人は何かの犠牲無しに 何も得ることは出来ない
何かを得るためには 同等の代価が必要になる
それが 錬金術における等価交換の原則だ
その頃 僕らは それが世界の真実だと 信じていた
概要
基本情報
2003年から2004年にかけて、MBSホスト・TBSほかの土曜午後6時枠(土6枠)で放送されたテレビアニメ版『鋼の錬金術師』のこと。
1年間(4クール)に渡って放送され、社会現象を巻き起こす大ヒット作となった。
元々高かった原作の人気を更に押し上げたのはこのアニメ化が大きい。
キャッチコピーは「取り戻せ、すべてを。」
スタッフ
原作 - 荒川弘(掲載 月刊「少年ガンガン」スクウェア・エニックス刊)
監督 - 水島精二
ストーリーエディター - 會川昇
キャラクターデザイン - 伊藤嘉之
メインアニメーター - 杉浦幸次、富岡隆司
プロダクションデザイン - 荒牧伸志
キメラデザイン - 石垣純哉
美術デザイン - 成田偉保
美術監督 - 橋本和幸
色彩設計 - 中山しほ子
撮影監督 - 福士享
音響監督 - 三間雅文
音楽 - 大島ミチル
音楽プロデューサー - 篠原廣人
プロデューサー - 南雅彦、丸山博雄、大山良
製作 - 毎日放送、アニプレックス、ボンズ
原作を別解釈した物語
本作は連載の序盤(当時の既刊はなんと6巻で、グリードがギリギリ登場したくらい)にアニメ化する事がいきなり決定したにもかかわらず、放送期間が1年であった為に、いずれ原作のエピソードを追い越す事は明らかであった。
その為、序盤から原作を一部なぞりつつも独自の物語が展開され、放送当時原作ではまだ明かにされていなかった真実に原作とは異なる解釈や答えを出し、結果的に原作とは全く異なる世界観の作品として完結した(原作と同じならアニメ化する必要がないと、違う展開と結末になる事は原作者にも了承されていた)。
この為、特に物語の後半は(後に原作終盤に差し掛かった段階で放送開始され、あくまで原作準拠で制作されたアニメ『鋼の錬金術師FULLMETAL ALCHEMIST』とは異なり)、ほぼ100%アニオリと言って差し支えない内容となっている。
この原作準拠のアニメと区別する形で、本作は「一期」、「旧鋼」、「無印」、「2003年版」、「水島版」(監督の水島精二から)、「會川版」(脚本家の會川昇から)といった呼び方がされる。pixivでは旧鋼が一般的。
なお原作では後で明かされる設定がこちらで先に出ている事もある(ホムンクルスの再生には回数の限界があること、遠隔錬成、エドが冬生まれという設定他)。さらに原作でやる筈だったネタがこちらで先に出るという事もあった(マスタングの無精髭や、手の甲に直接血で錬成陣を描く展開等)。なので原作とは別物とは言っても、先に見ると一部原作のネタバレになる部分もある。
ダークファンタジーとしての高い評価
この手のアニメオリジナル展開にありがちな駄作扱いされる事は非常に少なく、持ち味を最大限に生かして、原作以上にダークファンタジー色を濃くした傑作として高い評価を獲得し、数多くの賞を受賞。
原作漫画がダークな要素がありつつも芯が王道な少年漫画であったのに対し、本作は少年誌では不可能なほどのダークさやビターさを強調したドラマとなっている。それゆえに原作以上に救いが無い展開も多いため、かなり見る人を選ぶ作品でもある。
しかし「オリジナル要素の強い第一期」は概ね後のメディア化にハードルが生じることが多く配信終了や絶版化されるケースも多い中、本作は黒歴史扱いされるような事も全くなくFAの放送後にBOX化されたり、AmazonプライムビデオでもFA版と両方が配信されたりしたりと、人気と評価の高さが裏付けられている。
