概要
元々は、宇宙世紀0058年にジオン・ズム・ダイクンが初代首相となり、地球連邦政府から『独立を目指した』国家を意味する。この旧共和国については、こちらを参照。
本頁では、一年戦争終戦協定締結後に改めてサイド3に“建国”された、地球連邦政府内の自治領について解説する。
歴史
宇宙世紀0079年1月3日、地球連邦政府へ自治権確立を掲げ、独立戦争を挑んだジオン公国は同年12月31日のア・バオア・クー防衛戦において敗北。指導者一族であり、絶大なカリスマでもあったザビ家の支配は終了した。
この時点ではまだ、ジオン公国側はア・バオア・クー戦を生き延びた兵士は勿論、グラナダ(月の裏側、サイド3直近の月面都市)とサイド3本国や宇宙・地球各地に残存する部隊等多大な戦力を残してはいたが、戦力らしい戦力は枯渇し、目前の連邦艦隊は倒せても、ルナツーやジャブローといった重要施設の攻略は不可能。更にサイド3から近いア・バオア・クーを占領されたことで、そこから連邦の大艦隊が来襲する可能性が高く、そうなれば「国土」であるスペースコロニーへの被害は確実であった。ジオン公国は学徒兵を大量に徴兵したばかりか、ソーラレイ建設のために300万人の疎開民を出した(焦土戦術)直後であり、更に国土が傷付けば国民の不満が臨界点を越えるのも時間の問題と思われた。しかし、ア・バオア・クーの奪還は、その要塞としての能力を考えると至難であった。
一方で、連邦軍側も、ソーラ・レイによる攻撃やア・バオア・クー戦の損害が大きく、戦力の再編は必要である。
ここに両者の利害が一致し、ジオン臨時政府のダルシア・バハロ首相は、宇宙世紀0080年1月1日に、自治権の承認を条件として連邦政府との間で正式に終戦協定を締結した。
これによってサイド3は再び地球連邦政府に組み込まれ、コロニー公社への重税等を課されるものの、内政の自由は確保して、さらに「ジオン」の名を残すことが許され、ジオン共和国が成立した。
加えて、連邦政府は戦後復興援助を行わない代わりに、戦争賠償金の権利も放棄したため、ザビ家が軍事費に回していた大量の予算(サイド3の「国土」自体は、一年戦争での被害ゼロ)を、まとめて復興に使うことができた。
この上でダルシア首相は、ジオニック社などの軍事産業を即時に株式会社化し、市場に移すことで大量の追加復興資金を獲得(株式は地球連邦政府も確保したが、そのほとんどはアナハイム・エレクトロニクス社が買収)。結果的にサイド3は一年戦争後に最も早く復興を成し遂げた。
が、これは同時に戦前の棄民政策下に逆戻りしただけでもあり、特に旧軍部やジオン残党からの反発は激しく、エギーユ・デラーズのように共和国政府を「連邦の犬」「売国奴」と蔑む者も多数存在し、更にはジオン共和国破壊を目論んだ狂信的な輩もおり、Dr.Qと言う元ジオン軍の技術者は自ら作った超高性能MSで、リリア・フローベールらが属するゲリラ集団『狼の鉄槌』は気化弾頭でジオン共和国攻撃を目論んだが失敗している。
共和国側も、この状況を嘆くばかりだった訳ではない。
例として、宇宙世紀0088年の第一次ネオ・ジオン抗争において、サイド3がネオ・ジオンに譲渡された時には、資源小惑星「キケロ」の労働者達のようにハマーン・カーンに抵抗するなど、基本的に『一般市民』は不満を持ちつつも、デモなどの積極的な大規模行動を起こす程ではなかった。
(逆に、コロニー「タイガーバウム」で私腹を肥やしていたスタンパ・ハロイは、ハマーンに協力的であったのだから皮肉である。)
なお、宇宙世紀0093年の第二次ネオ・ジオン抗争では、キャスバル・レム・ダイクンがサイド1のコロニー「スウィートウォーター」を本拠地としていたため、(少なくとも市民レベルでは)何ら関わりを持たなかった。
一方で、「隠れジオン派」など密かに公国復興を目論んでいた勢力も存在していた。
こちらについては、宇宙世紀0096年にジオン共和国の政治家モナハン・バハロが、水面下で秘密裏にネオ・ジオン系残党組織『袖付き』の支援を行っていたとされる。だが、『ラプラスの箱』を巡る一連の騒乱で傀儡としてデザインしたフル・フロンタル大佐を失い、更に実動戦力の大半が瓦解。手札に窮したモナハンはしかし、イレギュラーから戦力提供を受けた事で、「不死鳥狩り」作戦に“諸刃の剣”ゾルタン・アッカネン大尉を差し向けたが、方々からの介入と(予想通りでもある)ゾルタンの暴走により、またもその計画は潰えることとなった。
最終的に共和国は公国再建という(一部の軍属・為政者の)悲願を成すこと無く、宇宙世紀0100年を以って正式に自治権の放棄が施行。ジオン共和国も完全に消滅することとなる。
