概要
T-ウイルスの研究によって生まれた有機生物兵器=B.O.W.。種類差はあるものの基本的に3メートルほどの体躯をもち、成人男性を素体としてT-ウイルスを投与および手術の過程を経て生み出される。アンブレラ社最強の切り札とも言うべきB.O.Wであり「Tウィルスの名を冠するに相応しい生物兵器」としてTyrant(暴君)の名を与えられた。
この怪物が作られた最大の目的は、人間へ擬態し溶け込む能力を持ち、複雑な任務を遂行することが可能なだけの知能と圧倒的な戦闘力を備えた『完璧な兵器』の完成を目指すことにあり、Gーウイルスによって生まれたG生物とは全く別のベクトルを行く存在である。
シリーズを追うごとに改良を重ねられており、やがて偽装の側面は失われ、強力無比の人型戦術兵器としてアンブレラに開発利用されていった。
初期型
メイン画像に使用されているイラストはタイラントの中でも「T-002型」と呼ばれるタイプの初期型で、初代バイオハザード第1作目にラスボスとして登場。
後で言う所の暴走状態に陥っており、鈍重ながらも肥大化した爪による強力な一撃で相手を蹂躙する。ウェスカーを思いっきりぶっ刺したあのシーンはトラウマになった方も少なくない。露出した心臓が弱点だが、マシンガンやグレネードランチャーなどの通常兵装を何度当てた所で怯ませるのが精一杯という、白兵戦では無敵とも思えるほどの耐久力を持つ。初代の時点から対人兵器では相手にならないほどの力を兼ね備えていたものの、この段階での容姿は人型をした化け物そのもの。
生命を軽んじた所業への憎悪もあってか初期版では、クリス・レッドフィールドから「究極のできそこない」とまで叩かれている。
『0』には「プロトタイラント(T-001)」と呼ばれる旧個体が登場する。
見た目や攻撃方法は『1』のタイラントラント(T-002)とほぼ同じだが、皮膚の劣化が酷い為に防御性能が脆く、ロケットランチャーはおろかハンドガンでも倒せてしまう。ただし高い生命力を持つがゆえに、倒しても時間が経てば復活する別ベクトルで恐ろしい敵となっている。
後継種
上記の個体は敗れ去ったものの、その圧倒的なまでの戦闘力はアンブレラ社の満足のゆくものであり、その後も弱点を克服したタイプや、T-ウイルスがもたらす規格外の強さを抑えるためにあえて装甲を付けられたようなタイプなど、様々な亜種や後継型が非道な実験の末に生み出された。
『2』から登場するモスグリーンのトレンチコートを着用するタイプは量産型の「T-103型」。これは人間への偽装や銃弾などへの防護を兼ねていると同時に、生命の危機に晒されると発動してしまう暴走状態(通称:スーパータイラント)を防ぐリミッターを目的としたもので、作中の登場人物からは「ミスターX」、「コート野郎」などと呼ばれている。兵器としての運用面でかなりの成功を納めており、その後も大量生産されている。
『2』ではラクーン事件の混乱に紛れてアンブレラ社が放ったGウィルス回収および目撃者の抹殺を目的とした個体が登場。作中で登場する銃火器では完全に殺しきることは出来ず、ダメージを蓄積させて倒しても後に何事もなかったかのように立ち上がる(初回の遭遇で撃退したときに限り、倒れたはずのタイラントが立ち上がって再び歩きだす、というデモが入る)。
裏編における物語の序盤に輸送ヘリによってラクーン警察署へ投入され、シェリーの所持するペンダントに隠されたGサンプルを奪取するべく追跡を開始。遭遇したレオンおよびクレア達に幾度も襲いかかった。攻撃手段は基本的に怪力で殴るのみ。ドアの開閉などは理解できないので、ドアを力任せにこじ開けたり、壁を破壊して前触れなく襲いかかってくることも(タイラントの出現するエリアや壁を破壊してくるエリアは決まっているのだが、なぜか下水道エリアには出てこない)。なお、襲撃してきたタイラントを昏倒させるとなぜか弾薬を落とす。どこから入手してきたのだろうか。
