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ジオニズム

じおにずむ

機動戦士ガンダムシリーズにおいて、アニメ『機動戦士ガンダム』に始まる宇宙世紀を舞台にした作品に登場する思想。
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概要

全人類の宇宙移民化により地球環境の保全を図るべきとするエレズムと、宇宙居住民(スペースノイド)の地球連邦政府からの脱却と独立自治国家建設を目指すコントリズムを統合し、人類は過酷な宇宙環境に進出・適応することで生物学的にも社会的にもより進化した存在=ニュータイプになれるという思想。

宇宙世紀0050年代にジオン・ズム・ダイクンによって提唱され、連邦政府の専横と圧政に不満を持っていたスペースノイドの間で一大ムーブメントを引き起こし、地球から最も遠いコロニー群・サイド3にジオニズムを国是と称するジオン共和国及びジオン公国ネオ・ジオン等の国家や軍閥、武装組織を発生させた。

総じて、宇宙世紀作品において一年戦争を発端とする『機動戦士ガンダム』から『機動戦士ガンダムUC』(または『閃光のハサウェイ』)までの歴史を理解する上で、重要な概念である。

名前の由来は「シオニズム」と考えられるが、「シオニズム」が聖地(エルサレム)への回帰を訴える思想なのに対して、「ジオニズム」は聖地(地球)からの脱却を主張する思想であり、内容としてはかなり違う。

解説

コントリズム

サイド(またはコロニー)の自治権獲得ないし独立国家の建設を目指す思想。
まず背景として、宇宙移民の中心は旧世紀の貧困層または敗戦国の国民であり、富裕層や地球連邦関係者といった特権階級の人々が中心であった地球居住民(アースノイド)に対して本来的に立場が弱く、無理やり移住させられたという意識が強かった。
さらにコロニーの莫大な維持管理費についてもスペースノイドは水や空気にまで重税を負わされていたが、そこにはコロニー公社を通じて連邦政府に吸い上げられているという搾取と利権の構造が存在していた。

これに対する反発として、スペースノイドの財産や税金はスペースノイドのためにのみ使うべきだという考えに至ったとされる。さらにスペースノイドも宇宙移民開始から半世紀が過ぎる頃にはコロニーのなかで一生を終える者が出始め、自分たちの生活に直接関係しない地球からの独立を訴える声が日増しに強くなっていった。

このコントリズムこそがダイクンの最初の主張であったとされている。ダイクンは地球連邦評議会議員時代の宇宙世紀0046年に最初の概略を発表。しかし、コロニー利権だけでなく既にスペースノイドの生産活動や宇宙資源に大きく依存していた地球経済を守ろうとする連邦政府は、あくまでもスペースノイドの画一的支配の主張を崩さなかったため物別れに終わり、最終的にダイクンも評議会を離反・出奔してサイド3へと移住し、これが0058年のサイド3独立宣言とジオン公国の前身たるジオン共和国樹立へと繋がる。
宇宙世紀0067年には最後の妥協案であったコロニー自治権整備法案も廃案となり、経済制裁と合わせて一年戦争への下地が形成されていくことになる。

エレズム

全人類の宇宙移民化を図り、地球を人類不可侵の聖域にすることで環境の浄化と保全を説く主張。
これ自体はダイクン独自の思想ではなく、そもそも宇宙世紀開闢以前に連邦によって進められた宇宙移民政策そのものが地球の環境再生のための人口解決策であった。

宇宙移民政策によって地球への渡航は厳しく管理・制限され、スペースノイドだけでなくアースノイドですら一度宇宙に居を移せば、合法的に地球に戻ることはほぼ不可能な状態になった。
そして一歩間違えれば即死に繋がる過酷な宇宙環境での生活を送るうち、地球出身のスペースノイドの間で故郷である地球への慕情が、地球を知らない宇宙生まれの子供や孫の世代の間では地球への憧れといった感情が芽生えるようになり、やがて地球を「母なる大地」として神聖視する価値観が醸成されていった。

しかし、宇宙移民が進むと地球に残った人口は旧世紀20世紀末の人口(つまり適正人口)に戻ってしまい、環境保全と言う宇宙移民の意義は中途半端なところで達成されてしまった。宇宙移民開始から半世紀が過ぎた0051年、連邦はこれ以上の宇宙移民は不要として地球への渡航制限を残して宇宙移民計画を凍結した。
こうしてスペースノイドとアースノイドと言う身分が固定化した結果、スペースノイドの間で「アースノイドは財産やコネを使って地球で安全かつ安楽な暮らしを謳歌し、あまつさえ地球の汚染を押し進めている」という不公平感が高まり、両者の軋轢と対立が激化して行くことになる。
この不満がいわば「アースノイドを地球から叩き出す」という考え方へと帰結し、それを是とするエレズムにスペースノイドの支持が広がったと言える。