以降、サイド3の情勢は描かれていないが、火星独立ジオン軍やモナハンの立ち上げた犯罪組織『黄金の鷹』、ジオン共和国の武装解除を拒否して外宇宙やサイド3に潜伏する『共和国解放戦線』など、独自の行動を取る勢力が細々と存在する程度で、大きな動乱は起きていない。
ジオン共和国軍
ジオン共和国の国防軍は正規軍であり、ジオン残党軍やネオ・ジオン軍残党のような非正規軍(=ほぼテロリストと同義)とは真逆の立場にある。
上述の通りジオン共和国は内政の自由を地球連邦政府から認められているため、各種税金を支払った後であれば、国防費を含めた予算配分はサイド3政庁の自由であり、MS及び艦艇の生産配備数や運用する機種にも制限を受けない(代わりに、地球連邦軍も駐留しないため、軍事的トラブルが生じた場合は自己解決しなければならないというプレッシャーに、絶えず晒されてもいた)。
あくまでも大枠では地球連邦軍に含まれるため、政府から支援要請を受ければ出撃の義務があり実際にグリプス戦役期には、ジオン共和国軍はティターンズの予備戦力として出撃したため、各地で行動するジオン残党軍からは失望を受けている。また、政府が締結した協定・条約に対しても、無条件で批准しなければならない。
このような関係から、共和国軍が宇宙世紀0094年頃から秘密裏に所有していたサイコフレーム搭載機シナンジュ・スタインは、宇宙世紀0097年当時においては絶対に戦線投入してはならない…どころか所有自体が大問題の協定違反兵器に該当していた。そもそも「不死鳥狩り」作戦への干渉自体が連邦軍への反逆と見なされる恐れがあった事も相まって、他の投入機共々、表向きはジオン共和国正規軍とは関係ないテロリスト集団である『袖付き』の機体に偽装しなければ、自国の立場が危うかったのである。
小説版『機動戦士ガンダムUC』において
小説版『機動戦士ガンダムUC』では、第一次ネオ・ジオン抗争時に一部シンパがネオ・ジオン軍と合流した事を問題視された結果、軍を解体されており、宇宙世紀0096年までに連邦軍主導で再編されるという二度目の組織改革がなされている。
それに対する反発心からか、ギリガン・ユースタス大尉など風の会をはじめとした政治家モナハン・バハロの思想に従う過激派が数多く存在している。
運用モビルスーツ
ゲルググ(成立直後。公国時代から引き継いだと思われる)
ビグ・ルフ(+ザンジバル仕様)
ハイザック(旧公国軍の伝統に則り指揮官機には角がついており、カラーリングもティターンズのものとは肩まで胴体と同じ深緑色であるなど細部が異なる。小説版ガンダムUCにおいての宇宙世紀0096年にはジオン系カラーへの塗装禁止というルールに従い、出荷時に施された白無垢で統一されている。)
共和国解放戦線
機動戦士ガンダムF90FFにて、ジオン共和国の自治権返還の際に武装解除を拒否して脱走したジオン共和国残党が結成した『共和国解放戦線』が登場している。主にギラ・ズールを運用している。
サイド3や外宇宙で活動しており、共和国解放戦線を含む3派42流にも及ぶテロ組織網の中心にいるとされている、元ハマーンの懐刀としてサイド2とダカールを無血制圧したライン・ドラグンがネオ・ジオン残党を束ね上げ結成した組織『レガシィ』と合流し、宇宙世紀0116年の新興コロニー「フロンティアⅠ」を襲撃した。
長谷川裕一作品において
漫画『機動戦士クロスボーン・ガンダムゴースト』(長谷川裕一作)では、富野監督やサンライズの関与の無いオリジナル設定ではあるが、宇宙世紀0150年以降の情勢が、以下のように描かれている。
自治権放棄後は、「月の裏側で地球から最も遠い僻地」という平和な地勢を利用して、電子機器、コンピュータ関連、情報通信分野の開発に力を注ぎ、地球圏における最先端サイド(いわゆる技術立国)となっている。ただし同時に、かつて独立国であった気愾もあり、連邦に対し快く思っていない勢力も未だ存在していた。
このため、宇宙世紀0140年代以降の『宇宙戦国時代』においては、地勢的にも、軍事技術面でも取り残されていたのが皮肉にも平和をもたらしていたが、ザンスカール戦争終結後の宇宙世紀0169年頃には、反転して戦乱続きとなった事で、地球圏の荒廃及び全宇宙レベルでの技術力の低下の煽りをまともに受けてしまい、サイド3はかつて長年にわたって反連邦のシンボルであったこと、特に地球連邦政府に対するスタンスの違いから、数基のコロニー毎にザビ・ジオンなどの4つの勢力に分裂し、互いによる抗争や独裁政治の横行で生活環境は悪化、住民も極度に疲弊してしまっている。
関連項目
国政関係者
モナハン・バハロ(外務大臣)
軍属
ゾルタン・アッカネン(大尉)
エリク・ユーゴ(中尉)