攻撃手段はラリアット、右フックとダブルハンマー。ラリアットは威力は低いが回避が難しい。ダブルハンマーは威力はあるが隙が大きく、ラリアットの後出してくることが多いので、体力が多いならラリアットを一発くらって次に出してくるダブルハンマーの攻撃モーションの隙を見計らえば逃げられる。右フックは体力の少ないとき出してくる攻撃で、構えている時間によって威力が変化する。
体力が少ないときはダブルハンマーをいきなり出したり、予備動作の長い右フックを出すことが多いので、より回避しやすい。弾薬が少ないときや、4thサバイバーや豆腐サバイバーでは倒すよりも戦闘から逃げてしまった方がいい。『RE:2』みたいな不死身のストーカーじゃないし。
物語終盤、研究施設の溶鉱炉へ突き落とすことに成功するも暴走状態となり復活。炎に焼かれながらも脱出目前の彼等の行く手に立ちはだかる。
『3』では、他の複数体が機密データ及びサンプル回収のために投入されたアメリカ軍の特殊部隊と交戦していたことが判明(『2』のタイラント投下ムービーをよく見ると、残り5体が存在している事が分かる)。最新鋭の光学兵器「パラケルススの魔剣」を持ち込まれたにもかかわらず、相打ちにまで追い込んでいる。
また研究所内にもタイラントの試験タイプが残されており、こちらはその能力をコンピューターで調整することができる。『OB2』では一定期間のみ研究所内をうろつくハンターを退治してくれる味方となるが、ある程度物語を進めると原因不明の暴走を起こし主人公たちに襲いかかってくる。
他にも意図的に暴走状態にさせた私兵への訓練用個体なども存在する。こちらは『CODE:Veronica』にて登場し、アンブレラ幹部アルフレッド・アシュフォードによる刺客として投入され、主人公と戦うことになる。
『ガンサバイバー』のシーナ島はタイラントの生産拠点で、あるルートではタイラントばかりを相手にしなければならない(しかも報酬なし)。ここではタイラントのおぞましい生産方法の一端を知ることができる。それによると、製造には拉致してきた若者たちの頭蓋骨を麻酔なしで切り開き、脳下垂体を切除するという方法で得られる脳内物質を利用するという非人道的極まりないもの(脳に何らかの障害がある場合は利用されない)。後述する素体の設定と照らし合わせると、この手術で抽出した脳内物質を素体に対して使用するものと推測される。
ここで生産されたタイラントは特徴として強力な銃火器による攻撃をガードしてダメージ半減させてしまう、という行動を取る。そのため、ガードされないハンドガンで頭部を集中的に狙撃してやるのが効果的。特に、ベレッタM8000や南部十四年式カスタムなど、高威力のハンドガンを使うとラク(グロック17やCZ75でも不可能ではないが)。
ネメシス
また、更なる性能の向上を目指しT-103自体に改造を施した例も存在する。『3』に登場するネメシスはその最もたる例であり、タイラントの身体に副次的な脳の役割を果たす寄生生物「NE-a」を埋め込むことで、B.O.W.全般の大きな弱点である知性の著しい低下をカバーし、更に複雑な任務の遂行を可能とした。
寄生生物の影響から皮膚は腫れ上がり顔面が縫合されているなどの醜悪な見た目に反して、なんと人語をある程度理解して喋り、重火器を使いこなすというタイラントの中でもトップクラスの知能を併せ持っている。(あまりの知能の高さから、自我が生じ実験施設からの脱出を企てた個体も存在した模様)
詳しくは「追跡者」の項目を参照。
また、実写映画版にも登場。上記の設定とは異なり、作中の登場人物がアンブレラによって改造されてしまった事で誕生したB.O.Wとなっている。