ニュータイプ

人類が宇宙に進出することで、その厳しい環境と広大な生活圏に適応進化し、肉体的・精神的にあらゆる物事を理解することができる新人類・ニュータイプが生まれるとする考え方。
ダイクンはこれを「第三のルネッサンス」(第一はサルから人へ、第二は中世から近代へ)と評し、「スペースノイドからこそニュータイプが生まれる」としてスペースノイドの希望を煽ると共に宇宙移民の正当性を主張している。
しかしながらその本質は、ダイクン自身も人類の革新などというものを心底から信じていたわけではなく、地球とは月を挟んだ位置という「僻地」であるサイド3に移民させられてきたことで、逼塞し、内向的にならざるを得なかった共和国民たちに、次なる銀河、次なる星雲というアドバンスド・ステージを示し、彼らの心に潤いを与えるために提示したテーゼでしかなかないものであった。そして更に根本へと辿ると、自らが提唱したコントリズムとエレズムの実行のために、多くの人間を巻き込んでいる現実に対する自己欺瞞であると、実子であるキャスバル・レム・ダイクンは見抜いていた。(が、後にキャスバル=シャアは、地球においてララァ・スンに出会う事により、ニュータイプの存在を確信する事になる。)

ダイクンの説くニュータイプの定義は、究極的には彼自身も具体的に思い描いてはいなかったため、当然ながら曖昧にならざるを得なかったが、それでも彼の存命中は思想的なコントロールはできていた。
しかしダイクンは間もなくデギン・ソド・ザビに暗殺され、残された全ての人間が、ダイクンが明確な答えを出さないまま遺したテーゼをあるいは利用し、あるいはテーゼに沿った力を得たが故に運命を狂わされていく事になる。

具体像を持たないテーゼであっても、「ジオン・ダイクン」の名は彼の死後も宇宙移民者にとって非常に大きなウェイトを維持しており、その根幹たるニュータイプ論は後に「公王」の地位と権力を得たデギンを始めとしたザビ家一党も教義とせざるを得なかった(更にザビ家の本心を言えば、国名を「デギン公国」ではなく「ジオン公国」としなければならなかった事自体が、屈辱であった)。が、当時のジオン政府関係者の間では、懐疑的な見方をする者も多く、どちらかと言えばギレン・ザビのようにジオンのナショナリズムを補強し反連邦の気運を高める政治的方便としては使える程度の(一面では正しい)認識の者の方が多数派であった。
しかし一年戦争を期に、並外れた認識力や直感力、『感応波(サイコ・ウェーブ)』と呼ばれる特殊な脳波とを持った(宇宙世紀0100年には、これらの“能力”は、ニュートリノに似た粒子スウェッセムによるものと科学的に解析される。)人間が実際に出現するようになり、ジオニズム信奉者は彼らこそ予言された「ニュータイプ」と捉えてジオニズムの正当性を確信。その理念は強固なものとなり、これによってダイクンが用意していたシナリオは、以降完全にコントロール不全となってしまうのだった。

しかしながら、ニュータイプ論信奉者たちにとっても、機械的手段で「強い直感力と感応波を持つ特殊な人間」が存在することはわかっても、ニュータイプへの進化が個体の認識や意識によって齎される変革であるとする以上、それが本当に「人類の進化形」であるかどうかを生物学的に証明することは不可能であった。
さらに言えば、実際にはアムロ・レイララァ・スンを始めとして、地球で幼少期を過ごした者やアースノイドの両親を持つ者などからもニュータイプは現れており、上述の通りダイクンにとってもあくまでテーゼに『形』持たせるための思想でしかなかった事から、当然ながら「そもそもニュータイプは、ジオニズムで語られたニュータイプと同一の存在(=宇宙に進出したことによる人類の革新)なのか?」という根本的な疑問が残ることになる。

ジオニズムの光と影

繰り返すようにダイクンの掲げたジオニズムが目指すところは、地球からの脱却・独立を謳うだけではなく、地球という『質量』から離れた地であっても、独自の文化を醸成できるだけの穏やかな生き方を手に入れられる「ニュータイプ」となる事で、未だ見ぬ新たな体制を構築し、全人類が自律的に地球から宇宙へ移民することで、汚染された地球の浄化と保全を進めるものであった。
しかし、既に旧世紀から続く資本主義体制の収奪者としての立場を確立していたアースノイド(高級官僚)達にとっては、自分達の既得権益を脅かすばかりか、生活環境の苛酷な宇宙へと強制移住させられることを前提としており、さらに移住後も環境整備のために個人は犠牲になるべきと言う前近代的かつ全体主義的な側面もあったため、アースノイドの多くにとってジオニズムは受け入れ難い危険思想であった。

