あらすじ
国連が主催し、火星で行なわれたコズミック・カルチャー・クラブ(宇宙体験教室)に選ばれた少年少女達は、謎の人型機動兵器・SPTの集団に攻撃された。多数の犠牲者が出る中、1機のSPTに乗った少年が彼らの窮地を救う。そして少年は名乗った。
「僕の名はエイジ。地球は狙われている!」
アルバトロ・ナル・エイジ・アスカというその少年は、攻撃を仕掛けているのがグラドス星という異星の軍隊であること、自分はそのグラドスと地球の混血であり、父親の故郷である地球の危機を知らせるために脱走してきたのだと告げる。
作り話だと疑う者、友人を失ったやり場のない怒りをエイジにぶつける者、エイジの真剣な瞳を信じようとする者など、少年少女達の心も様々に乱れる。だが度重なるグラドスの攻撃から、命がけで彼らを守ろうとするエイジとの間に、徐々に信頼と友情が生まれてゆく。
概要
リアルな設定と、スーパーな演出
サンライズが制作したオリジナルのリアルロボットアニメ作品の一つ。1985年10月から日本テレビ系列局の一部に加えてテレビ朝日系列局約2局(ただしいずれも後に日本テレビ系列局にネットチェンジ)にて放送された。また本放送終了後、宮崎放送(TBS系列局)にて、夏休み集中放送という形で放送された。
東西冷戦時に製作されたこの作品では、舞台設定の西暦1996年になって人類が宇宙に進出するようになっても、米ソが対立を引きずったままであるということになっている。そんな中でのグラドス軍の襲撃は、まさか異星人の侵略とは思わず「アメリカの仕業だ」「いや、ロシアがやったのだ」などと、両国関係者や子供達が疑心暗鬼に陥るなどのリアルな描写がなされ、混血児でありながら戦争を止めさせようと奔走するエイジの姿は、人種などにこだわらず平和を願う一般市民の象徴であり、東西大国に対するアンチテーゼでもあった。
(なお現実世界では、1991年にソ連は崩壊し冷戦は終結した)
一方で、本作は「リアルロボットアニメ」のジャンルにありながらも、必殺技(V-MAX)を備えた主人公メカ、しばらく途絶えていた敵メカの名称・型式番号がテロップで表示される演出の復活、音声によるパイロットと機体のコミュニケーションなど、いわゆる「スーパーロボット」的な"活劇"にも力が入れられており、特に第2部ではその傾向が顕著になった。
これは高橋監督の前々作『装甲騎兵ボトムズ』で、「リアルはやり尽くした」と感じ、また異なる「ロボットアニメの面白さ」を追求したためともいわれている。
本編以外の部分では、主題歌「メロスのように」のサビの部分で、当日放映分のハイライトカットが挿入されるという、新たな演出も試みられた。
不遇の名作
そうした大胆かつ意欲的な設定・演出で放映が開始された本作は、ファンからは好評を博し、当時の各アニメ雑誌でも度々特集が組まれ、別冊・増刊も数多くリリースされていた。視聴率でも健闘し、社会現象になった「夕やけニャンニャン」(フジテレビほか)が裏に控えながらも、2桁に達する回もあったという。
しかし、いわゆる"物販"では苦戦し、スポンサーの降板やプラモデルの売れ行き不振などの不運が重なり、第38話で打ち切りになってしまう。打ち切りの決定は唐突だった模様で、最終話は打ち切りを前提としたものではなく本来のシナリオ構想通りの最終話が製作・放映されるという異例の処置が為されており、前話である第37話で大破したレイズナーが完全修復されていたり地球側のSPTがいきなり量産されてグラドス軍に立ち向かうなど、完全に途中の経過を省略した形のものになっていた。省略された部分は後にOVA作品によってフォローされる事になる。
打ち切りの悪印象で、ともすれば「失敗作」と見做されがちだが、上記の通り、大胆な設定、斬新な演出から、放映当時はむしろ視聴者の人気は高く、今でも根強いファンの支持を得ている。
当時は既に、ロボットアニメのブームに陰りが見え始めており、『Zガンダム』から『ZZ』の路線がやや迷走気味で、旧作ファンから批判を集めがちとなっており、後継となった『機甲戦記ドラグナー』も大きな成功を得られず、リアルロボットアニメは一旦、幕引きを迎える。その後のアニメ・コミックのブームを牽引したのは『北斗の拳』、『聖闘士星矢』、やや遅れて『美少女戦士セーラームーン』といった「等身大のヒーローもの」であり、以後も「ガンダム以外のリアルロボットは売れない」という評価が長く定着していた。
スーパーロボット系では、1990年スタートの『勇者シリーズ』が命脈を保ち、リアル系でも『機動警察パトレイバー』など中興の祖が現れたものの、本格的にリアルロボットアニメが活気を取り戻すのは、『エヴァ』のリリース後となる。
(余談だが、『レイズナー』と相前後して『超攻速ガルビオン』『忍者戦士飛影』『ワンダービートS』など、理由は様々ながら、TVアニメ作品の打ち切りが相次いでいた。作品的にも市場的にも、TVアニメは飽和状態に陥っていたのかもしれない。加えて、この"冬の時代"には、アニメ雑誌の多くも休刊・廃刊に追い込まれている)
『レイズナー』には、時代が味方しなかった(リアルロボットアニメの終焉期にスタートしてしまった)という、不運もあったのかもしれない。
キャラクター
メカニック
SPT-LZ-00X レイズナー
E-SPT-LZ-00X-B V-MAX 強化型レイズナー
E-MF-LZ-00X-2 レイズナーMk.Ⅱ
E-SPT-DL-X ドール(ロードテイラー)
SPT-BB-02U ベイブル
SPT-BD-03U バルディ
SPT-GK-10U グライムカイザル
SPT-ZK-53U ザカール
スタッフ
主題歌
オープニングは間奏部分でその回のダイジェストが入る演出がされていた。
タイトル | 作詞 | 作曲 | 歌 | |
オープニング | メロスのように -LONELY WAY- | 秋元康 | 中崎英也 | AIRMAIL from NAGASAKI |
エンディング(-25話) | 5分だけのわがまま | 秋元康 | 中崎英也 | 富沢聖子 |
エンディング(26話-) | LA ROSE ROUGE | 河奈みその | 林哲司 | 富沢聖子 |
関連イラスト
関連動画
関連タグ
超獣機神ダンクーガ 葦プロ製作のスーパーロボットとリアルロボットのリミックスと、打ち切りの共通点繋がり
忍者戦士飛影 ぴえろ制作で同時期に同一放送局で放送されたロボットアニメで、偶然にもほぼ同時期に打ち切り等、共通点が多い。
鎧伝サムライトルーパー 当時サンライズは後に鎧伝サムライトルーパーとなる企画書を本命としていくつかの企画書をスポンサーに見せたらしいが「サンライズに足りてないのは地球の危機です!」の一言で本作に決まったとスタッフコラムにて語っている参考。ただし企画初期は後のサムライトルーパーより『戦国BASARA』に近いものであったともいわれる参考。