ベロ毒素(べろどくそ)は、腸管出血性大腸菌が産生する猛毒・毒素である。細菌性赤痢の病原体である赤痢菌が産生する志賀毒素に類似しており、志賀様毒素(しがようどくそ)と呼ばれることもある。これら二つの毒素の類似は遺伝子の水平伝播によるものであり、おそらくバクテリオファージによって志賀毒素の遺伝子が大腸菌に受け継がれたものと推測されている。
主に大腸に作用し、細胞の合成を阻害するため、出血を伴う激しい下痢を起こす。また、一部は血液中に吸収されて全身に移行する。特に腎臓にベロ毒素が作用すると、合併症の溶血性尿毒症症候群(HUS)の原因となり、死に至ることもある。
ちなみに、ベロ毒素は細菌が産生する毒素としてはテタノスパスミン(破傷風菌)やボツリヌストキシン(ボツリヌス菌)に次ぐレベルで危険な部類に属する。また、テトロドトキシン(フグ毒)やサリン、青酸カリなどよりも毒性が強いと言われている。