概要
学名は“クロストリジウム・ボツリヌム”。同じくクロストリジウム属の破傷風菌(クロストリジウム・テタニ)と共に嫌気性菌の代表格であり、空気(というか酸素)を嫌う。そのため空気のない密閉された空間で増殖する。
この菌が産生する毒素(ボツリヌストキシン)は極めて毒性が高く、細菌が産生する猛毒の中で最も危険なものである(O157などの腸管出血性大腸菌や赤痢菌が産生するベロ毒素以上の毒性)。ヒトに対しての致死量は一般的な体格の成人で0.7〜0.9μgであり、1gあれば百万人を殺傷でき、0.5kgで全人類の致死量に相当するほどで、自然界に存在するものでは最強である。
原因食品
缶詰や真空パックなどの加工食品が多く、名前の由来も「ソーセージ(botulus)」である。
そのため、食品加工において硝酸塩を添加することは伝統的によく見られる。
乳幼児の場合は蜂蜜が原因となることもある。
症状
- 嘔吐
- ものが見えにくくなる
- ものが飲み込めなくなる
- ろれつが回らない
- めまい
- 筋肉麻痺
- 最終的には呼吸ができなくなる。
- この菌による食中毒は発生件数こそ少ないが、致死率はかなり高い(10%以上)ので注意。異常が見られたらすぐに病院に行くこと。
- 他の食中毒で多くみられる下痢や発熱の症状はあまりみられない。
余談
美容外科などでよくあるボトックス術はこのボツリヌス毒を注射するものである。
ボツリヌスの毒(Toxin)と直球であるが、もちろん致死量には全く満たない安全な量を注射する。
関連タグ
炭疽菌 ペスト菌 天然痘ウイルス エボラウイルス…同じく非常に高い病原性を持ち、生物兵器として利用されたら危険な病原体たち。