「恨みます」
概要
『鋼の錬金術師』本編開始から13年前に将校がイシュヴァール人の子供を誤射し殺してしまった事件をきっかけに、その後6年に渡って続いていたイシュヴァール内戦の最後の戦闘。
泥沼化している内戦を終わらせるためという名目でキング・ブラッドレイ大総統からイシュヴァール人を一人残らず殺害するという非人道的な命令が下されたことに端を発する。この抹殺の対象は、自治区の人のみならず、アメストリス軍に所属しているイシュヴァール人すらも対象としており、階級を問わず全員が拘束され、処刑された。人間兵器と呼ばれる国家錬金術師が実戦に投入され、彼らの圧倒的な力によりアメストリス軍はイシュヴァール自治区の完全制圧に成功し、同地区はその自治機能を失って滅亡。した
生き残った数少ないイシュヴァール人は国の内外に散り散りとなり、そこらでスラムを作り細々と生活することになってしまう。
また、この戦争によりイシュヴァール人のハーフはスパイ嫌疑がかけられ公職追放となり、1/2以上イシュヴァールの血を引く者は処刑された。ブリッグズ所属のマイルズは祖父(台詞から、おそらく母方)がイシュヴァール人だったが、祖母や父は別の民族であり、かろうじて軍の粛清規約から外れており、生き残った。しかし、今なお軍には複雑な思いを抱いている。
またウィンリィ・ロックベルの両親もこの戦争で命を落としており、またエドワードたちの故郷リゼンプールも、イシュヴァール人のテロに遭っている(軍に納める羊毛の産地だったため)。それを含めて本作の登場人物の多くに多大な影響を与えた最大の出来事として扱われている。
後にこの戦いのきっかけとなった軍将校がイシュヴァールの少女を殺害したという事件自体がエンヴィーが軍将校に化けて及んだ犯行であり、それによって起こった騒乱(イシュヴァール出身者粛清も含め)をエンヴィーと同じホムンクルスのブラッドレイが鎮めるという、もはやこの内乱そのものがいわば黒幕側の仕組んだマッチポンプのようなものだったことが判明している。
旧アニメでの設定
まだ原作で殲滅戦が描かれる前の放映のため、以下のようにオリジナルとは異なる設定が多い。
- そもそも射殺事件自体がでっち上げで、実際はデビルズネスト組(当時は軍特殊部隊配属、まだ人間である)によるイシュヴァール人集落襲撃が戦端。彼らは「イシュヴァールの過激派がアメストリスへのテロを目論んでいる」と真っ赤な嘘を吹き込まれ、大量のイシュヴァール人を殺害。口封じのため、襲撃事件に関与した将兵は全員が処刑or合成獣生成実験のモルモットにされた。
- 原作では賢者の石を使用した殲滅を行ったのはキンブリーだけだが、旧アニメではグラン、アームストロング、マスタングも使用して町ごとイシュヴァール兵を消し飛ばしている。
- グランが原作では登場前だった事もあり、極悪人という扱いとなっている。主要人物の関係者(ネタバレの為伏字)も部下だったマスタングに命じて射殺させている。それがトラウマで旧アニメのマスタングは銃を使えなくなっている。
- 第五研究所で合成獣生成実験を行ったのもグランである(原作でもグランが第五研究所の責任者という発言があるが、こちらは名目上の責任者だったようだ)。
- キンブリーの投獄理由は、味方も人間爆弾に変えたから。
- 原作とホムンクルスたちの黒幕の計画が全く異なるので、イシュヴァール殲滅戦勃発の真意も異なる。
- なお、誤射の張本人とされたジュリエット・ダグラスなる将校はでっち上げであり実際は存在しないか、とっくに死んでいる。そしてその軍籍を利用して大総統秘書官に成りすましたのがスロウス。
参加者
国家錬金術師
- バスク・グラン
- アレックス・ルイ・アームストロング
- ロイ・マスタング
- ジョリオ・コマンチ
- ゾルフ・J・キンブリー
- アイザック・マクドゥーガル(原作漫画でも、通信兵の台詞に名前が登場)
- リュオン・エッガー (小説版のみ登場)
アメストリス兵
- フェスラー(後ろからの流れ弾で名誉の戦死)
- マース・ヒューズ(旧アニメでは従軍せず)
- リザ・ホークアイ(士官学校に在籍中であり、正式な任官の前)
- ドルチェット
- マーテル
- ロア(原作でも戦線に参加しているのがわかる)
- ウルチ
- ビドー
軍医
民間人
イシュヴァール
余談
「戦争映画とかね。そんなのは見ないですよ。」
(『鋼の錬金術師』15巻作者コメントより、取材に応じたとある戦争経験者の男性)