実写映画版
『バイオハザードⅢ』のラスボスとして登場。
こちらは終盤でスーパーアンデッドに噛まれたサミュエル・アイザックス博士が抗ウィルス剤を大量投与したことで突然変異を起こしてクリーチャー化した姿という、どちらかと言えばイレギュラーミュータントに近い設定のタイラント。
原作のタイラントと比べると醜悪な外見であるが、人間だった頃の自我を保っているため、普通に会話ができる。 右手が爪ではなく伸縮自在な触手になっている他、叫び声で衝撃波を起こす等、遠近共に隙が無い。
『ダムネーション』のタイラント
スベトラーナ・ベリコバが密かに用意していた特別製のタイラント。
身長5mもの小山のような巨躯を誇るシリーズ最大クラスのバケモノで、頭部を除く全身をリッカーの爪攻撃やアサルトライフルすら防ぐ重厚なスーツで防護している。
そのパワーと質量から繰り出される破壊力も凄まじく、自動車を一足で天高く蹴り飛ばし、リッカーたちを千切っては投げ蹴散らし、発射されたRPG-7の弾頭を片手で受け止め、周囲の障害物ごと粉砕しながらレオンたちを追い詰める。
最終的には装甲車の突進を真正面から抑え込んでしまう規格外のパワーを見せつけた。
それでいて銃器に反応して弱点の露出した頭部を腕でガードするなど反応速度にも優れており、巨体に見合わない機動力は全力疾走するリッカーに追い付いてしまうほど。
知能面も向上しており、戦車砲の仕組みを瞬時に理解して、砲塔から身をそらすことで砲撃を回避している。
『バイオハザードRE:2』のタイラント
オリジナル『2』と同じくT-103型。ただしリデザインされており、シルクハット帽子を被り身長もより小さくなるなど「人間の私生活に溶け込み任務を遂行可能な究極の兵器」としての側面を強調されたものとなっている。また、帽子が取れると確認しやすいが左目横(こめかみ)に電極か信管のような突起物が埋め込まれている他に、グラフィック技術の進化により顔のしわが濃くなり、目は従来のような白濁した白目ではなく、バッチリと瞳孔が存在している。
ただしその戦闘力はオリジナルと据え置きで強烈なハンマーパンチは健在。ベン殺しのアイアンクローは即死攻撃でサブ武器なしの場合は死ぬ。
そして追跡能力に至ってはオリジナルよりも苛烈なものとなっており、銃声を聞きつければ即座に接近し、進行の邪魔になるゾンビは殴り飛ばしながらも、目標を見失うまでひたすら追い詰めてくる等もはや『3』のネメシスを上回っている。ただ、タイラントがいくら殴り倒しても殴られたゾンビが死ぬことはないようだ。何故だ。
今回は「表」にあたる一周目から登場、リメイク前とは異なり「今後アンブレラにとって不都合となる証人になり得る人物の抹殺」を任務としており、口封じのためにタイラントやGウィルスの情報すら得ていたベンを殺し、その後はあらゆる通路で巡回しプレイヤーを追跡する。
時には鉢合わせするように先回りするなどの嫌らしいコースすら選んでくる。
前作(という名の未来)の老夫婦と同じく不死身のストーカーと化しており、羽織っているコートはキッチリ防弾仕様で弾を弾く。
唯一剥き出しの頭に弾をぶち込んでも膝をついて数十秒ダウンするだけで殺せない。たとえゼロ距離でショットガンを何十発撃ち込もうがロケランを連発しようが倒せない。ダウンさせても弾薬をドロップしたりはしない。
梯子や扉も使用でき、タイプライターが設置された警察署1Fメインホールでも普通に来る、ただしプレスルームは原作と同じく壁を壊す。
他のタイプライター部屋では入れないが、先回りしたり扉の外で待ち伏せすることもあるので油断はできない。
重量感たっぷりの足音と専用テーマBGMで多くのプレイヤーにオリジナルや前作の比ではないトラウマを与えてくる。
