デラーズ「星の屑作戦に変更は無い、矢は既に放たれたのだ!」
概要
宇宙世紀0083、地球連邦軍に対しジオン公国軍残党勢力『デラーズ・フリート』が武装蜂起したことで勃発したデラーズ紛争。
その最終目的とされたのが、この星の屑作戦である。
以下、『機動戦士ガンダム0083』のネタバレを含みます
作戦に至るまでの前戦史
日付 | 略歴 |
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7月30日 | 総帥エギーユ・デラーズ、星の屑計画を始動 |
10月13日 | アナベル・ガトー小隊、連邦トリントン基地よりガンダム試作2号機(GP02)を奪取。サウス・バニング、コウ・ウラキらがこれを追従するも逃げ切られる |
10月14日 | 連邦の強襲揚陸艦アルビオン、GP02の奪還の為にガトーを追ってアフリカへと向かう |
10月21日 | GP02の乗ったHLV(ロケット)、ガンダム試作1号機(GP01)を駆るコウ・ウラキ他によるアルビオンの猛攻を躱し宇宙へと発進 |
10月25日 | シーマ・ガラハウ率いる別動隊、デラーズ・フリート本隊に合流 |
10月31日 | GP01、シーマ専用ゲルググMとの戦いで大破、回収。デラーズ・フリート、連邦に宣戦布告 |
11月4日 | デラーズ・フリートに加わる予定だったケリィ・レズナー、月面でのGP01Fbとの戦いで戦死 |
11月5日 | ガトー艦隊、行動を開始 |
11月8日 | シーマ艦隊とアルビオン交戦。サウス・バニング戦死 |
ソロモンの悪夢、再び
迎えた11月10日、かつて一年戦争の激戦地であったソロモン沖で開催された連邦の観艦式を、ガトーの乗るGP02が強襲。
「ソロモンよ、私は帰って来た!!」
過たずして放たれたアトミックバズーカが、ソロモン近海で大爆発を起こす。シーマ艦隊との裏取引でデラーズ一党を掃討してしまおうと早期に考えていたグリーン・ワイアット中将などを始めとした、数多の連邦将校は一瞬のうちに蒸発、全軍の2/3にも及ぶ艦船が宇宙の藻屑と消えた。これは近代戦においては全滅に等しいほどのダメージであった。
怒りに燃えるコウのGP01FbはGP02と交戦し、双方が大破しコウ、ガトー両名は脱出した。
同日、シーマ艦隊により移送中のスペースコロニー2機が襲撃され、ミラーが切断される。コロニーは重力(遠心力)維持の為に常に回転を続けており、ミラーの破壊に伴い回転が狂い衝突することが確定。
翌11月11日、エギーユは転がり続けるコロニーをカードにして「アクシズ艦隊の滞在」を連邦に要求した。
2つのコロニーは月の重力に引かれていったため、連邦は自分の腹が痛まないからという理由でこれを軽視。アクシズ艦隊の中立を条件に、エギーユの要求に首を縦に振った。
かくして、星の屑作戦はヴェールを脱ぐこととなる。
明かされる真の目的
星の屑作戦の本来の目的は、月ではなく地球へのコロニー落としである。かつてジオンが行い、人口の1/2を抹殺した悪魔の作戦を、もう一度実行に移すことがエギーユの目論見であった。
無論、普通に考えればコロニーは月面に落ちるに決まっている。しかしデラーズ・フリートは月面都市フォン・ブラウン(アナハイム・エレクトロニクスの企業城下町)に事前に根回しを行っており、彼らが「自衛」を名目に放ったレーザー推進装置により、コロニーの向きを強引に地球へと向けさせる。
連邦はコロニーを破壊して食い止めようとする__しかし、主力艦隊は観艦式の惨劇でほぼ全滅。残存兵力も速度を増すコロニーへの追従は不可能であった。これを受け、アルビオンクルーは独断でコロニー破壊へと向かう。コウはAEからガンダム試作3号機(デンドロビウム)を奪取し、コロニーの奪還へと向かった。
運命の11月12日
アクシズ艦隊から新型MAノイエ・ジールを受け取ったガトーは、連邦のMS部隊を難なく蹴散らしつつ、デンドロビウムの行く手を阻む。両者ともIフィールドによる完全防御により消耗戦となったため、コウ、ガトー両名は帰投する。
一方、この間隙を縫い、連邦のジーン・コリニー大将とその側近であるジャミトフ・ハイマン准将は、密かにシーマ艦隊の離反並びに連邦側への組み入れを受諾。シーマはエギーユの首を土産に連邦に寝返るべく、旗艦グワデンの艦橋をジャックした。
そんな事は露知らず、アルビオンとガトー艦隊は再び交戦。そしてガトーの時間稼ぎが功を為し、遂にコロニーは阻止限界点を突破。地球へのコロニー降下が確定した。