原作者は暴行を匂わせる描写は許容すべきでなかったと口にしつつも、それを除けば本作を殊更悪く言っていることはない。
作画・音楽・声優
FA版と同様に評価が高い。
今でも、「『ハガレン』のOPと言えば、旧鋼最初のOPであるポルノグラフィティの『メリッサ』だ」という人や、「マスタング大佐の声優と言えば大川透だ」という人も多いだろう。特に音楽と声優に関しては、未だにFAよりも本作のイメージが強いファンが多い。
余談だが、本作に出演している声優陣の中で前番組機動戦士ガンダムSEEDでも出演していた人が多くみられる。
極端な例を挙げればSEED最終話で銃殺されたコーディネイター側の独裁者や主人公があと一歩の所で救えず無念の死を遂げたヒロインの声優が、一週間後には教祖様と最初にエルリック兄弟と会話するネームドヒロイン役として出てるなど。
原作初期を反映した繊細な絵柄も、ビターな作風に合っているとよく言われる。
原作では中盤〜後半にかけて物語の高まりに呼応するかのように絵柄が力強くなっていった。例えば「低身長」のイメージが強いエドだが、原作では途中で少しずつ身長が伸び逞しくなっている様子が描かれている(作中でも低身長ネタで弄られながらも、身長が少しずつ伸びている事や背中が大きくなった事にも触れられている)。
ゲーム版・小説版
なお、本作をベースにしたゲームは複数個登場しているが、第1作『翔べない天使』は、アニメ放送前から企画されていた為に、原作及び旧鋼双方と繋がる派生作品となっており(時系列は旧鋼がほぼ原作通りのストーリーをなぞっていた序盤のエピソードである為に、どちらの派生作品でも矛盾はない)、第2作『赤きエリクシルの悪魔』は、旧鋼のIFストーリーに当たる物語である(原作とも旧鋼とも違う方向に明確にストーリーが分岐する)。第3作の『神を継ぐ少女』は完全な旧鋼の派生作品であり、ウィンリィがラッシュバレーで修行を始めた後である事が判明している。
加えて井上真の小説シリーズは、基本的には原作の派生作品だが、一部の小説のエピソードやキャラが旧鋼本編に逆輸入されている(さらに彼らは旧鋼本編で重要な役割も担っている)。
本作独自の設定
これらの設定は旧鋼のみの設定であり、原作とは異なる。
キャラクター
- 原作には登場しないオリジナルキャラクターが一部登場する。また、原作と同じ名前だが外見からして違うキャラ、原作と外見はほぼ同じだが性格が多少なりとも違うキャラが多い。原作通りの外見・性格のキャラの方が少ない。
- 制作されたのが序盤なので、ロゼやシェスカ、ショウ・タッカーやバリー・ザ・チョッパーなど原作初期の脇役の出番が大幅に増えている。
- 逆にリン・ヤオを始めとしたシン組や、オリヴィエ・ミラ・アームストロング少将を始めとしたブリッグズ組などの原作の中盤以降に登場する主要キャラ達は、本作では当然ながら登場しない。
- 傷の男、イズミ、ティム・マルコー、ヨキといった、原作ではタフな人物として描かれ最後まで生き延びたキャラクターが、本作では儚い雰囲気の人物として描かれて死亡している。
時系列
錬金術
- 錬金術には術者の体力を使用する。無茶な錬成をし過ぎると過労で倒れる。下手をすれば動けなくなる。
- 上記のシステムにはある重大な裏要素がある。そしてそれは、真理の門の存在と大きく関わっている。
- 国家錬金術師の資格となる銀時計は持ち主の錬成能力を増幅させる。
- 「真理の扉」は「真理の門」と呼ばれる。
賢者の石
- 本作では純正の賢者の石が原作以上に希少な物となっている為(むしろそれを巡って争うストーリーである)、序盤で少しだけ登場した「未完成品の賢者の石」が、終盤まで何度か登場する。
