「機動戦士ガンダム オレら連邦愚連隊」は月刊ガンダムエースにて2007年から2009年まで連載された作品。完結した同年には続編『機動戦士ガンダム カタナ』の連載も開始している。
作者は曽野由大、脚本はクラップス。
『機動戦士ガンダム 戦場の絆』の利用促進を担っている面もあり、主人公機ジム・ストライカーのプラモデルには本作の主人公ユージ・アルカナの名前が記載されている。他にはゲーム関連とのコラボやその他書籍にも本作の出来事が載っていたりと半ば公式作品として扱われている。
人物一覧はネタバレを含む
概要
舞台を一年戦争とした作品。作業用ザク、ジム・スナイパーカスタム等が登場する等かなりマニアックなMSが登場する作品としても有名。
ガンダムタイプの登場が少ないことでも知られる
ストーリー
時は一年戦争、ホワイトベース隊によりガルマ・ザビ大佐が戦死した頃から始まる。
主人公「ユージ・アルカナ」はカナダのトロント基地に所属する元プロボクサーのエースパイロット。
彼はある日、ジャブローより新設されたMS教導部隊、通称「ネメシス隊」に配属を命じられる。
連邦とジオンとの戦いが終局を迎えつつある中、大いなる陰謀が動き始めていた・・・。
部隊説明
ネメシス隊
地球連邦軍将校のデノーメル准将が創設したMS教導部隊。
部隊紋章は「翼持つ獅子」
連邦のMSパイロットへのMS操縦教練や訓練の仮想敵(アグレッサー)を主任務とした部隊であるが有事の際には実戦にも出撃も許可されている。
操縦教練を指導する立場故、所属するMSパイロットの腕は確かなメンバーで統一されている上に配備されているMSもどれも最新型のMSばかりで戦力は充実している。
MSのカラーリング、部隊の軍服は黒を基調としており、特殊部隊然とした風格がある。
MS部隊パイロットは指揮官であるサキ・デッサウ少佐がスカウトしたメンバーで揃えられており何れも精鋭揃いである。
スレイプニール隊
量産機のみで「V作戦」の検証、研究を行う「V作戦評価試験部隊」
「ガンダム」に相当する前衛をジム・ライトアーマー、「ガンキャノン」に相当する中距離支援をガンキャノンⅡ、「ガンタンク」に相当する火力支援兼部隊指揮をガンタンクⅡが担当し、V作戦によるMS運用戦術の検証を行っている。
ガンタンクⅡのMSパイロットでもある、ショーン・キャシティ大尉が部隊の指揮官を務める。
メカニック
地球連邦軍
ジオン公国軍
登場人物
地球連邦軍 ネメシス隊
ユージ・アルカナ
本作の主人公である連邦軍所属の中尉。カナダのトロント基地に所属しているが、後にネメシス隊にスカウトされる。詳しくは該当項目にて。
ホーク・ロイザー
ネメシス隊の最年長者であり同隊きってのベテランパイロット。階級は大尉。
作戦時のコードネームは「プレジデント」
かつてMS相手に分が悪いとされていた航空機のトリアーエズでジオンのMS部隊を翻弄する等の高い戦果を挙げた事から連邦宇宙軍では「東の鷹」と呼ばれた凄腕。
ネメシス隊では前線の戦闘部隊の指揮を担当している。
腕は確かだが常に葉巻を咥えている愛煙家であり、普段から威圧的な態度で接し性格も尊大。美女に目が無く見つけては口説くなど女癖の悪い人物である。
教官として接する事もあるが、自分に意見したり舐めた態度を取る人物には実力行使を厭わない等やや問題がある人物。
実は極度の豆アレルギー持ちであり、一度口にすると凄まじい腹痛、下痢に襲われる体質を持つ(しかし工業用メチルアルコール入りの酒を飲んでも全く影響が無く、寧ろ美味しそうに飲むなど極端な体質を持つ。)。
口はかなり悪いが、ユージの潜在能力を初期から見抜く等パイロットを見る目は確かなものがある。詳細は不明だが「ネメシス四十八手」と言われる奥義を体得しており、度々戦闘を有利に運んでいる。
作中でも空挺降下したジムのパラシュートユニットを集弾性が期待出来ないブルパップマシンガンで狙撃しパラシュートを展開させるなど並外れた腕を持ち、ガンダム・ピクシーとの戦闘でも深手を負わずに終始対応する等エース揃いのネメシス隊でも一流の腕を持つ。
乗機はジム改(作中では「ジム後期型」と呼ばれている)
ジャン・ディベビエ
