概要
ビブリオ属に属する細菌の一種。小腸に炎症を起こし、コレラという下痢を起こす感染症の原因(病原体)となる。
川や海などに生息しており、そのためコレラ菌に汚染された魚介類を生で食べることで感染することが多い(経口感染症)。
細菌の中では比較的塩分やアルカリ性を好む性質がある。逆に酸性・酸には弱い。
なお、ビブリオ属にはコレラ菌のほかに、腸炎ビブリオ(主に魚介類を生で食べることで感染する食中毒菌)なども属している。
菌種
コレラ菌には以下のような種類がある。
一般的にコレラトキシンという毒素を産生しコレラを起こすコレラ菌と呼ばれるのはO1型である。
O139型コレラ菌はコレラトキシンを産生しないため、NAGビブリオ(ナグビブリオ)として区別されることが多い。しかし、最近ではO139型の一部にもコレラトキシンを産生できるものが確認されている。
なお、コレラトキシンを産生しないコレラ菌による感染症はコレラとして扱わず、通常の食中毒として扱うことが多い。
O1アジア型(古典型)
コレラは元々はインドの風土病だったが、19世紀に入ってから6回もの世界的大流行が起きている。この6回もの大流行を起こしたコレラ菌がアジア型(古典型)コレラ菌である。
激しい下痢を繰り返し体内の水分や塩分が失われるため、急速に脱水症状に陥る。真っ白い下痢便(しばしば米のとぎ汁のようと形容される)が大量に何回も出るのが特徴。すぐに大量の水分や塩分を摂らせて治療しないと50%が死亡するという、非常に危険な感染症だった。
コッホが発見したコレラ菌はこいつ。
O1エルトール型
1961年以降、インドを中心に世界的に流行している(7回目の大流行)コレラ菌。ただし最初に発見されたのはエジプトのエルトールという町であり、名前はここに由来している(ちなみに1905年に発見された)。
アジア型に比べ軽症であり、単なる下痢程度で回復することが多いが、その分感染力が高くなっている。
O139型
基本的にはコレラ毒素を産生しないため、NAGビブリオ(ナグビブリオ)として、コレラ菌とは区別されている。
しかし、1992年、O139型にもコレラトキシンを産生できるものが確認された。この新型コレラは現在、インドを中心に流行している。