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国家錬金術師とは、荒川弘漫画鋼の錬金術師』に登場する職業資格である。


概要編集

現大総統キング・ブラッドレイによって制定された「国家錬金術師制度」に基づいた、アメストリスにおける国家資格の一つである。それ故に実は国家資格としての歴史は意外にまだ浅い。


その名の通り、政府直属の錬金術師として国家に服従して研究を進めて、その見返りとして莫大な研究資金と様々な特権を与えられる。後述の銀時計は軍の口座から研究費を引き出す為のキャッシュカード代わりにもなる(軍の口座なので当然ながら軍が差し止める事もできる)。

また資格者の証として、各錬金術師の特性や得意分野を示した称号と、大総統府紋章の六芒星の入った懐中時計(旧アニメ版では銀時計が錬金技術の増幅装置の役を担っているという設定が追加された)を与えられ、自身の別称として「~の錬金術師」と名乗れるようになる。

作中に登場した錬金術師の殆どが国家錬金術師であり、国家錬金術師でない錬金術師はアル、イズミなどごく少数となっている。


管理は大総統府の直轄であり、少佐相当官として軍大尉と同等の軍事的権限を有し、一般では立ち入れない様々な施設への出入りを許可される。その為に直接に所属する錬金術師も多い。勿論戦闘技能と錬成技術は関係ない為に、マルコーやタッカーのように戦闘より研究に重きを置いている者も多数である。

その一方で、「錬金術師よ、大衆の為に在れ」という錬金術師の基本にして理想たる倫理感に反する存在ともされる為に、一般的な錬金術師達からは『軍の狗(いぬ)』と呼ばれて侮蔑され敬遠されている。また、研究費は国家財政=税金から支給されている為に、研究成果の見えにくい国家錬金術師達に対して、中央の一般国民達からもあまり良いイメージは持たれていない。

特にこういった国家錬金術師に対する反感は、そもそも現在のアメストリス国軍やブラッドレイ政権に対する不満や反感が燻っている地方に行く程に根強く、特に下記のイシュヴァールを初めとした国家錬金術師によって併合された土地の人間からは忌み嫌われている。


イシュヴァール殲滅戦において初めて戦線に投入され、その力を以てして「人間兵器」とまで呼ばれる程の戦果を見せる事で、その存在意義と力を本格的に知らしめ、国内外から広く畏怖される存在となった。しかし、同時にその重圧に耐えきれず、内戦後に資格を返上した者も多いという。

ただし、一般兵士にとっては国家錬金術師の出撃した前線は生存率が高いという事もあり、本人の人柄なども加わって尊敬と感謝を集めていた場合もあった(キンブリー等の例外もあるが)。


試験内容編集

原作ではかなり省略されているが、旧アニメ第6話では試験内容が描かれている。ちなみに試験時期は(=年末年始?)のようである。

一般的な筆記や面接や健康診断等による選抜が行われた後、実技試験=試験官(大総統が直接務める事もある)の前での錬成実演(原作で描かれている回想だが、原作と旧アニメでは錬成したものがある意味対局である)を果たす事で晴れて合格となる。なお研究者系の錬金術師は、実技においてその場で錬成せずとも研究成果をプレゼンする事が可能で、事前にどちらかを選ぶ事ができる。

勿論合格率は極めて低く、エドが受験した時には数百名が受験していたが、同エピソードのタッカーの発言によれば毎年1、2名しか合格しないとの事。なおアルは、原作では国家錬金術師試験自体を受けていないが、旧アニメでは筆記試験のみ受験していた(筆記試験自体は合格したが、健康診断で空の鎧である事がばれるのを避ける為に、マスタングが試験を辞退させた)。




国家錬金術師の三大原則編集

国家錬金術師は以下の3つの原則の厳守を義務付けられている。特に上の2つについては、元々「国家錬金法」という法律でも禁じられた、国内に住む全ての錬金術師達が厳守を義務付けられている絶対の大原則であり、これに背いた者はいかなる理由があろうと重罪人として重刑が下される。


一、人を作るべからず

一、金を作るべからず

一、軍に忠誠を誓うべし


この中の1つ目と2つ目は倫理観や経済バランスの崩壊を防ぐ為に、元々国家錬金法で禁じられていた大原則であり、3つ目は「国家錬金術師制度」制定に伴って新たに追加された、国家から支援を受ける事への見返りとしての国家錬金術師のみへの義務である(これが上記した「錬金術師よ、大衆の為に在れ」という錬金術師の基本の理念や倫理観に反するとして、大きな反発を集めた)。