作戦ではスナイパー、中距離支援を担当している。階級は中尉。コードネームは「エイプ」
顔立ちが整っているがキザな性格で、初期にはユージと対立していたが窮地に追い込まれた所をユージに救われて以来からは部隊の仲間として認める様になる。
かつて川で溺れた自分を助けようとした人物が、自分を助けて死んだという過去があり、それをトラウマにしている。
歳はユージとさほど変わらないくらい若いが、部隊にいる期間はユージより長くロイザー大尉との連携は完璧であり、優秀な腕を持つ。
初期には量産型ガンキャノンに搭乗していたが、後に大破。代わりにジム・スナイパーⅡに乗り込む。(作中ではジム・スナイパーカスタムⅡと呼んでいる)
エリンスト・ポノワ
ホバートラックで情報支援、索敵支援を担当している。階級は中尉。
コードネームは「コックローチ」
ネメシス隊の実働部隊では唯一の女性である。かなりの美人であるがアルカナの好みでは無かった模様。
過去に自分が支援していた部隊で、事故を起こした隊員を救え無かったことを後悔しており、影をおとしていた。事件の事で思い詰め、軍を辞職しようと考えていた時期にデッサウ少佐からのスカウトを受けネメシス隊へ配属される。
ダグ・キーソン
大柄の黒人パイロット。階級は中尉。コードネームは「コング」
メガネをつけており、基本無言。(筆談で会話していた。)
かつて僧侶をしていた為かエルスワーズ基地での戦死者慰霊式の際には司祭を務めている。
更に霊能力があるようで、基地で迷子になっていた飼い犬の居場所を一発で突き止めた。
シアトルMS試験場にて急襲してきたガルマ専用ザクらの襲撃からユージを庇い、戦死した。
乗機は量産型ガンキャノン
イーグル・ロック
ネイティブ・アメリカンの血を継ぐ航空機パイロット。階級は中尉。
ポノワ中尉に惹かれていた模様。追手のGアーマーを撃墜すべく、自身のライトライナーもろとも特攻し、戦死したかに見えたが、最終回にて生存が確認された。
タラ・I・キケロ
ネメシス隊に属する技術士官。メカニック担当。
ユージの荒い操縦で損傷が激しいジム・ストライカーを的確に修理していた。
その技能の高さとは反対に非常に大人しく気弱な性格であり、緊張すると嘔吐するという奇妙な癖がある。
しかしその正体は連邦軍の戦争継続派と結託し、戦争を泥沼化させる計画に参加していた元ジオンの戦闘工作員であり各地でジオン地上軍を扇動していたガルマ専用ザクⅡのパイロットでも在った。
意図的にジオンと連邦の戦争を長引かせ戦局を混乱させる為にあらゆる方面で暗躍していた。
前述した「大人しく気弱な性格」というのも演技でありジオンのマラナシア・アージャ少佐に捕らえられた際に「チビ助」呼ばわりされた直後に襲いかかり、彼の顔にナイフを突き立て大きな傷痕を残し彼と彼の部隊を配下にするなど残忍な本性が現れる。
以降はキャリフォルニア・ベースにて「ガルマ・ザビ大佐は未だ生存しており、自分は大佐から全権を委任された遣い」という肩書きを騙り、連邦との和平交渉に応じる動きを見せていたキャリフォルニア・ベース所属の部隊を扇動し和平交渉から一転して徹底抗戦の構えを取る様に仕向けている。
そしてキャリフォルニア・ベース司令のグエイドン参謀と連邦軍ヨゼフ・トラバートン中将の和平交渉の場に熱核融合炉を満載したザンジバル級を特攻させ2人を殺害。和平交渉の機会を潰し直後にガルマ・ザビに(彼の声帯模写で)なりすましジオン地上軍残存部隊に再度武装蜂起を起こすよう促す演説を放送し、更に当初は手を組んでいた連邦軍戦争継続派のウェイン中将を裏切って第二のザンジバル級による自爆攻撃を連邦軍にも行おうとしていたがそこにユージが駆るジム・ストライカーが現れ交戦。
かつて自分が整備していたジム・ストライカーとユージの戦い方は熟知しており彼を追い詰めるがコルテスが駆るガンダム・ピクシーからの背後の奇襲を受けガルマザクが大破。
ユージが死闘の末にコルテスを倒し後に彼に確保される。
単行本最終巻にてサキ少佐の恩師である思想家、タマーム・シャマランの孫で在った事が判明し、彼の過去も明らかに成った。