シーマと内通していたジャミトフは、部下のバスク・オムにコロニーへのソーラ・システムⅡの照射・熱膨張による爆破を命じる。が、これを良しとせぬエギーユは戦闘継続を命じ、シーマ一味の凶弾に倒れる。もはや運命の歯車はシーマやジャミトフでは止めようがないところまで進んでいたのである。
ガトーはソーラシステムⅡの破壊へと向かい、功を焦ったバスクは発射時刻を待たずソーラシステムⅡを掃射。コロニーは光に包まれるも、照射中にガトーがコントロール艦を破壊し、殆ど損傷無くコロニーはソーラシステムⅡを貫通して降下していく。
アルビオン隊はなおもコロニーの破壊に向かうが、主戦力のコウが私怨に近い形でシーマ艦隊の撃墜に時間を割いたこともあり、ガトーがコロニーのコントロールシステムに乗り込み、最後の「軌道修正」により本来の目的地へと舵を切るのを許してしまう。
コロニー落としの真の標的は、連邦本部ジャブローではなく北アメリカの穀倉地帯であった。
そんな事を知る由もないバスクは、ソーラシステムⅡの残骸(1/4)でエギーユ、シーマの両頭を失ったデラーズ・フリートへの最終攻撃をかける。友軍の犠牲を厭わぬ一撃を受けてオーキス、ノイエ・ジールの双方が大破したが、その先にはコロニーの姿は無かった…。
星の屑、輝く
11月13日、午前0時13分。
目的通りコロニーは北米へと降下した。
役目を終えたガトーは残党をアクシズ艦隊へと逃がし、もはや原形を留めないノイエ・ジールを駆り自ら連邦艦隊に突撃して果てる。
こうしてデラーズ・フリートは壊滅し、デラーズ紛争は「連邦の勝利」で終焉を迎えた。
この作戦が齎したもの
ハッキリ言ってしまえば、星の屑作戦は成功に終わった。
しかし、目論見は外れたといえる。
待ち構えていたのはジオンの再興などとは程遠い、最悪の結末で迎える「成功」であった。
来たる11月23日、アルビオンクルーの軍事裁判が行われ、コウは懲役1年が、艦長エイパー・シナプスは死刑が下された。
これを受け12月4日、ジャミトフ・バスク両名はデラーズ紛争のようなスペースノイド反乱の芽を摘むべく、ティターンズの結成を発表。不死身の第4小隊らアルビオンメンバーも多くがティターンズの制服に袖を通した。
それと同日、フォン・ブラウンにてレーザーを発射したAEのオサリバン常務も変死体で発見された。自殺とも暗殺とも言われているが、詳細は不明である。
翌年・宇宙世紀0084、連邦政府は「そもそもここまで事態が悪化したのは、連邦が核兵器なんか装備したガンダムなんかを作ったのが悪いんだ」という結論を下し、ガンダム開発計画自体を完全に封印。これによりコウは釈放となった。
コロニー落としの真意は
・穀倉地帯に壊滅的な打撃を与え、食糧をスペースコロニー(スペースノイド)に依存せざるを得ない状態を作ること。
・それに伴い、スペースノイドの発言力を強化すること。
・連邦軍の目を宇宙へと向けさせること。
であった。
しかし、本作戦の先にあったものは、地球連邦やアースノイドによるスペースノイド軽蔑や弾圧、ティターンズの設立、連邦の更なる増長と狙いとは真逆の結果となった。
それもそのはず、シーマがリークした事によって、星の屑作戦の全貌は既に知れ渡っており、ジャミトフら連邦軍タカ派の軍閥政治に丸ごと利用されていたのである。
そしてそれに伴う連邦の内部分裂、更にはアクシズへと逃げ延びたジオン残党による反連邦運動の気運向上を招いてしまい、3年後に新たなる血塗られた歴史、グリプス戦役の幕が開くこととなる。
余談
コミックボンボン掲載のコミカライズではソーラシステムⅡによりコロニーが爆破され、本作戦は失敗に終わっている。
スパロボでもよく再現されるが、そもそもスーパーロボットが自軍部隊に揃っていてコロニー程度のものを破壊できないとも思えないということもあり、だいたいは降下寸前に阻止されるケースが多い。
スパロボネタとしては特にSFC時代のスパロボにおける、MAP兵器で味方機を巻き込んで倒しても経験値が手に入るという仕様を利用した、味方ユニットを1箇所に集めてMAP兵器で薙ぎ倒し一気に経験値を獲得してレベルアップを図る『人の屑作戦』が有名。
関連項目
ハマーン・カーン:アクシズ艦隊に所属。戦闘には加わらず。
ギレン・ザビ:かつてのジオン軍総帥にしてデラーズが崇拝していた人物。そもそもデラーズ・フリートはギレン・ザビ親衛隊が母体。
ブレイク・ザ・ワールド(機動戦士ガンダムSEEDDESTINY):本作がモデルと思われるCEの事件