特筆すべきは3つ目であり、この義務には国家が有事の際には戦力としても登用する事が含まれており、イシュヴァール殲滅戦の際には、多くの国家錬金術師達が戦力として徴兵された。彼等はその人間離れした強さから、味方からも『化け物』『人間兵器』と呼ばれ、畏怖の視線を向けられる事となった(国家錬金術師の力が本格的に知らしめられたのはこの戦いからである)。


そして実は1つ目の「人を作るべからず」の原則が制定された裏には、実は全く別の思惑が存在する


なお、現実では錬金術の発祥となった思想である「卑金属を金などの貴金属に作り替える」という事は基本的に不可能である。現代の科学ならば技術的には可能であるが、コストが莫大すぎてまるで見合わないこと、当初研究されていた化学反応による変化では成功していない事から、実質的に不可能と言える。

しかしこの世界ではある程度の知識と実力がある錬金術師ならば他の物質から金を錬成するのは普通にできることであり、作中でもエドが実際にボタ山(鉱山で採掘される石のうち使い物にならないゴミとして選別されたもの)を金塊に錬成して作り替えた事がある。

なので、「金をつくるべからず」という規定項目は、そういう趣旨で研究をしてはいけない等のふわっとしたものではなく、「金を錬成する行為の禁止」というダイレクトな意味である。



査定編集

国家錬金術師は年に一度、研究成果を軍に発表・報告する義務がある。

元来国家直属の研究員である為に、研究成果を成せない者は不要とされ、査定に合格しなければ資格剥奪の危機に晒される(例えば、タッカーは2年連続ギリギリの結果だった為に3年目は進退窮まり、エドも〆切直前に気付いて、列車内でレポートを書いて旅先の南方司令部に提出し、ギリギリ首の皮一枚繋がっている)。

例外として軍属である国家錬金術師には発表・報告の義務はなく、普段の軍務がそのまま査定に利用される。


作中に登場した国家錬金術師編集

二つ名は本人の得意分野に応じたものになっている事が多い。


原作に登場した国家錬金術師編集

★は軍属。☆は元軍属。

※1…二つ名は旧アニメ版のもので、原作及びFAでの二つ名は不明。

※2…直接登場するのはアニメ『FA』だけのキャラクターだが、原作者原案のキャラクターにして原作でも名前は登場しているので、実はオリジナルキャラではない。


アニメ・ゲーム版オリジナルの国家錬金術師編集

  • ヴィルヘルム・エイゼルシュタイン(ゲーム『翔べない天使』、黎明の錬金術師
  • ジャック・クロウリー(ゲーム『赤きエリクシルの悪魔』、銀弾の錬金術師
  • アストン・マーティンス中佐(ゲーム『迷走の輪舞曲』、雷霆の錬金術師
  • コーニッシュ・ロイス(同上、調律の錬金術師
  • クラベス・ファゴット(ゲーム『想い出の奏鳴曲』、二つ名不明)
  • リュオン・エッガー(小説『それぞれの絆』、二つ名不明)

真の目的編集

実はアメストリスという国も国軍も、全てはホムンクルス達のある計画の為に作られた集団であり、「国家錬金術師制度」も軍の力を増強しつつ、彼等の計画に必要な人材=「人柱」と成り得る錬金術師を効率よくピックアップし、軍の管理下に置く為にブラッドレイが制定した制度である。


そのため、人柱である事が確定している人材は(表立っての制度上では優遇されないが)ブラッドレイを始めとする軍上層部からは優遇される。

実技試験の時に手合わせ錬成を見せ、人柱になることが確定したエドは、ポーズだけとは言えその場で大総統に刃を向けて襲い掛かるという問題行動を起こしたにもかかわらず大総統の一声で合格にされている他、普段の査定も提出の義務こそ守らせているが、殆ど見ずに大総統の一存で合格扱いされている(各地での活躍を聞き及んでいるという理由はつけたが)。


その事もあって、国や軍の平和的な改革を目指しているマスタングら改革派は、軍の権力の分散と軍縮政策の一環として、いずれは「国家錬金術師制度」の撤廃も視野に入れて活動している。



関連タグ編集

鋼の錬金術師 アメストリス軍


 職業 資格

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