更にニュータイプ論の定義そのものが漠然としたものであったことから、一年戦争によってニュータイプの存在が実際に周知されるまでは「スペースノイド=宇宙に適応した人類=ニュータイプ」と解釈することもできたため、アースノイドに対するスペースノイドの優位性を主張するある種の選民思想を生み出す基盤となり、アースノイド(及びアースノイドに賛同するスペースノイド)を人類の革新の障害になる『オールドタイプ(旧人類)』として粛清・排除すべしという過激な思想をも派生させてしまった。
特に宇宙世紀0068年にダイクンを暗殺したデギンの下でザビ家の独裁政権によるジオン公国が樹立すると、公国総帥ギレン・ザビらによってジオニズムのそうした部分が『優性人類生存説』(ジオニズムを論拠にジオン公国民の人種的優良性を説いたギレンの著作)などのように歪められる形でプロパガンダに利用されたことでジオンのイデオロギーへと昇華され、一年戦争におけるコロニー落とし等の大量殺戮行為の正当化に用いられた。
ここで「連邦を倒し、地球圏はジオンの名の下に統治されるべし」とする急性的な理念が加わった「ザビ家のジオニズム」ともいうべきものが生まれるに至り、同時にジオンの後継者をザビ家の血統に求める動きも発生、これらが後のデラーズ紛争第一次ネオ・ジオン抗争のような打倒連邦やジオン復興を目指す急進派ジオン残党勢力による数々の武装決起事件の布石となる。

そしてダイクンの理想たるニュータイプ像が「お互いに判り合い、理解し合い、戦争や争いから解放される新しい人類の姿」であったにも関わらず、ミノフスキー粒子散布下での宙間戦闘適性の高さから、ニュータイプは戦争の道具としてその能力を利用されていくのであった。

これらの動きは、単にスペースノイドの独立を目指すコントリズムのみの観点で見た場合、ジオニズムの掲げる『人類全体の革新』という理想と視野が余りにも茫漠で遠大過ぎたことが、却ってコロニー国家の独立自治権確保等といった限定的だが現実的な目標を達するだけでは許さなかった遠因となったことも否めない。
事実、打倒連邦に固執したジオニズム信奉勢力の起こした争乱は凡そ過激かつ大規模になりがちで、徒な戦線の拡大と泥沼化を招き、結果的に連邦がジオニズムを危険視しその態度をさらに硬化させるという悪循環に陥っている。
こうしたことから、宇宙世紀0096年に勃発したラプラス事変において、ネオ・ジオン残党(「袖付き」)の首魁フル・フロンタル(及びその背後にいたジオン共和国国防大臣モナハン・バハロ)は「(スペースノイドの独立を目指すならば)ジオニズムという思想に頼るのではなく、地球無しでスペースノイドの経済は十二分に回る事実自体を武器にすべきであった」とダイクンやギレンのやり方を批判し、ジオン主導による連邦を締め出した経済圏を確立するサイド共栄圏を構想している。

グリプス戦役

一年戦争及びデラーズ紛争終結後は地球連邦による弾圧もあってジオニズムは一時鳴りを潜めるが、連邦内部でも敢えてジオニズムを利用する動きもあった。
その代表格であったのが、ギレンの地球環境保全のためのアースノイド粛清及び宇宙移民と言う理念に大きな影響を受けた強硬な地球至上主義者のジャミトフ・ハイマン准将であった。彼は連邦内の派閥対立を巧みに操り、アースノイドとスペースノイド間の対立を煽ることで紛争を起こし、地球経済を悪化させて干上がらさせ、地球人口を粛清・管理することを目論む。このために彼が合法的に動かせる自らの尖兵として結成させたのが、ジオン残党狩りを名目としたアースノイドによる暴力装置ティターンズである。
一方、同じく連邦軍人であるブレックス・フォーラ准将もティターンズのスペースノイドへの横暴に対抗する形でスペースノイド寄り軍閥であるエゥーゴを結成し、両者の争いはグリプス戦役へと発展する。
皮肉にもジオニズムはティターンズの隠れた理念として、そしてティターンズの(表向きの)活動に対するエゥーゴのカウンター的思想として敵対する両者に影響を与えていたわけである。

第二次ネオ・ジオン抗争

宇宙世紀0090年代、ダイクンの遺児にして一年戦争のエースでもあった新生ネオ・ジオン総帥キャスバル・レム・ダイクン(シャア・アズナブル)はかつてのジオン公国のザビ家独裁を否定、それ以前のダイクンの理想であるコントリズム実現を第一に押し出したことで、一年戦争時代のジオン公国に対しては否定的だったサイド3以外のスペースノイドも協力者として取り込むことに成功し、息を潜めていたジオニズムは復興する。

