がゴミである証拠では…」と考えるカイジの懸念は的中し、ゲームは最終的に阿鼻叫喚かつ混沌としたものになっていく。
カイジはこのデスゲームを通じて、幾多のトラウマを患い、同時に「勝つべくして勝つ」ための貴重な経験を獲得することになる。
ちなみに、長らく世の中の真理を衝いた名言として認知されてきたこの演説、スピンオフ作品『中間管理録トネガワ』にてコピペとして使いまわされていたことが発覚。
なんなら部下の黒服でも雰囲気作りさえどうにかすれば使用(?)できる模様。ソレデ良イノカ…
尚、同作はこの限定ジャンケン企画の発端が描かれた。退屈している帝愛グループ会長・兵藤和尊が、自らが楽しみたい死のゲームの企画を利根川が命じた所から始まり、利根川チームが編成された。そして紆余曲折を経て利根川に配属された黒服の一人、佐衛門三郎二朗が提案したジャンケンを使ったカードゲームを利根川が採用し、そしてアレンジを加える事で限定ジャンケンと言う死のゲームが誕生した。
ゲーム
PSゲーム『賭博黙示録カイジ』はこの限定ジャンケンを再現した作品となっている。
主人公はオリジナルキャラで、カイジはリピーターとして船の対戦者のひとりとして登場するというifストーリーとなっている。
限定ジャンケンのルールは概ね原作通り。
ただゲームとして再現する都合上原作では有り得ないおかしな点がいくつかある。
モンハンコラボ
オンラインゲーム『モンスターハンターフロンティアG』において、2016年4月21日~2017年3月29日までの期間、「カイジコラボガチャ」という名称で同名のハリセンネコくじ(ガチャ)を引ける「Eカード」というアイテムが販売される。
このくじでは、カイジコラボアイテムとして以下の物が入手可能。
- 『限定ジャン剣』 - ジャンケンカードをモチーフにした双剣。
- 『電流鉄骨』 - 鉄骨渡りをモチーフにした大剣。
- カイジ/美心シリーズ - 防具。男性用はカイジ、女性用は美心のデザイン。
また、ゲーム内で実際に限定ジャンケンをプレーすることも可能。
ラスタ酒場に登場したカイジから「10000ペリカ」を受け取り、それを使ってイベントクエスト「遠藤金融への道」を受けてダイミョウザザミを狩猟することでエントリーされる。
ルールは原作に準じるが、以下の相違点がある。
- カードは各3枚となっている。
- 時間制限は特にない模様。
- カードを使い切るor星がなくなった時点で即座に結果が確定するため、星やカードの売買は不可能。
- カードを使い切った状態で星が3個以上だった場合、チャットアクションが追加される。5個以上だった場合もう1つチャットアクションが追加される。
- 敗北条件を満たしても、防具の装備が解除された状態でマイハウスに移動するだけ。
- 結果が出た後再びカイジに話しかけることで再度クエスト受注→限定ジャンケンへのエントリーが可能だが、その場合でも星のノルマは3個以上のまま。