概要
細菌に感染するウイルスの総称。単にファージともいう。代表的なものとしてT2ファージやT4ファージなどが有名。まるで月着陸船のような構造がこれら大腸菌ファージの特徴であるが、ファージ全体としては様々な形態が存在する。あらゆる細菌、古細菌にはそれぞれに対応するファージが必ず一種類以上いる。また、複数種の細菌にまたがって感染するファージもいて、これらによってある細菌固有の性質が別種の細菌に継承される事もある(赤痢菌の志賀毒素とO157のベロ毒素がいい例)
一方で感染される細菌もただ一方的に攻められている訳ではなく、細胞内に入り込んだ異種遺伝子を切断、分解する機能を発達させたものもいる。その一つが最先端の遺伝子操作「ゲノム編集」の旗手ともいうべき技術「クリスパー・キャス9」である。
食品加工への利用
バクテリオファージの中には食中毒の原因となる細菌だけを殺してくれるものがあるので、食品加工の際に食品を加熱せずに殺菌する事に利用されている。
バクテリオファージは人類が有効活用できるウイルスの一つなのである。
ファージセラピー
細菌感染症に対して病原菌に感染するファージを投与する治療法をファージセラピーという。
西側諸国では効果の高い抗生物質による治療が主流となった為ファージセラピーは廃れてしまったが、東側諸国では現在も細菌感染症に対してファージセラピーが処方されている。ファージセラピーはあらゆる抗生物質が効果を発揮しない多剤耐性菌にも効果がある為、西側諸国でもその効果を見直す動きがある(細菌も抗生物質同様ファージに対する耐性株を作るが、ファージへの耐性を獲得した菌株はそれまで持っていた薬剤に対する耐性を失う可能性が高いので抗生物質とファージセラピーの並行利用が効果的である)。