ただし、時間が経つと何故か他の所を探しに行くというルーチンがある(物語を考慮すれば他の主人公の方へ向かったと考えるべきか)。追い詰められても最後まで諦めず、活路を見つけ出そう。
また、ルートによってはG生物に背後から爪で刺し貫かれ、そのまま豪快に胸部を横薙ぎに抉られて死亡するという凄惨かつ呆気ない最期を迎えることもある。
PC版ではタイラントをあれこれといじくり回すMODが多く存在しており、足音がファンシーなものに変わったりアンブレラのマークの描かれた海パンになったり、きかんしゃトーマスやらフリーザやらに姿を変えられたり、挙げ句の果てには存在そのものを抹消されたりしている。
『レジスタンス』ではマスターマインドの一人「ダニエル・ファブロン」の専用スキルカードとして登場、設置すると一定時間内でタイラントを操作可能(通常のNPCとして使用できない)。
RE2仕様なので特徴的な外見と足音は健在で、一撃必殺のアイアンクローも使用できるが、スキルカードとアイアンクローのクールタイムが非常に長い。また、専用カードBOWは無敵と言っても強力な銃器に足止めされることがあり、サバイバー側はこの方法でやり過ごせる。
『RE:3』ではオリジナル『3』と同じく最終舞台の背景キャラクターとして出演のみ。こちらは戦闘後の死体ではなく、地下研究所のB.O.W.培養室にて大量の未完成品を発見できる。
なお、B.O.Wとしてのタイラントはアンブレラ社が崩壊したことにより『アンブレラクロニクルズ』に登場したテイロスで打ち止めとなったが、それ以降の作品でも後継種のウィルスによりタイラントと酷似した能力と容姿を持つクリーチャーが誕生している。
まさにバイオハザードのストーリーを語る上で欠かせない、シリーズの顔とも言うべきB.O.Wと言えよう。
タイラントの種類
品種
- T-001(プロトタイラント)
- T-002
- T-103(量産型タイラント)
- タイラントC
- ネメシス-T型
- パラサイトタイラント
- ヒュプノス-T型
- T-078(ロックフォート島の訓練用個体)
- T-091(T+Gの失敗作)
- タナトス(厳密には亜種)
- バンダースナッチ
- イワン
- テイロス
一定条件下に置かれた時の変異体
類似個体(イレギュラーミュータント)
- セルゲイモンスター
- ウロボロス・ムコノ(Uroboros-ウィルス由来)
- アビス完全体(T-abyssウィルス由来)
- 変異ニール(Uroboros-ウィルス由来)
- ウスタナク(C-ウィルス由来)
- グレン・アリアス(A-ウィルス由来)
- T-レディ(T+Gウィルス由来)
- ミレーニア(N・Tウイルス由来)
余談
- タイラントの素体
実はタイラントは、亜種のタナトスを除いてセルゲイ・ウラジミール大佐のクローンをベースとしていることが「アンブレラクロニクルズ」によって明かされている。
なぜセルゲイ大佐がタイラントの素体となっているのかというと、彼は1000万人に1人の確率で存在すると言われている、T-ウィルスに感染しても脳細胞や肉体に劣化が全く起きないウィルス完全適応者であり、アンブレラ幹部の位置にいるのもこのおかげだとされている。
- 戦闘曲
サバイバルホラーゲームを代表する敵としては異色なBGMも特徴の一つ。通常形態では兵器としての物々しさを強調する一方で、暴走状態であるスーパータイラントとの戦いでは一変して荘厳なものへと変化するものが多い。生物兵器として生まれてしまった悲哀や、それらが振りまく恐怖を表しているのだろうか。
種類ごとに様々な曲が存在するので興味があれば、ぜひ一度視聴してみることを推奨する。
バイオハザード「ダークサイドクロニクル」スーパータイラント戦闘曲
バイオハザード「アウトブレイク」タナトス戦闘曲