宇宙世紀0093年、シャアは地球に固執する連邦政府の特権階級の粛清を掲げ、地球に大量の核兵器を積載した小惑星アクシズを落下させるというかつてのギレン以上の急進策を採る。だが実際のところ、シャアはコントリズム実現よりも、「人類は自分の手で自分を裁き、汚染した地球に対して贖罪しなければならない」というエレズムの過激的実践を目論んでいた。
アクシズ落としの真の目的は、物理的に地球を人の住めない星にして、一気に全人類が宇宙に上がらざるをえない状況を作り出すことで人類のニュータイプへの革新を強制的に起こし、人々にかけがえの無い地球の大切さを思い出させるというものだったのである。

しかし結果、アクシズ落としは失敗に終わり、ジオン信奉者の精神的支柱であったシャアも行方不明となったことで、ジオニズムは再び大きく力を喪う。

達成と終焉

その後もラプラス事変マフティー騒乱といったジオニズム信奉者またはそれを自称する者達による争乱がたびたび発生するが大局を覆すには至らず、、宇宙世紀0120~0122年のオールズモビル戦役を最後にして「ジオン」を名乗る組織の大きな武装蜂起事件は無くなった。

しかし、宇宙世紀0100年代に達した頃の連邦政府は、ジオンと言う明確な『敵』を無くした事がかえって腐敗と度重なる軍縮を進め、加えて既に一年戦争以前を上回るほどにコロニーやサイドが増加したことで、地球圏の全てに目を向けるだけの力を維持できなくなっていった。これによってアースノイドの地位と権限も低下し、皮肉なことにスペースノイドとの格差は相対的に縮小していったのだった。
そしてコスモ・バビロニア建国戦争において、ブッホ家が3代に渡って準備を進めてきた、単一サイドによる完全独立を達成。このコスモ・バビロンという国家自体は、内部分裂によって10年と経たずに瓦解してしまうが、かつてフル・フロンタルの語った「地球無しでスペースノイドの経済は十二分に回る事実」を証明して見せたのだった。
ブッホ家(ロナ家)の起こしたこの革新的なアクションは、実際には80年にも渡る壮大な下準備をもって行われたのだが、当時のスペースノイド達は「単一サイドによる経済圏の樹立」というセンセーショナルな側面だけを大きくとらえ、重ねて運悪く地球連邦が更に力を落とす戦役が勃発した事で、宇宙世紀0140年代には多くのサイドやコロニーがなし崩し的に独立を開始。結果、コントリズムはジオニズム無しで実現したのだった。
しかし、敵がいなくなれば次の敵を探すのが人類の性であったのか、地球連邦から独立した各サイドは、100年以上の時間をかけた事で生じたサイド(コロニー)間の経済格差や文化差を理由として、今度は連邦を無視してスペースノイド同士で紛争を起こすという、ダイクンやシャアも予想だにしなかったであろう『宇宙戦国時代』へと突入する。
この時代に差し掛かるとニュータイプの本来の概念は忘れ去られ、スペースノイドも人工環境下において世代交代を繰り返してきたために、地球の自然環境(コントロールできない天候、昆虫・大型危険動物、大気の砂塵や臭気、死骸の腐敗を含めた生態系を直接目にする事、など)をむしろ忌避する傾向を有し、もはやエレズムにも興味を持たなくなったことから、ダイクンの理想とは違う形で事実上ジオニズムは達成されてしまい、意義と目的を喪ったジオニズムは連邦と同様に旧時代の遺物として形骸化し、却って各コロニー間の団結などを妨げる要因となるだけだった。

やがて宇宙世紀0153年のザンスカール戦争にて生粋の地球生まれ・地球育ちのニュータイプであるウッソ・エヴィンが出現したことで、「過酷な宇宙環境に適応進化した新人類」というダイクンのニュータイプの定義とそれに基づくスペースノイドの優位性と正当性を説くジオニズムは根底から崩壊し、名実ともに終焉を迎えたのだった。
しかし、ニュータイプとしての優れた素養だけにとどまらず、あらゆる面で万能の才を有するウッソの存在は、過酷な環境に適応するための素養は人に元来備わっているという事の証左とも言え、人類の持つポテンシャリティの肯定としては希望的な側面を示していた。更にエンジェル・ハイロゥ飛翔によって異なる銀河に人類という種が飛び立った事実もまた、一面ではジオン・ダイクンが提示したテーゼを達成したとも見なせる。


宇宙世紀はその後、後の黒歴史が語る“アーマゲドン”によって終焉し、その遥か後、リギルド・センチュリーの時代ではニュータイプという言葉だけを半ば伝説として残すのみだった

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