子供の頃から地球出身である事を理由に当時住んでいたサイド3でいじめを受けており、父は無職で一日中酒に溺れるばかりという荒んだ時代を過ごしており、スペースノイドへの忠誠心を示すことでジオン市民権を得ようとジオン軍に入隊。しかし所属していた部隊はジオン上層部の判断で見捨てられ連邦軍の捕虜となる。そのジオン時代の上官こそグリー・グエイドン参謀だった。
捕虜収容所でウェイン中将の目に留まり「ともにジオンと連邦軍の架け橋になろう」と誘われ計画に参加するもやがて自分がその計画の捨て駒に過ぎないことを悟り、連邦とジオン双方にアイデンティティを見出すことが出来無く成り自分を見捨てたジオンと連邦、つまり世界への報復を目指す様になる。
余談だが身長がユージよりやや小さく、低身長であることがコンプレックスなのか作中で本性を表した際に「俺をチビ呼ばわりして三日と生きた奴ぁいねぇ」と発言しているが、このセリフは「蒼き流星SPTレイズナー」の登場人物であるマンジェロがほぼ同じセリフを言っておりこの時のマンジェロのセリフが元ネタである可能性がある。(マンジェロ自身もナイフを使っている。)
サキ・デッサウ
ネメシス隊の指揮官。階級は少佐。冷静沈着で思慮深く、咄嗟の戦闘の際にも的確な指揮を執る。表情の変化が非常に少なく、笑顔を見せた描写は一切無い。
士官候補生時代の頃は普通の青年という感じで感情表現も現在よりは多かったがどのようにして現在の様な冷静さを持つに至ったかは最後まで明らかにされなかった。
指揮官としての才能は優秀であり、エルスワーズ基地でのジオン軍急襲の際には迅速に指揮系統を回復させ、戦線を再構築。戦局の立て直しを成功させるなど非凡な指揮の才を見せた。
士官候補生時代に思想家「タマーム・シャマラン」に惹かれ、シャマラン思想に賛同する。
しかし、周りの同僚からは「古い考え」と言われ、出世コースを外されている。
エルスワーズ基地での戦闘後、民間人よりも高級官僚の保護をユージに命令した際にはユージに「守るべきものが違う」と激怒され、自分が忘れていた精神を思い出す。
その後ネメシス隊に「ジオン軍と共に連邦の友軍を襲撃した」、「ジオン軍と内通していた」とする不当な嫌疑が掛けられた頃にネメシス隊が何らかの政治的圧力や陰謀に利用されていると見抜き、ネメシス隊有志らと共に連邦軍から脱走する。その後連邦内部の陰謀を暴いた事で自分達の正当性や潔白を証明し、終戦前には連邦軍へ復帰している。
事件が収束した後には事件解決に奔走したユージを「私を目覚めさせたゾンビー」だと信頼の言葉を残している。
過去にプロボクシング選手時代のユージを試合で観戦した事があり、その荒々しい戦いぶりを見て「背筋が凍った」と評している。
スレイプニール隊
ショーン・キャシディ
スレイプニール隊隊長。階級は大尉。ホーク大尉の「東の鷹」と対を為す「西の龍」の異名をとるエースパイロット。
ホークとは旧知の仲であり、昔はともに作戦に従事していた模様。
WB隊で言う「ガンタンク」に当たるガンタンクⅡで支援砲撃、対空砲火を行う
カート・ワーグ
中距離支援、火力支援を担当する。階級は中尉
作中ではあまり出番が無く、これと言った活躍も無い。WB隊で言う「ガンキャノン」
に相当するポジションを担当していた。
乗機はガンキャノンⅡ。因みに肩のビーム・キャノンは作中一回も使われていない。
スハン・ヤンセン
格闘、白兵戦を担当する。階級は中尉。
部隊ではジム・ライトアーマーに搭乗し、「ガンダム」のポジションを担当している。
歳は若く、ルックスも良い為モテている描写があるが常に気だるげで、口癖は「萎えるなぁ」。
前衛での白兵戦を担当する事から操縦技術は卓抜しており乗機のジム・ライトアーマーに搭乗し、レニア山にてガルマ専用ザクに扇動されたジオン敗残軍を一機だけで圧倒した。自分と同等の実力を持つパイロットと対峙すると戦闘に積極的になり、周りが見えなくなる。
その他の連邦軍人
コルテス
連邦陸軍所属のMSパイロット。階級は中尉。ウェイン中将の身辺警護を行うこともある。
外見は浅黒い肌で無表情、無口だが、戦闘の際には一変して饒舌、感情的になる
彼も過去にプロボクシング選手だった頃があり、当時のユージとの対戦を熱望していた。