- 賢者の石の錬成方法や材料も違う。原作の賢者の石の材料は人間の魂“だけ”だったが、本作では人間の血肉も材料として消費される(その点では、むしろ後の劇場作品である嘆きの丘の聖なる星に登場した「鮮血の星」に近い)。
- 傷の男の右腕の秘密が大幅に異なり、後半では自分の力で賢者の石を作ろうとする。
- その結果、アルが「生きた賢者の石」に錬成される。
ホムンクルス
- ウロボロスの刺青のデザインは原作とは少し異なる。
- ホムンクルス達は人体錬成された失敗作が成長したもの。従ってゼロから作られたグラトニー以外は「元となったモデル」がいた事になる。無論全員、物語開始時点では死んでいる。更にホムンクルスの体内にあるのは紅い石という賢者の石の未完成品であり、さらに本作放送時点では、まだ原作では全てのホムンクルスが登場していなかった関係で、一部のホムンクルスは別のホムンクルスに名前が変わっていたり、完全オリジナルキャラクターに置き換わっている他、原作とは各々の設定や背景や人物像等も大きく変更されている(人物像だけでもほぼ原作通りと言えるのは、グラトニーとグリードくらいである)。
- ラストが元となった人間の過去の記憶を思い出し、その後真実を知ってグリードと同様に組織から離反する。
国家・軍部
- アメストリス以外の国は示唆されない。
- イシュヴァール殲滅戦では、国家錬金術師全員に試作品の賢者の石(紅い石)が錬成増幅剤として配られていた。
- イシュヴァール殲滅戦が行われた原因である「軍人の誤射で内乱勃発」の経緯の真実も全然違う。
- ウィンリィの両親の死因も異なる。
登場人物
詳細は旧鋼のキャラクターの一覧を参照。
サブタイトル一覧
1 太陽に挑む者
2 禁忌の身体
3 おかあさん……
4 愛の錬成
5 疾走!機械鎧(オートメイル)
6 国家錬金術師資格試験
7 合成獣(キメラ)が哭く夜
8 賢者の石
9 軍の狗<いぬ>の銀時計
10 怪盗サイレーン
11 砂礫の大地・前編
12 砂礫の大地・後編
13 焔 vs 鋼
14 破壊の右手
15 イシュヴァール虐殺
16 失われたもの
17 家族の待つ家
18 マルコー・ノート
19 真実の奥の奥
20 守護者の魂
21 紅い輝き
22 造られた人間
23 鋼のこころ
24 思い出の定着
25 別れの儀式
26 彼女の理由
27 せんせい
28 一は全、全は一
29 汚れなき子ども
30 南方司令部襲撃
31 罪
32 深い森のダンテ
33 囚われたアル
34 強欲の理論
35 愚者の再会
36 我が内なる科人<トガビト>
37 焔の錬金術師/戦う少尉さん/第十三倉庫の怪
38 川の流れに
39 東方内戦
40 傷痕
41 聖母
42 彼の名を知らず
43 野良犬は逃げ出した
44 光のホーエンハイム
45 心を劣化させるもの
46 人体錬成
47 ホムンクルス封印
48 さようなら
49 扉の向こうへ
50 死
51 ミュンヘン1921
劇場版 シャンバラを征く者
主題歌
オープニングテーマ
「メリッサ」
歌 - ポルノグラフィティ
歌 - L'Arc〜en〜Ciel
「UNDO」
歌 - COOL JOKE
「リライト」
エンディングテーマ
「消せない罪」
歌 - 北出菜奈
「扉の向こうへ」
歌 - YeLLOW Generation
歌 - Crystal_Kay
「I Will」
歌 - Sowelu
関連タグ
機動戦士ガンダムSEED(2002年秋、2003年冬春夏)→本作(2003年秋、2004年冬春夏)→機動戦士ガンダムSEEDDESTINY(2004年秋、2005年冬春夏)