プロフィール
概要
私立月臣学園高等部の1年生で、長めのもみあげと耳のピアスが特徴。
ある時学園内で起こった事件の犯人にされてしまい、自力で解決へと導いたのだが、それを機に失踪した兄・鳴海清隆が関わっていた「ブレードチルドレン」と呼ばれる子供たちを巡る問題へと関わっていく。
人物像
学力や運動もそれなりに優秀で、特に推理力・判断力・洞察眼に優れる。
生活適応能力が高く、趣味の料理はかなりの腕前であり、失踪前の兄や現在の義姉・鳴海まどかの生活管理をしている。
飄々としており、性格はクール。友達は少ないらしい。しかし冷徹というほどでもなく怒る部分は怒る。
小学生時代には「天使の指先」という異名をとるピアニストとして名を馳せた事もあるが、表舞台から消えて久しい。
と言うのも、彼は「何をしても兄・清隆の劣化コピーのようになってしまう」という劣等感を抱いており、ピアノはそれを自覚する切っ掛けとなったものだからである。もっとも、そうした感情を抱くまでは熱中していたのも事実であるため、諦めきれずに時折人知れず弾いている。この『兄の劣化コピーのよう』というフレーズは原作のストーリー上で大きな意味を持っている。
この事が相まって、あらゆる事に高い能力を持ちながらも自分自身をアッサリ「無価値」と断じる、自己肯定感が皆無であり同時に自己否定にひたすら邁進するという、タチの悪い最悪の自虐癖の持ち主である。そのため歩は決して自らを愛することが無い。そして物語の終盤になると常人離れした強靭な精神力で話を進めていく。
ぶっちゃけてしまえば「必要と感じたならば自分で自分を地獄に叩き落とす事に躊躇が無い壊れた人間」であり、その事は本作のテーマを貫く大きなカギとなっている。
最初の事件が切っ掛けで結崎ひよのに絡まれる事が多く、どこにいても探しだされるため、観念して新聞部の部室に通っている。
ちなみにスズメバチ毒のアレルギー持ちであり、蜂に刺されたらアナフィラキシーショックを起こす体質である。
関連タグ
鳴海清隆 結崎ひよの 竹内理緒 浅月香介 アイズ・ラザフォード 鳴海まどか ミズシロ火澄
※ 以下、ネタバレ
出自(ネタバレあり)
歩君は…あの子は最初から
清隆の犠牲となるために
奪われるために造られたのよ
あの子にとって奪われることは……
母親に決められた運命だったのよ…!
その正体は鳴海清隆のクローンであり、年齢に2桁の差がある双子のテストボディである。
鳴海兄弟の母親は自身が不慮の事故と、その後の治療でピアニスト生命を絶たれた過去から、名声のあるピアニストとなった息子・清隆の音楽家生命を案じ、清隆の体のどこが悪い(先天的および後天的な身体的インシデントの走査)のか、清隆の体に何が悪い(アレルギーや薬物副反応を見つけ出すための反応試用)のか、そして清隆が怪我をした部位を移植するための存在として歩を生み出したのである。
(上述の蜂毒アナフィラキシーショック体質も、清隆が蜂毒に弱い体質かどうかを調べるため、両親によって「意図的に」発現させられた可能性がある)
歩が『清隆の劣化コピーのよう』なのも生み出された理由から必然であり、そもそも清隆に奪われるために生まれてきた存在だった。故に清隆がピアニストを引退した時点で鳴海兄弟の母親にとって歩の存在価値は無くなり、父親はそんな歩を哀れみの目で見ていたのである。
更に歩の対となる「悪魔の弟」ことミズシロ火澄と共に世界初のクローン人間であるため、技術的にはまだ欠陥が多く不完全であり、20歳まで生きられない運命を背負っている。
また清隆自身が無精子症であるため、クローンである歩も同様と考えられる。(その意味においては火澄以上に救いの道が限られている悲壮な存在とも言える)
歩と境遇を同じくする者は火澄をおいて他に存在せず、ブレードチルドレンより遥かに惨酷な運命を背負っている存在であった。
最終的には全ての真実を知った上で、絶望の中で希望になる選択をする決意のもと、自らの同類である火澄の存在を、すなわち自身の救われるべき希望と救いの手を全て切り捨て、自身「オリジナル」たる清隆との対決に勝利する。
だが、それは歩を支え続けた「あんた」との別れでもあった。「あんた」は元々、清隆が歩の心を折るために仕向けた存在であり、そして歩がブレードチルドレンたちに救いをもたらすためには、自らを支えるものを全て捨てなければならなかったのである。
最後に歩は「あんた」との希望で彼女と握手を交わして離れた。後に残った「あんた」は人を救うために、あえて救いの無い地獄へ向かう歩の姿を見送りながら、歩の事を大事に思うがゆえに大粒の涙と共にその場に崩れ落ちたのだった。
それから2年後には不完全なクローンであることの代償である身体の崩壊が始まっており、入院生活を余儀なくされ、左腕も動かなくなっている(目が見えなくなることもあると発言している)。
他人(特にブレード・チルドレン)の幸福のために自ら残酷な運命を歩み続けることを選び、自らが絶望の道に墜ちながらも決して未来を見失わない事、その事自体を自らの希望に転嫁して最期の瞬間まで駆け抜け続けたのである。
歩の選んだ結末は、傍目から見たならばハッピーエンドとは言い切れないものであるかもしれない。だが、それを選んだのは歩自身である。少なくとも彼は自らの選択に「痩せ我慢」ではあってもソレを張り続けた。
少なくとも、彼が選択をもって選び取ったものをバッドエンドと断じる事もまた、できない。なぜなら、そうする事によってようやく彼は「やっと俺の音楽を取り戻した」のである。それ自体は歩自身にとっては最も幸福なハッピーエンドとも言えるものとも言い切れる。
ゆえに、この結末をハッピーエンドととるかバッドエンドと取るかもまた、読者諸氏に委ねられている。その判断に関しては、あらゆる視点が残されており、それゆえに正解など無いとも言える。
そして『スパイラル』の物語は、自分の前に再びやって来た「あんた」に「取り戻した音楽」を聞かせることで、不確定な救いを強いて謳い終わるのだった。
ちなみにアニメ版ではカノン編で終わっているため、鳴海歩がクローンであるという設定も語られることもなかった。