性格は極めて残忍。人を殺す事に快感を覚えている戦闘狂。戦闘の際にもジオン兵が乗る機体にビームダガーを突き立て、じっくりとジオン兵パイロットの悲鳴を聴いており、ユージ曰く「サイコ野郎」「殺人鬼」
ウェイン中将の命令のもと、ネメシス隊抹殺の為に行動していたが本人はユージと戦いたかっただけであり、ウェインらの計画はどうでも良かった模様。
その証拠に「オレは誰の政治ゲームにも興味は無い」と発言している。
ジム・スナイパーカスタム、Gアーマー、そしてGアーマー内に格納されていたガンダム・ピクシー等の特殊機を巧みに操りネメシス隊を苦しめた。
作中でユージを除いたネメシス隊とスレイプニール隊の連合部隊を単独で相手にし、集中砲火を受け撃破されたと思われていたが、これを全て撃破しユージを追撃しているなど恐ろしい操縦技術を持つ。
因みにネメシス隊、スレイプニール隊の全メンバーは生存している。
最期はユージのジム・ストライカーにコクピットをボクシングさながらのアッパーで潰され機体もろとも爆散し死亡。
ピーター・フォード
陸軍大佐。サキ少佐とは士官学校時代の親友。娘のシェリー・フォード少尉はMSパイロットをしている。
シャマラン派であったが、後に転向するもサキ少佐との友好な関係は続いている。
豪快な性格で、ユージを高く評価している。サキ曰く「陰謀に加担するような人物ではない」
バリーズ
連邦軍エルスワーズ基地司令官。小柄な猿の様な体格で出っ歯の人物。階級は大佐。
部下には尊大だが、目上や上官には媚びへつらい、自己保身に終始する軍人でエルスワーズ基地襲撃の理由を咎められた際には咄嗟にサキ少佐に押し付けるなど軍人としての資質に疑問を持つ。
基地襲撃の際にも右往左往するばかりでサキ少佐の活躍がなければ間違いなく基地は陥落していた。
その後はデノーメルの仲裁により真実が明るみされ、バリーズは基地襲撃の責任を問われ降格、ジャブローの戦略分析課に左遷された。(本人は栄転と喜んでいた)
ヨゼフ・トラバートン
連邦宇宙軍中将。レビル将軍に次ぐ和平派の巨頭で戦争の早期集結を悲願としていた。
レビル将軍と同じくMSに対し先進的な考えを持ち純粋に戦争の早期集結を願っていた様であり、かなり良識的な軍人で在ったことが推測出来る。
ジオンのグエイドン参謀との和平会談の際にタラの策略によりザンジバル爆弾を投下され戦死した。
デノーメル
連邦軍准将。ネメシス隊の創設者であり、多方面からネメシス隊を支援していた。
が、その正体はタラ・I・キケロやジオン敗残兵などを巻き込んで戦争の継続を目論んでいた。最終的には地球を荒廃させ、最終的には宇宙のコロニー主導による地球の経済支配を画策していた。
彼もまたシャマラン思想に賛同していたが、彼の考えにより歪曲された。
この計画をデノーメルに聞かされたサキは怒りのあまり彼を射殺しかけた。
ウェイン
連邦陸軍中将。スキンヘッドが特徴的。
戦争継続を主導し、地球上での利益独占を目論んでいた。ネメシス隊を始末させる為に策を弄した
デノーメルとは協力関係だったが、計画が進みに連れ邪魔とされデノーメルに射殺された
ジオン軍人
マラナシア・アージャ
ジオン軍少佐。常にキシリア少将の様に紫のマスクを身につけている。
ジオン敗残兵を擁し、ガルマ専用ザクの正体を探ろうとしていたが、その目的は連邦軍に将校として出世する為であった。
確保したタラから反撃を受け、顔に大きなキズ痕を残す。
搭乗機は黒いグフ
グリー・グエイドン
ジオン軍参謀。かつてタラがジオン軍人だった頃に置き去りにされた作戦の責任者で在った。ジオン三羽烏に数えられ、和平運動に参加していたが、策略に巻き込まれ死亡する
その他の人物
タマーム・シャマラン
アースノイドとスペースノイドの共存を唱えた思想家。作中では既に故人であるが、サキ、デノーメル、ピーター等の多数の連邦軍人に多大な影響を与えた高潔な人物。
士官学校時代のピーター、サキらの恩師でもある。
ジオン・ズム・ダイクンと面識があったようで、ジオニズムに対する思想の草案を発表する直前で反対派に暗殺された。
サキはシャマランの護衛にあたっていたが、救えなかったことを今も悔やんでいる
豊富な頭髪を持つが実はカツラであり、たまたまそれをみてしまったサキ、ピーターはステッキで殴打された。